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赤ちゃんがやってくる!

明日、赤ちゃんがやってくる。やってくるんです。

正確にいうと約10ヶ月前から私のお腹の中ですでに生命の育みは始まっていたわけなのだけれど「ついに、ついにやってくるのか...!」というのが今の率直な思いです。

悪阻で水分やりんごしか喉を通らず、職場の同僚に「小鳥の食事」などと言われた秋。祖母の三回忌翌日にインフルエンザ(しかもB型)を発症し、一族もろとも罹患してたらどうしよう...と心配した冬。新型コロナウイルスに翻弄されながら産休に入るまで医療機関で働き、休みに入ったとたんの緊急事態宣言でひたすら巣篭もりしていた春。共に過ごしてきた10ヶ月を振り返るとそれなりに長かったなぁ。

実感としてお腹の中に生命を感じ始めたのは年明けあたりだっただろうか。はっきりとした胎動というよりは、モニョ..モニョ..とクリーチャー的な何かがうごめいている感じ。次第に動きが大きく強くなり、子宮の壁に向かってシャドーボクシングでもしてるんじゃないかという衝撃にまでなった。意思を持った小さき人が確かに腹の中にいる!と実感せざるを得ない、嬉しくも不思議な体験でした。胎盤を介して私の血液から酸素と栄養を摂っていながらも、自分とは全く別の個体がお腹の中にいるという不思議。(母親と胎児で血液型すら違うこともあるし)

そして「私の赤ちゃん」という言葉を見聞きするたびに、お腹の中の小さき人のことを「私の」とは言い切れない奇妙な感覚になる自分。私には母性が足りないのだろうかと不安になったりもする。なんだか揺れる吊り橋を進むような心持ちです。どんな秘境にかけられた橋でも、目が眩むほど高くておっかなくても、頼りなげでボロボロでも、前に進まなければいけない、時間がかかっても。おまけにどこにたどり着くのかもよくわからない。とは言え、愛する夫と自分との間に生まれ来る小さき人との対面は掛け値なしに待ち遠しく、どんな人が出てくるのか胸が高鳴る。親になっていく人たちは皆こんな気持ちを経験するのでしょうか。

すでに入院し今は病室でこの文章を書いているところです。帝王切開での分娩が決まっているため、このあと、ど緊急の事態が起こらなければ明日にはまっさらでこの世に出てくる小さき人。私と夫もまた、まっさらから親を始めることになります。

ひどいことや悲しいことが沢山詰まった地獄のようなところにも、素晴らしいことや希望が確かに存在していて、生まれてくるあなたにそのことを伝えられる親になろう、と病室の窓から夜空を眺め決意しました。

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