小説 呪いの王国と渾沌と暗闇の主【第一話 赤い砦の王国】
極寒の季節、ここ東ティリエナ地方では、全ての川や湖は凍てついて、地元の人が言う所の中規模程度の雪が降ったり止んだりを繰り返していた。『静寂なシャンティ』にあるブルーニ川も、例外なくその表面を乾いた風に沈黙し、周辺の生き物たちも全てが眠りに落ちているかのように、しんと静まり返り、たまに雪の塊が枝から落ちる音がばさりばさりと木霊するだけだった。
『静寂なシャンティ』とは、国の台地を寸断するように存在する闊葉樹の群れ及び周辺の緩やかで広大な一帯を指し示す。たまに遠方から旅人など