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静岡初上陸、の巻

 わたしはちびまる子ちゃんが好きだ。毎週必ず見ているわけではないし、幼い趣味だと揶揄されることもあるけれど、まるちゃんがとても好きだ。特にまるちゃんとたまちゃんの友情が大好きで、あの二人の関係はとても理想的で尊ぶべきものだと本気で思っている。
 クラスに、同じようなことを考えている子がいた。その子はスマホケースにまるちゃんのステッカーを貼っていて、思いきって声をかけてみると、大当たり。話が盛り上がっている中、そのステッカーをどこで手に入れたのか聞いてみた。

「ちびまる子ちゃんランドで買ったよ〜」

 その晩、わたしはすぐに母に言った。

「ちびまる子ちゃんランド行きたい!!」

 母は快諾して、ちびまる子ちゃんランドについて調べてくれた。まるちゃんが好き、と言っておきながら、ちびまる子ちゃんランドの存在すら知らなかったのだ。なんて夢みたいなランドがあるのだろう、と鼻息を荒くしているわたしの隣で、グーグル先生をフル活用する母。

「ちょっと遠いけど、日帰りで行けそう」
「夏休みにでも行く?」

 こうして我が家の静岡日帰り旅行が決定した。

 そして迎えた当日。
 起床時間はなんと02:30。それは前日から決めていたことなのに、眠りについたのは22:00をまわっていた。それなのに、遠足が楽しみすぎて目が冴えてしまう子どものように、わたしは02:00に目を覚ました。だって、わたしの寝坊で計画が潰れるとか、あってはならないことだし?と思いながら用意をする。家族も次々と起床。だらだら喋っていたらいつの間にか出発時間の04:00を迎えそうになり、大慌てで支度の仕上げをした。
 母が運転する車に乗り込み、出発。あたりは暗く、人も車もなく、コンビニだけが明かりを灯しているような時間。興奮していたわたしはすぐには寝ず、暗闇の世界を楽しんだ。
 けれどいつの間にか眠りにつき、しかも寝顔を兄に盗撮され、目が覚めたのは日が昇るすこし前。
 太陽が姿を見せるのを待ち望むかのように、すこしずつ明るくなっていく空。そして、ようやく現れた太陽はとても眩しく、車内では感嘆の声が上がった。地球への太陽の影響力はあまりにも大きかった。
 サービスエリアに止まり、車を降りる。時間は分からなかったけれど、朝の光を浴びて、コンビニでおにぎりをひとつ購入。よく分からない組み合わせだったのに、とてもおいしかった。

兄弟で力を合わせて撮った、きれいな朝日
(←兄  弟→)

 そして、また出発。
 海に感動し、山に見惚れ、また眠って、到着。
 まずは朝ごはん、ということで、ランド近くの市場へと。時刻はおいしそうなお店が並ぶ中、わたしは原因不明の腹痛に苦しめられていた。どのお店で食べるか迷いに迷ったあげく、結局は市場でマグロの中トロ丼とマグロのメンチカツとマグロのコロッケを購入し、車へと戻った。
 まぐろ、マグロ、鮪。腹痛も忘れるほどどれもおいしかった。中トロ丼がとてもおいしくて、ちょびっと乗せられていたネギトロも最高だった。漁業が盛んな地域に住めば、この幸せをお手頃価格で手に入れられるらしい。この上なく羨ましい。
 市場にはカニとかブリとか、おいしそうなものがたくさんあった。母はお店の人にお姉さん、と呼びかけられ満足気だった。兄は大きなブリを持って帰りたいと悔しそうな顔をしていた(それがまた安かったのだ)。
 車の中では魚の漢字クイズ大会が盛り上がり、マグロのおいしさに悶絶し、とにかく楽しかった。
 そして11:00頃、ついに夢のランドへ到着。
 信じられないくらい幸せ空間だった。写真をいっぱい撮って、グッズをいっぱい買って、わたしが1番楽しむつもりだったけど家族も大興奮だった。

