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【短編小説】震えてる

叔母が死んだと連絡があってから、体の末端の感覚がない。

震える指で、どうにか落ち着こうとスマホを触る。

久しぶりに新幹線で地元に向かっているのが不思議だった。

喪服なのは自分だけで、土曜の昼前、ここだけ浮き上がっているような感覚になった。

叔母とは、昔から接点も多く、よく会話していた。

一方的な感情を向けられ、大嫌いになったのは5年前の事だった。

顔を覆っていないと、耐えられそうになかった。




やっと死んでくれた。





大嫌いだった叔母のことを思い出す。

もうこの世にいないと思うと、しあわせな気持ちであふれそうだった。

震えは止まらない。


うれしくて涙が出るように、震えもまた、どんな感情でもやってきてしまうのを知った、初めての日だった。


おわり


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