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第21話 気持ちはムゲンダイ

朝、目覚めるといつも私はうつ伏せで寝ている。枕に顔も半分つぶして。
何となくスズメの鳴き声も聞こえてきて、うっすらと意識も視界も開けてきた。あー今日もまた忙しい1日が始まるんやなぁ、といつもの様に目覚めた…

と、思ったら目の前の風景が違う

人の後ろ頭がある…
「…ん…ーー」と、声がして後ろ頭が私の方にくるんと動き振り向いた。

「おはよ」

うつ伏せで左下半分、顔を潰してる私に優しく言うてくれたのは石井くんやった。

そっか、お泊まりしたんやった…。

「寝ぼけてんの?固まってんで」
と、笑いながら私の体の向きを自分に向けて私の頭は石井くんの右肩にのっかり腕枕してくれた。まるで、ぬいぐるみを抱えるように抱きしめ引き寄せた。

「目ぇ覚めたら、石井くんいてビックリした…。」

「夢かと思た?」

また優しく笑って、おでこにキスしてくれた。

「コーヒーのむ?」

「…うん。」

私の返事を聞くと、ベッドから出てキッチンに向かって行った。
その石井くんの後ろ姿を見てると急に恥ずかしさと幸福感とが込み上げてきて、顔が熱くなってきてその顔を見られたくないから布団を頭からガバッと掛けて潜り込んでしまった。
夢やなかった…。

しばらくして石井くんの足音と共に聞こえてきたのは
「なにしてんねん?」の声やった。




「秋ちゃーん!今日使う道具また出しておいてね~!」

その声にハッとして思わず大きな声で
「はいっ!!」
と返事してしまった。

あのあと、石井くんとコーヒー飲んで、一旦自宅に帰って着替えて出社。

まだなんか夢心地のような、気持ちがふわふわしてて仕事に集中できんでいる。

「秋ちゃん、おはよう!えらい今日も元気そうやね」

クスクス笑いながら安田くんが話しかけてきてくれたのにも飛び上がるほどビックリしてしまった。

「うっわっあっ…!ごめんっ安田くんか…!!」
「なんや、どうしたん?なんかあったんか?」

私の慌てっぷりに驚き、安田くんをおろおろにさせてしまった…。
「なんもないよっ。ごめんね…」と謝っていると、目線に私の挙動不審の原因の人が見えた。

「えっえっ!どないしたん?!」
おろおろになってる安田くんに隠れるように私は安田くんを盾にして石井くんを見ないように、石井くんに見えないように隠れた、つもりやったけど…

「アホ。なにしてんねん。安田くん使って」

と、ニヤニヤしながら私の頭をポンと掴んで安田くんから猫の子をはがすようにして私を離した。

「…おは、おは、ようござ、い、ます」

「なんやなんや、秋ちゃんカタコトやで。また熱か?」その場は安田くんと石井くんは大笑いし、私の顔は赤面して子猫みたいに掴まれながら恥ずかしくて俯くしかできひんかった。


舞台袖で漫才をしている石井くんを見てると、真剣な顔したり、安田くんのボケにウケて笑ったり、石井くんらしさあるツッコミをしたり、プロの漫才師の顔をしてはる。
朝、コーヒーを淹れてくれてる顔と全然違う。
色んな顔した石井くんを知ってる私は幸せものやんなぁ…。
なんて仕事中に浸ってるとバチが当たった。

幸せすぎて忘れてた…

「秋ちゃん、この公演終わったら打ち合わせあるから宜しくなぁ」
と、へらへらしながら私に話しかけてきた、ボス猫ならぬ上司様…

「橘さん…とコマンダンテさんとです、よね。了解しました…。」

石井くんなんて話すんやろう…。

打ち合わせのセッティングだけ行い、私は他の仕事もあったのでそれを済ませ、まだ打ち合わせは終了してなかったけど、先に退社し自宅に帰った。

お風呂から上がると石井くんからLINEが入っていて

『もうハッキリ言うた。安田くんもいたけど。秋が彼女やってこと。』

石井くんらしいと言えば、らしいんよなぁ。
この文面読んでびっくりしたけど、石井くんならそう言うやろうなって思てた…。

『分かった。ありがとう、話してくれて。』

返ってハッキリ言うてくれて私も気持ちが楽になった気がした。

『橘くん、秋に謝ってたよ。チョけてからかったらオモロかった、ごめんなって。あとな、俺もホンマは彼女いてるんよって言うから、ちょっと腹立った。』

私の頭の中で、ななまがりの初瀬さんがいつもの大声で「なんじゃぁあいっ!おぉい!」と叫んだ。

私は一言

『なんそれ!』

『ZAZYかっ』

幸せもムゲンダイ
















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