尊い
尊い
尊い
尊い
尊い

 ランドの中には神社があって、5人揃っておみくじを引いて、それぞれの内容にみんな笑った。とてもしあわせだと思った。

 お土産も買って、惜しみながら退店。外国人もたくさんいて、世界中にまるちゃんの愛らしさが広まっているのだと思うと、また幸せだった。
 ちびまる子ちゃんランドが入ったショッピングセンターではかき氷フェアが行われていたので、かき氷を食べた。外で開催されていて、もちろん暑く、ふわふわを謳われた氷はすぐに溶けていった。1番溶けるのが早かったのは父のかき氷で、数分しか保っていなかったように思う。父が一生懸命写真を撮っていたときに、最初の崩れが起きたので、すこし笑ってしまった。

 そのあとは車でしばらく静岡を走って、海へ向かった。風があまりにも強くて、また5人で笑った。あとから母が撮った写真を見返すと、強風でわたしの髪が暴れたので結果的にわたしが禿げているように見える写真があって、消したい衝動に駆られた。
 海の近くの売店では、世界一濃い抹茶のソフトクリームが売られていて、食べてみたかったけれど、謎の腹痛が止まらないところへ、かき氷に続けて冷たいものを投下するのはよくない気がして諦めた。

 車に戻って、うなぎ屋さん探しをスタート。最初に予定していたところはまさかの定休日で、次に向かったところは最大2時間待ちの大盛況。
 朝からずっと動いていた母はさすがに疲れたようで仮眠を始め、助手席で父が検索を開始。ちょっと高いな、をBGMに、わたしと兄は単語帳に向き合い、弟は漫画にのめり込んでいた。
 わたしが兄に語彙力の低さを笑われているところで、静岡駅へ行くこととなった。
 静岡駅に程近いうなぎ屋さんで人生初のうな重を食べた。身がとても柔らかくてタレもくどくなくて、おいしかった。これにドハマりしている元太くんって通だなと思った。
 お腹いっぱいになる頃には、お店に列ができていた。その横を通り過ぎて、静岡駅へ向かった。お土産を一通り眺めた後、レジへの長い列へ両親と弟が並んだのを見て、わたしと兄はいったんショップの外へ出た。兄が、最近はへそ出しの人が多い、なんて言い、その数を数え始めた。我が家の人間は暇の潰し方を、周りの人に頼ったものしか知らないのだ。わたしはタトゥーを掘っている人をたくさん眺めていた。この日1日でたくさんタトゥーがある人を見たけれど、家族みんな見てないと言う。もしかすると、わたしはタトゥーの幻覚を見ていたのかもとすこし不安になる。

 帰り道は文字通り車を飛ばしたらしい。2時間ノンストップで車を走らせた母は、朝にも停まったサービスエリアで、子どものようになっていた。我が家はみんな、疲れると子どものようになる。遺伝の力がすごい。
 母はクーリッシュを食べる横で、他4人はセブンティーンのアイスを食べた。わたしはいつかの青春を思い出して笑っていた。
 空にはとてもきれいな月が浮かんでいて「わたしは女子高生だから」と言いながらカメラを向けた。

「まあまあだね」と母
本物はもっときれいだった

 次に目を覚ましたのは、高速道路を降りたときだった。家族全員がなにかで盛り上がっていて、ちょっと焦った。どうやら兄と弟が縛りのあるしりとりをしていたらしい。爆睡していたのはわたしだけだったようで、悔しい気持ちになる。
 家に着いたときはもう日付が変わっていた。20時間の旅だったね、と父が言い、母が疲れた顔で笑った。もう感謝以外の言葉がない。
 旅行から帰ってきたときはいつもそうなのだけれど、身体はとても疲れているのに、まったく眠くならないのだ。
 父は早々に布団へ入ったけれど携帯をいじっていて、わたし達兄弟は缶ビールを片手に持った母とバラエティ番組を見ていた。けれど、1時間もしないうちに各々が部屋へと戻っていく。
 とても楽しい1日だった。
 また家族みんなでどこか行けたらいいな。


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