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うつしおみ

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真実を求めてこの世界を旅する魂の物語。
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2024年3月の記事一覧

うつしおみ 第54話 永遠の在処

淡く儚い世界に永遠を求めても、 それは存在しない宝物を探しているようなものだ。 それでも魂が永遠なるものを求めるのは、 心地よい時間を永続させたいと願うからだ。 永遠なる幸せ、永遠の愛、永遠に生きること、 この瞬間の陶酔が色褪せないようにと願う。 だが、その願いが叶うことはなく、 幸せは翳り、愛は古い記憶となり、生命はいつか失われる。 だからこそ、魂は永遠という時間に憧れ、 あの瞬間を失われずにいられたらと思うのだ。 儚い世界に身を置く魂は自身の無力を憂い、 その憂

うつしおみ 第53話 無垢と鎧

魂は無垢な姿でこの世界に誕生し、 何事かの智慧を拾いながら生きている。 その智慧が無垢な魂を鎧となって覆い、 それによって世界で生きる安心を得る。 その智慧が魂から剥がされることは、 自分の弱さが露呈するようで不安を覚える。 魂は無知で脆弱な者ではなく、 その鎧による強固で見栄えのする存在であろうとした。 だが、その強固さは無垢な魂を隠し、 その真実をも跳ね返すものとなった。 鎧は鎧でありそれは魂自身ではなく、 その内でほのかに光る無垢な存在こそが魂なのだ。 歳月

うつしおみ 第52話 魂の原罪

真実を知らないということが罪であるなら、 すべての魂は罪を背負っている。 罪を背負っているということすら自覚が薄く、 この理不尽な世界を嘆いている。 いまだ真実を知らないが、 それを見つける努力はしていると魂たちは声を上げる。 だが、魂たちは何が真実かを知らず、 ただ手当たり次第に世界を掘り返しているのだ。 そこで美しい鉱石や金塊を見つけると、 それを密かに懐に忍ばせ心躍らせる。 宝物で重くなった魂たちは、 それでもまだ満足せずに、穴だらけの世界を彷徨う。 魂はそ

うつしおみ 第51話 藪中の神殿

魂はその人生をかけて世界中の道を歩んでいたが、 未だに知らない道に出会う。 魂が歩んでいたその道は唐突に途切れ、 その先は鬱蒼とした藪に覆われていた。 そこに道はないと誰もがそこから引き返していたが、 その魂には僅かながら細い隙間が見えた。 藪を覆う草木を切り払い土砂を取り除くと、 そこに美しい石畳の古い道が現れた。 それがどこまで続いているのか興味があり、 さらに奥まで行ってみることにした。 ただ、藪を切り払いながらの歩みは楽でなく、 そうすることに意味があるのか

うつしおみ 第50話 希望の道

自らを見失った魂たちは、 見失っていることさえ分からず世界をさすらう。 そうして世界で触れたものを握って、 それに引きずられて歩いている。 その先に何があるのかは分からないが、 歩いている理由があることで安心するのだ。 そんな魂に世界が困難を与えなければ、 それで何が正しのかを考えもしない。 世界が困難を与えたなら、 慌てて握っていた手を離し、不安の渦に放り込まれる。 世界で生きることは続いていくが、 自分を見失った魂には確かな方角さえないのだ。 魂が自分を見失っ