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大好きな作品:BANANA FISHについて考える

映画やアニメ、漫画、小説、好きな作品は沢山あるが、
その中でも特別に好きなのが「BANANA FISH」だ。

BANANA FISHを初めて観た時、アニメを観終わってそのまま単行本を全巻購入し、すぐに原作も読んだ。
読み終わったあとの気持ちは一言では言い表せないのだが、とりあえず物凄いロスでしばらく考え込んだ記憶がある。

先日再鑑賞したので、感想を書く。(1年ぶり2度目)

※以下ネタバレあります

わざわざ私が言うことでもないが、あらすじはこんな感じ。

ストリートキッズのボス、アッシュは絶世の美貌とIQ200の知能、卓越した殺人技術の持ち主。
彼はベトナム帰りでおかしくなってしまった兄の謎の言葉「バナナフィッシュ」を追い始める。時同じくして、カメラマンの助手としてアメリカに来た日本人少年、英二はアッシュと邂逅し、共にバナナフィッシュの謎を追い求めることになる。
コルシカマフィア、華僑の裏社会、果ては合衆国まで巻き込んだバナナフィッシュの謎とは何か? 戦いの中でアッシュと英二はなにを失い、なにを手に入れたのか。

主人公のアッシュが強く、美しく、そしてとても儚い。
物語が進むにつれてどんどん英二との仲が深まっていくのだが、それと共にアッシュのまわりがどんどん危なくなっていくのが、もう心が張り裂けそうになる。
アッシュは凄まじい才能を持っているのだが、「オレはそんなもの欲しいと思ったことは1度もない!」と彼は言うのだ。
才能ではなく、安らぎを求めていた。そして英二と出会うことでアッシュは生まれて初めて、安らぎを得ることができた。

才能を持った主人公が次々と敵を倒していく、というストーリーは格闘マンガにもあるし、そこで得られる爽快感みたいなものは同様かもしれない。
あまり漫画に詳しくないので恐縮ではあるが、格闘マンガの多くは正義や憧れといったものが中心にあることが多いかもしれないが、バナナフィッシュにおいて、アッシュは愛するものを守りために戦い、傷つく。本当に命がけで英二を守るのだ。

バナナフィッシュはBLという声も聞くが、私はこの2人の関係はそれとは違うように思う。アッシュの英二に対する愛、同じくして英二のアッシュに対する愛。友達でも恋人でもなく、共依存のような形なのかもしれないが、我々の知っているラベルを超越するような、ぴったりと当てはまる言葉がないような関係性。

また、アッシュを取り巻く人間ドラマもすごい。
ディノや月龍、オーサーといったアッシュと対立する彼らの気持ちも、わからなくは無かったりもする(ディノはわからないが、一番一途だ)。

私が一番印象に残っているシーンは、英二を人質に取られてしまったアッシュが、英二の安全と引き換えに、自分の自由を失うことを選んだときに言ったセリフ。
「この世に少なくともただ1人だけは…なんの見返りもなくオレを気にかけてくれる人間がいるんだ。もうこれ以上はないくらい――オレは幸福でたまらないんだ」
アッシュは幼い頃から周りにいるのはいつも彼のことを利用しようとする人間ばかりで、17歳で初めて無償の愛を知るというアッシュの壮絶な人生に、ぎゅっと胸が締め付けられた。
自分が沢山傷つけられ、自分の自由が失われるというボロボロの状態なのに、「幸福でたまらないんだ」という言うアッシュ。英二が自分を想ってくれるということがアッシュにとってどれだけ大切なことかがわかったシーンだった。

ストーリーの最後は、本当に涙が止まらなかった。
これから、やっとこれから安らかな生活ができるかもしれないあのタイミングで、ラオに刺されて死んでしまうアッシュ。。
英二からの手紙の「ずっと、君を守らないといけないと思っていた」という言葉を聞いて走り出したアッシュ。初めて英二から愛されているということを確信したのだろうか…「僕の魂はいつも君とともにある」という言葉を読んで、幸せそうに天を仰いだのは、真の安らぎを得たからだろうか…
頭脳明晰で常に色々なことを察知するアッシュが、もしかしたら手紙を読むまで英二の愛に確信を持てていなかったとしたなら、誰も信じられず孤独に生きてきた彼の壮絶な人生に、また胸が締め付けられた。

英二の愛を確信し、幸せな気持ちで安らな死であったという点では、アッシュにとってはハッピーエンドだったのかもしれない。

とはいえ、英二やシンの気持ちになると救われないし、読者としてはアッシュと英二が幸せに暮らす未来を見たかった、というのはあるのだが、あの最後のアッシュの幸せそうな顔が、すべてを物語っている気もする。

この作品に出会えて本当に良かったと思う。

ちなみにBANANA FISHはあまりにも心が奪われてしまうので、生半可な気持ちで見返すことができない。結末を知っていると、アッシュと英二の楽しそうな会話だけで泣ける。Player Xのイントロだけで涙が出る。

一度観ると、アッシュに想いを馳せずにはいられない。

やはり最高の作品だ。

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