見出し画像

みずうみ

🖌シュトルム(1849年発表)

独身の老人ラインハルトが月光に照らし出された肖像画を前に、過ぎ去りし日々を回想している。その肖像は、彼より五つ年下の幼友達エリーザベットの姿である。

彼らふたりは小さい時から一緒に過ごし互いに離れることもなかった。しかし、やがてラインハルトは大学生となって故郷の町を離れ、エリーザベットと離ればなれになる。学業に勤しむラインハルトが休みに帰省してみると、彼の幼友達のエーリッヒがエリーザベットの家に出入りしているのを見いだす。二年後、ラインハルトは母からの手紙で知る。エリーザベットが二回断った挙げ句にエーリッヒの結婚申し込みを承知したということを。
数年後、湖畔のふたりの邸を訪れたラインハルトは、夫妻とエリーザベットの母を前に詩を披露する。
「望まねど母に言われて嫁ぐ日の心の人ぞ忘れかねつる」
エリーザベットが微かに身震いをした・・・・。

ふたりは湖畔の散歩を共にし彼らの青春が青い山の彼方に去ったことを感じる。朝またぎ、ラインハルトが、いとまも告げないで邸を辞去しようとするとエリーザベットがあらわれて
「あなたはもう二度といらっしゃらないのね」
という。
「ええ」
と答えた彼は、後ろを振り向きもせず、

朝の光を受けた広々とした世界へ立ち去って行くのであった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?