見出し画像

しゅわしゅわ炭酸、恋の痛み

 あっつい。今にも溶けだしそうだ。あいつから貰った炭酸をごくごくと飲み込む。しゅわしゅわ。喉を刺激するこの感覚が大好きで_____。


 ちょっとだけ前の話。私が中学生の時は週6回程部活動があった。所属していたのは弓道部で、人数が大いにも関わらずそれに値したい小さな道場で練習していた。

 後輩のうちは先輩が優先で道場練習を行うから、まだ1年生の私達は外で身体づくりを行う。外周走ったり、筋トレしたり、縄跳びしたり。練習メニューは淡々としていて面白いものでは無かった。それでも私達の学年は皆仲良くで、ブツブツ文句言いながらも適度に遊びながらする練習が楽しかった。

 だけどこの練習が更に楽しくなる時があって、それは当時好きだった男の子と同じグループになれた時。彼は小学生の頃から仲のいい友達の1人で、くだらない小競り合いをしながらも仲が良かった。喧嘩するほど……っていう関係。明るくて面白くて、どこかつかめない彼が好きだった。

 とはいえまだ未熟な中学時代。やっぱりちゃんと喧嘩することもあって、1番記憶に残ってるのが夏休みの外周事件。私があまりにも走りたくなくて「ちょっとだけ、ズルしない?」なんか言ってしまった。
 この一言でなんでか喧嘩になって、気まずい雰囲気で部活が終わった。そして言い争いをする度「好きなのは私だけなのかな……」って落ち込む。大体はいつの間にか普通に話すのだけど、この時はちょっとだけ引きずった。いつもよりも落ち込んで、不安だった。

 それから一週間くらい経った時、夏休みの部活練習後。たまたま男子グループと帰るタイミングとルートが同じになった。私と彼以外がわちゃわちゃと楽しそうだ。一歩引いた所でああ、気まずいなて思いながら。

 少し歩いた所に信号機と自販機。青になるのを待っていたら、彼が「はい」って横からペットボトルを差し出してきた。
いきなりなことにびっくりしたけど、反射的にそれを受け取る。大好きなサイダー。ありがとう…と言ったけど何でくれたのか分からない。

「暑いからやるよ」

それだけ言って、みんなの所に混ざる。
そんな彼を見ながらサイダーを開ける。ぷしゅ。
この音が好き。

さっそく口に流し込む。暑い外で飲むサイダーも大好き。
しゅわしゅわ。ちょっとだけ喉が痛い。
彼がくれたサイダー。嫌われたかな?なんて心配要らなかったみたい。
不安だったあの1週間思い出しながらサイダーを飲み干す。
恋って辛いな。でも、楽しいかもしれない。

私の心がサイダーのように弾ける。ちょっとだけ痛くて、でもほんのりと甘みが残る。そんな貴重な思い出。

それから2人が付き合うのはまた別のお話。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?