万引きは犯罪です
高校生の頃、私は万引きで捕まった。
ショッピングセンターで洋服を手当たり次第カバンに詰めパンパンになっていた私はあっさりGメンに捕まった。
捕まったのはその時が初めてだったけれど万引きはその時が初めてではなく、アクセサリーや雑貨など他のお店でもやっていた。
買うお金がなかったわけではない。
どれもこれも、欲しかったわけではない。
盗ったものはそのまま、部屋の片隅に袋に押し込んだまま。
何かが埋まるような気がして次々とやった。
結局埋まらないままいずれ捕まる時が来て、そして私は捕まった。
母が店に呼ばれ私が盗んだ洋服の代金を全て支払うという交換条件で警察へは引き渡されなかった。
母はお店の人に必死に謝罪していたけれど私とは目を合わさなかった。
こういう時、親としてどうするべきなのか分からないのだ。
ただおろおろして誰かに丸投げする。
誰かがなんとかすべきよ!と。
この時は当然、投げた先は父親だった。
部屋に籠っていると母が父に顛末を説明している気配がする。
程なく呼ばれた。
父は私を目の前に正座させ、私の足を何度も叩きながら怒鳴った。
とにかく怒りで鬼の形相の父は、説教とも非難とも罵倒とも区別がつかない怒鳴り声を浴びせた。
「何不自由なく生活させてやってるのにお前は何が不満なんだ!まだ足りないのか!」
「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」
涙を流し震えながら謝罪する私の頭の中は意外に冷静で、父の説教の中身が気になって仕方なかった。
父が怒鳴り散らすのは
「お前は家の家名に泥を塗ったんだぞ!分かってるのか!」
「俺に恥をかかせやがって!」
「〇〇家の面汚しが!」
そんな範囲に終始していた。
「万引きは犯罪ですよ」
「お店の人に多大な迷惑を掛けたんですよ」
「犯罪を犯したら人生を棒に振るんですよ」
そんな話はどこにも無かった。
これ以降、万引きを止めた。
罪悪感と反省から止めたというのが正しい姿なのだろうけれど、
正直にいうと私が止めた理由は万引きをしても何も埋まらない事が解ったから。
何不自由なく育ててやったのに。
ナニフジユウナク ソダテテヤッタ ノ ニ ?
この不自由は一生付き纏うのだろうか。
幼少より隣にある漠然とした不安が、徐々に等身大に現実味を帯びてきた。
万引きは犯罪です。
あの時、個人の事情で迷惑をかけてしまった方達には本当に申し訳なく思っています。
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