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ふたりのロッテ

ふたりのロッテ
ケストナー(ドイツ) 1949

夏休み。スイスの湖畔で開かれた林間学校で二人の少女が出会う。ウィーンから来た「ルイーゼ」は活発な少女で作曲家の父親と暮らしている。ミュンヘンから来た「ロッテ」は編集者として母親を助けるしっかり者。九歳の少女の姿形はとても似ていて、誕生日も生まれた場所も同じ。自分達が実は双子であり、離婚した父親と母親にそれぞれ引き取られ、別々に育ってきたのだと気づいた。
何故、両親は離婚したのか、何故、お互いの存在を知らされなかったのか。「親に会いたい」という気持ちと冒険心が呼び覚まされて、二人は入れ替わって家に戻ることにする。
ルイーゼとロッテ。正体がばれないように奮闘する生活が始まる。父親と母親は、林間学校から帰った途端に性格が変わってしまった二人に戸惑いながらも、新しい印象を抱いて家庭や子育てについて考え直すようになっていく。
ルイーゼとロッテ。それぞれ新しい親子の絆が育まれ、幸せな日々を送るがロッテには辛い心配事が現実となってやってくる。父親がある女性に結婚を申し込んだのだ・・・。

この世界の書棚には、たくさんの物語がある。訓育、ないし教化、さらに娯楽の手段とされる神話や伝説物語。時間の流れを操る冒険物語。均整のとれた日常物語。
現実世界は矛盾だらけで、紆余曲折に満ちているリアルな世界だ。
空想力を持って神秘性の高い物語に入り込んでみても、現実世界に戻る事が出来ないとすると、それは不条理からの逃避行である。
この現実を豊かに生きる夢をいかに生み出していけばいいのか。それは書棚のどこか、無数の物語の中から目の前にふと現れてくる。

伝承されている物語。
多様性に富んだ物語。
日々混入される物語。
擬人化する動物物語。
不確実な未来の物語。

大人社会と子供の世界。どちらも。
いつでもどこでも葛藤がある。
みんな悲喜交々の経験を重ねながら、自らの人生に良し悪しを判断している。善と悪に、どう対応したかで結果が変わるのだが、未来を見る事は出来ない。

困った時は、子供達に問うてみるのも、ひとつの手段だ。日常生活が豊かになるかも知れない。
大人達より子供達の方が多様な視点を持っている。
子供達は沢山の夢を持っているのだ。

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