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法の精神

法の精神

モンテスキュー 1648

自然法則を含めた広義の法は「事物の本性に由来する必然的な関係」であり、法制度も気候、風土、国民の性質、習慣、宗教、産業などの諸要素によって規定され、それらが立法者の意図と相まって作り出す関係が「法の精神」であるとされる。
モンテスキューはさらに、あらゆる政体を共和制、王制、専制の三つの基本形態に大別し、それらがそれぞれ異なる情念(徳・名誉・恐怖)によって支えられていると説く。

人の情念は気候風土によって左右され、北方の人は質実剛健であるため征服されにくいが、南方人は柔弱で享楽的であり圧政を受けやすい。
しかも、広大な国土は専制に有利で、狭い国土は共和制に適しているため、ヨーロッパでは自由の精神が受け継がれたのに対して、アジアでは専制的な大帝国がしばしば見られる。
モンテスキューは風土などの物理的要因を重視したが、その思想は決定論ではなく、多様な法制度を生む諸条件を究明しようという意志の表れである。
また、自由はモンテスキューにとって最も重要な理念であるとともに、政治の目的でもあった。
自由を保証する手段として彼が提唱したのが有名な「三権分立」の原則、すなわち立法・司法・行政の三つの機能は別々の機関に属し、相互に規制しあうべきであるという考えである。

「法の精神」には二つの方向性が見られる。
一つは多様な法の中から一定の法則性を引き出そうという、いわば社会学的な関心であり、もう一つはフランスの絶対王政の改革への期待である。
モンテスキューは共和主義者ではなく、穏健な王制を理想としていた。
彼は、王権は法服貴族のような中間階級によって制限されるべきであると考え、その意味ではモンテスキューの政治思想は法服貴族の立場からの改革思想という面がある。

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