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福の神

『福の神』 狂言の演目
福の神「汝らは、毎年毎年、奇特に歩みをはこぶなあ」
参詣人甲乙「ハアー」
福の神「イヤ、いつも福の神へ神酒をくくるが、きょうはなぜにくれぬ」
参詣人甲乙「はったと失念致しましてござる」

大晦日。追儺の夜である。新年を迎える二人の男が福の神を祀る神社に参詣する。鬼は外、福は内、と豆を打って噺ていると、笑い声が聞こえ、福の神が出現した。毎年参詣に来るお前達を金持ちにしてやろうと思って現れたのだという。福の神はまず二人にお神酒を要求する。二人がなみなみと酒を注ぐと、福の神はそれをまず酒の神である松尾大社の祭神に捧げ、日本国中の神々に捧げ、そして自分が飲む。お神酒を飲んで機嫌の良くなった福の神は、二人に金持ちになる秘訣を歌ってきかせる。

豆まきは、現在は節分の行事ですが、元々は大晦日に宮中で行われていた「追儺」または「鬼やらい」という悪鬼を追い払うために、いり豆をまく儀式でした。節分が立春の前日で、旧暦の正月に近いため、大晦日の行事と混同された、といわれています。

お神酒を飲んで機嫌の良くなった福の神は、二人に金持ちになる秘訣を歌ってきかせる。

早起きすること。
他人に優しくすること。
客を拒まないこと。
夫婦仲を良くすること。

そして。

福の神に上等の供物と酒をあげること。
ことに酒はイヤというほどあげること。

そう歌って、福の神は再び大音量で笑いながら社に消えていく・・・。

福の神は特定の名を持たない。
酒に酔って笑いながら現れる。
そして、戯言のような歌を残していく。

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