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#10 だから少年は旅に出る【物語】=2


とある島に、弱虫な少年がいました。
少年は人と話をするのが苦手で、
島の住人達と上手に付き合う事ができず
友達もできず、いつも一人でした。

そんな少年は海を眺めるのが好きでした。
海を眺め、カモメを目で追いながら
彼等はどこにいくのだろう。
彼等が見ている世界はどんな世界なのだろう。
と、想像するのが好きでした。

ある日、
海を眺める少年は言いました。
「いつかこの海の向こう側を見に行くんだ。」

少年は想像を越え、夢をかなえるために船をつくり、
必要な食糧とわずかなお金を握りしめ、
小さな船を砂浜から押し出します。

船に飛び乗った少年。
しかし、大きな波が少年を嘲笑うように音を立て
砂浜に押し返します。

少年は何度も何度も波に立ち向かいますが、
沖に出る事を波は許してくれません。
しかし少年は精一杯に船を押し出し、
オールを必死で漕ぎ、
なんとか沖に出る事ができました。

さあ、ここからが大変です。

海は更に青く染まり、
その色の深さは黒く見えるほど。
小さな船はゆらゆらと揺れ、
海を覗けば、その黒々とした世界の中心から
大口をあけた“何か”に飲み込ままれてしまうのではないか。

少年は夢見た海に、
恐怖を覚えました。
同時に、孤独を覚えました。

なぜ海に出てしまったのだろう
なぜいつもひとりぼっちなのだろう
なぜ僕ばっかり

少年は一人、仄暗い海と真っ黒な夜の空に挟まれながら
静かな夜に溺れてゆきました。


夢。

いつかの母の声が聞こえた気がしました。
力強い腕で少年を抱き上げる父を感じた気がしました。
父と母が握ってくれていた手を
少年は自ら解きつぶやきます。

「大丈夫だよ。」


翌日。

太陽が海の輪郭に触れる頃
風が吹き始め、少年は目を覚ましました。

少年は小さな船の帆を立て、
空を割る太陽をめがけオールを漕ぎ始めます。

力強く。
力強く。
力強く。

弾かれた海水が頬を伝い、
ペロリと舐めました。
しょっぱい。

風に乗った少年の船の周りに、
カモメたちが群れをなしてついてきていました。

少年は空を見上げ、
ひたすらにオールを漕ぎます。

力強く。
力強く。
力強く。


力強く。

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