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浮世風呂

浮世風呂

式亭三馬 1809〜1813にかけて刊行
銭湯を舞台に江戸庶民の日常の生活や風俗を描いた滑稽本。
4編9冊からなる滑稽本で、一貫した話の展開ではなく、銭湯に集まる客たちの世間話を集約した作品です。

【男湯之巻】
続々と客が入ってきて混んでくると、世間話の音量が響き渡る。昨日の話、地震の話、大家の話・・・。風呂の中で男が倒れて大騒ぎ。西国から江戸へ出てきた者が、タライの中に布がつけてあるのをみて不思議に思いながらも、それで顔を洗い身体を擦っていると、風呂から上がってきた上方者があたりを見回し、つけて置いた褌がないと探している。子供達が喧嘩を始める。芝居の噂話をする子供達もいる。階上では将棋を差している人々。風呂の中で浄瑠璃をやっている座頭。どこもかしこも騒々しい。
【女中湯之巻】
老婆が二人、体を洗いながら老いた辛さを話している。白歯の女達が客や芝居の話をしている。子供連れの年増女が子供の弁当や奉公の話をしている。風呂の中では、饒舌な女と無愛想な女が夫婦喧嘩の話をしている。
【女中湯之遺漏】
女の子が稽古の話をしている。下女が主人らの悪口を言っている。ひょうきんなおかみがみんなを笑わせる。文学少女が源氏物語の話をする。母親が息子の不身持の話をする。
【男湯再編】
風呂屋の前を女の子供らが大勢で盆唄を歌いながら通り過ぎていく。
涼んでいた男と番頭が盆踊りの話をしている。
・・・・・みんなの声が聞こえる。

江戸庶民にとって銭湯とは同じ町内にいる住人たちとの社交場。
しつけの場所、まさに裸同士の付き合いをしていた場所。
この頃の暮らし振りの切なさは、放蕩時代の話を盛り上げさせる。ひょうきん者はおおぼらを吹けば周りを和ませる。時に冗談は生意気者をおとなしくさせる。流行唄に通を振りまき、揶揄う者は馬鹿丁寧な言葉を使う。風呂の隅には勇みの男。嫁姑は嫌味の言い合い。老人が来ては昔の自慢話。

・・・・・みんなの声が聞こえる。

喧嘩の最後は互いに折れることが良いと思う。
育ちよりも性格が大事だと思う。
女の子には優しいものを教えたいと思う。

薬種屋の苦九郎がキノコを食わされ中毒で踊りを始める。
座頭がうたう。まわりは大笑いで涙を流す。
「みんな」に囃し立てられて、苦九郎は風呂場で裸で。
笑いながら、泣きながら。
夢中で踊っている。

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