母と祖母 手術
母と祖母は嫁姑の関係だ。
よくある話で仲が良いとは言えなかった。
私が知っているのは高校生までで、ざっくりと、子供の目線でしか知らないということになる。
小さな頃から祖母の悪口を聞かされ続けてきた。
正確には祖母と父の悪口。
それがあまりにも辛辣なので、そんなに嫌なのになぜ結婚したのかと訊ねたことがある。
母の答えは明確だった。
「おじいちゃまが娘一人くらいはちゃんとした家に嫁いで欲しいって言うから。親孝行のため仕方なく。」
因果応報とはこういうことを指すのか、自分の息子(長兄)のお嫁さんと母のスタンスは嘘のように同じだ。
父は祖母を大切にしたがった。
していた、ではなく、したがった。
欲しい見返りは愛情だったのだと思う。
兎にも角にも父の祖母へ対する扱いは少し常軌を逸しており、それもまた母の嫌悪を後押ししていた。
子供の目に映る父と祖母の関係は、大切にしているというより崇めているという方がしっくりきた。
なぜなら父は母を罵倒する際、同時に祖母を引き合いに褒めそやしていたから。
そんな父がとても嫌いだった。
母を虐めているように見えた。
祖母に対しては、そんな息子にどうして何も言えないのか理解できなかった。
母からは、結婚してすぐに父と祖母が2人で旅行に行き自分は留守番させられたという話を繰り返し聞かされた。
やはり普通ではなかったと言えるだろう。
そんな家庭で両親は日常的に揉めた。
盾にされる私は母を守ろうとするほど父から攻撃を受けた。
攻撃を跳ね除けるため、私は強くなければいられなかった。
その強がりは祖母にとって「末恐ろしい」となった。
祖母は生前、甲状腺の手術をした。
病名は覚えていないけれど喉に傷があったことは覚えている。
祖母の手術は父にとって一大事だ。
私はどの程度の病状、手術なのか知らないままに、命に関わるような状況ではないという認識は持っていた。
不安そうな父を横目に冷たい口調で母が言う。
「ほんとにそこまでしなきゃいけないのかしら。絶対どこか悪いに違いないってしゃんむりお医者様に言って。とうとう手術までさせることにしたんだから、おばあちゃまもすごいわよね。」
私は耳を疑った。
母は、祖母が自分を病気だと主張したいがために無理矢理医者に手術をさせるのだと言ったのだ。
父が母を虐めているように見えていた鱗が少しづつ剥がれ始めた。
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