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あの世の事典

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📙『あの世の事典』
水木しげる 1983

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ぼくは戦争中、毎日死のことを考えていた。
どんな世界に連れて行かれるのだろう。
明日訪れるかもしれない「死の世界」で道に迷わないように。
ひとつ世界の「あの世」を散歩してみようという気になった。
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🇲🇾マレーシア…翼を持つ神エナング
🇵🇭フィリピン…死の町の王
🇮🇩インドネシア…あの世の橋の番人
🌺ハワイ諸島…闇の森の国
🇳🇿ニュージーランド…海底の下界ポー
🇳🇨ニューカレドニア…オレンジで遊ぶ霊魂
🇮🇳インド…マヌ法典の国
🪷チベット…死者の書
🇨🇳中国…崑崙山・羅鄷・鬼郷・泰山
🇯🇵日本…補陀落浄土・常世国・黄泉・根
🔥ゾロアスター教…信賞必罰の旅路
⭐️イスラム教…最後の審判
🇪🇬エジプト…死者の書
🛷エスキモー…岩山を通って下界へ
🐎インディアン…狩猟の楽園
🇲🇽メキシコ…投げ槍を持って死の国へ
🌙古代バビロニア…日没の丘
☀️古代ローマ…ミルタの森の別れ道

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人間が死んでしまったらどこへ行くのか?
「あの世」は幻想。
(でもその幻想の影には本当のことも隠されている)
「あの世」には「天国」と「地獄」があり、それは世界中で共通している。天国はどこもほぼ同じであるからにしてその描写は貧弱と言える。綺麗な川が流れ、果物が実り、美酒に酔い、美女がいる。働かなくてもよい。一方地獄の方は地域によって描写が変わる。それぞれに迫力があり想像を絶する空想力で満ちている。その地に生きる人々の、苦しみの種類が特徴的に表れているからである。
だが結局のところ「天国は快楽」「地獄は苦痛」である。共通している。
幻想である「あの世」について、さらに共通することがある。
《「生者」は決して「死者」に会ってはいけない》

🌍アフリカ…類似するあの世とこの世
アフリカの人々はあまり他界のことには熱心ではない。祖先たちの住む冥界は、この世と同じようなものであり、死後はそこで生前と同じように暮らしているものだと考えている。悪霊や妖精たちの住む「ブッシュ」には人間の霊魂や亡霊が彷徨っているが、生者が酒と食べ物を墓に供え祈れば「自身の傷がすぐに良くなる」と、死者を少しも恨みに思っていない。

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🕯️✨🕯️✨
今を生きる僕らの世界は、遠い昔の人から見たら「天国」。
僕らは天国に辿り着いたのだろうか。
人がどんなに空想しても天国の描写は貧弱だ。
ここが天国かどうかなんてことは分からない。
🫧
《ひとへに風の前の塵に同じ》
🫧
ただひとつの本当のことがある。
《「生者」は決して「死者」に会ってはいけない》
🕯️✨🕯️✨

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