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おぢいさんのランプ

新美南吉 1942

東一少年が土蔵の中で祖父のランプを見つける。
祖父「巳之助」が語る話が始まる。

岩滑新田(愛知県知多郡半田市)の孤児、巳之助が荷車引きの手伝いで、
初めて大野(常滑市)の街に行き、そこで街中が「ランプ」で、
明るく活気に満ちている事に驚く。
巳之助の村には「行灯」しかないからだ。
文明開化に遅れた暗い村を村人の生活共々明るくしようと、
巳之助はランプを売り出す事を心に決める。
やがて、ランプ売り商売の経営が順調になり
巳之助自身も成人して結婚する。
ところが、ランプより数倍も明るく経済的な
「電燈」の導入が村議会で決定される。
巳之助は衝撃のあまり、孤児時代にお世話になった
村会議長を憎み、その家に火をつけようとするが、
手元に「マッチ」が無く、彼の「火打ち道具」では、
なかなか火がつかない。

「古くせえもなァ、いざというときまにあわねえ。」

舌打ちした瞬間、文明開化がなお進んだこと、
逆恨みで火を放つなど人の道に反する事、に気づく。
そうして「ランプ」に別れを告げるのだった。

東一少年へ諭す。
「・・・・昔にすがりついたり時代を恨んだりしてはいけないんだ。」

新美南吉初期の作品。
「ごんぎつね」他が雑誌「赤い鳥」に掲載されたことが、
新美南吉を本格的な童話創作へ向かわせ、
この「おぢいさんのランプ」や「牛をつないだ椿の木」
などの名作を生み出す原動力になりました。

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