夢のあと

 かつては僕にも夢があった。
 無邪気に将来の夢を見て、夢を叶えたいと努力をした。
 その夢がどんなに困難なもので、到底叶うはずがないものだと大人に諭されても挫けることなく。
 かつての僕は、真剣に夢を目指していたんだ。

 ふとした時に思う。
 自分はどこで何を間違えてしまったのだろうかと。
 いいや、きっと抱く夢を間違えていたのだ。
 身の丈に合わない夢だった。
 そうとしか言いようのない程に、僕の夢はことごとく叶わなかった。

 僕には他人に愛される才能を持ち合わせていなかった。
 それ故、どれだけ努力をしようと、何をしようと人の目に留まることはなかった。
 いつでも、何をしても。
 まるで透明人間にでもなったような気分だと、何度思ったことだろう。

 いてもいなくても変わらない存在で。
 ただそこに在る道端の小石のような、そこに在るだけの背景と変わらない。

 かつてはそれでも努力を続けられた。
 きっといつか、何らかの形で報われる日が来ると信じていた。
 そんな日が来ることなどないのに。

 どうしようもない現実を思い知らされてしまった僕にはもう、何かをすることは出来ない。
 何をしても同じ。
 何をしたところで変わらない。
 何もかもが無駄なことだと、全てを諦めてしまった。

 僕の前にはもう夢も希望も無く、ただただ薄暗い現実だけが広がっている。
 これから先を生きたところで一体何になるというのか。
 何をしたところで何にもならないというのに。

 今すぐ死ぬほどの理由が無いから生きているだけ。
 死んでいないから生きているだけ。
 仮に今すぐ死んでしまったとしても、未練などないのだろう。


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