大変な人に憧れちゃった[機能性ディスペプシア闘病記-6]
中3の10月に、金八先生の第6シリーズが始まった。
上戸彩さんが性同一性障害の生徒を演じて話題になった。
僕の学校にも、ホルモンのバランスを生まれつき欠いていて、見た目は男らしいけれど、陰茎がついていなく、性自認が女性の後輩がいた。
彼女はこのドラマが救いだと言っていた。
それまではどんなに説明しても理解してもらえなかった自分の特性が、スムーズに伝わるようになったと喜んでいた。
第1話や22話で繰り返された、「見渡す限りのもの、人生で起きる出来事には意味がある」というお説教はこのシリーズの大きなテーマだった。
この時期、人生2度目の恋をした。
転校生の女の子だ(なんかお決まりですね)。
12月ごろお付き合いをすることになったけれど、翌日からどう接したら良いかわからなくなり、むしろ距離を遠ざけて接してしまい、すぐお別れという流れになってしまった。
1年生の時のストーカーのトラウマも残っていて、やや女性恐怖症気味というのもあったように思う。
それでも、2月の彼女の受験の前に、お百度を踏んで合格祈願をしたりとなかなか純情ボーイであった。
実家は貧しかったが、母の努力で私立の男子校に行かせてもらえた。
選んだ理由は、ラッシュに巻き込まれない路線であること、マラソン大会がないことである(雑だな)。
ここは名門校の滑り止めとして受験するケースがほとんどで、僕のように第1志望なのは稀だった。
ほとんどが、どこにも受からなくて来るという生徒ばかりで、入学式は既にお通夜の空気だった。
みんな、死んだ魚のような目をしていた。
高校生活は可もなく不可もなく、というか、男子校お決まりの、異性に気を使わない、カッコつける必要がない空気感で、ずーっとバカなことをしていた。
今もしてるじゃんって思ったひと、やかましいわ!
東急ハンズで買った金八のコスプレをまとい、北千住のロケ地を友だちと歩いたのが学生生活のハイライトである。
読書も、人生で一番多くしていた。
森博嗣、京極夏彦、笠井潔、鯨統一郎などのミステリーが大好きだった。
特に森博嗣の哲学に心酔し、あれだけ憧れた武田鉄矢氏が霞むほどだった。
『かもめのジョナサン』『ライ麦畑でつかまえて』『24人のビリー・ミリガン』など、この時期に触れた作品はいまだにしっかり焼き付いている。
武田鉄矢氏の原作漫画『お〜い!竜馬』も、ちゃんと読み直した。
歴史やストーリーもさることながら、鉄矢氏の「俺がすごいと思う竜馬!!!!!!」が溢れていて、そう、自分もそんな竜馬に憧れた。
①暗殺しに行った相手と話し合い、逆に弟子入りを志願する清々しさ
②幕府に命を狙われている際、どのルートが安全か、幕府の警察の偉いひとに訊きにいく大胆さ
③大きな目的のためなら、親友を殺した相手とでも手を組む意志の強さ
④自らが殺されそうな場でも仲間を気遣う優しさ
史実ではどうだったかわからないけれど、僕はあまりその辺にこだわりがないので、単純に「こんな人になりたい」と憧れた。
のちのち、「掟上今日子の備忘録」という新垣結衣さんのドラマで、岡田将生くんが、自分を殺そうとした女性を許してフォローするという展開があった。
そんな大きな心って、どうしたら得られるのだろうと考えつつ、やっぱり憧れた。
あと顔面にも憧れた。
あ、笑ったな、鼻で。
2023年の冬、自殺未遂から僕を助けてくれた人が教えてくれた。
「こんな人になりたい、そう思った時から、運命は動き出すんだよ」
大学で病気になって、その後の幾多の逆境を越えて、いま、取り敢えずは目標を達せたように思う。
ああ、この為の全てだったのか、という人生の答え合わせができた。
顔面は岡田将生くんになれてない。
いつなれる?
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?