マガジンのカバー画像

おはなし書いてます!

15
誰にでもあるような一人ぼっちで寂しい気持ちとか、ひっかかってること、読むと少しあったかくなるものから、心が焦げる匂いがするような嫉妬や執着、憎しみみたいなものまで。 絵本のような… もっと読む
運営しているクリエイター

#詩

赤い靴の旅

玄関に二つ並んだ、真っ赤な靴。 それは少女のお気に入りの靴だった 所々少し傷んで味が出ている 優しい少女はその靴を毎日磨き、とても大事にしていた。 でも赤い靴は荒っぽくて少女とは正反対の性格だった だいたいの靴は主人の見てない所でワックスを使って「自分磨き」をするが彼は決してそんなことはしなかった 「みんな主人に媚びやがって」 赤い靴は主人なんか要らないと思っていた 「俺は一人でどこへだって行けるんだから」 ある日、玄関のドアが大きく開け放たれていた 外からふわふわと黄

あの感情は、きっと龍の姿をしている。

小学校、中学校、高校。 鉛筆、消しゴム、やがてシャープペン。 書いては消し 間違えては消し 紙が汚れて真っ黒になる なんてのは高校ぐらいまでだった 大学では手がすれて汚くなるからとペンを使い 大人になったらあとも残らず画面は真っ白に戻り 新規作成すればなかったことになる 筆圧が強くて 消した文字が分かってしまうことも 跡が残って白が濁ってしまうことも 消し過ぎて紙が破れてしまうことも 今はない 筆圧が強いのは自己主張が強い証拠だと どこかで聞いた事があるけど 筆圧が強い

電車の来ない駅

この世の果ての果ての果て 真っ暗な宇宙のような駅のホームに 宙ぶらりんの、まあるい電球の下 一人の女が立っていた 電光掲示板は文字化けして弱く光り 今や 全くその役目を果たしていない 電車が来る気配はない そこにやって来た透明な駅員は これは珍しいと 女に声をかける 「こんばんは」 「あら、こんばんは」 「私が見えるのですか」 「お洋服だけ。でもそこにいるのはわかりますよ、駅員さん」 風が ごおおお……と吹く 線路はどこまで行っても暗闇だった 「電車を待っているんです