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第7話 プリンとマイペースくん

「んー、ホンマにどうしよう…」

休みの日に、石井くんへの誕プレを買いに来たはいいけど、何にしていいか決められんまま、ウロウロするばかりでいた。
オシャレな石井くんに何を渡したら喜んでくれるんやろうなぁ…

ため息しかでんよ…
ふらふらと歩いてると、いい雰囲気の落ち着いたカフェが目に止まった。寒いし、温かいものでも飲もうっと思い入ることにした。

「いらっしゃいませ」
入ると暖かい店内にホッとした。テーブル席に案内され、メニューを見ると、おすすめのブレンドコーヒーとプリンのセットを注文した。
コーヒーがくるまでにちょっと、スマホで検索してみるかなぁ、と画面を眺めてる後ろの方でまたお客さんが入ってきた様子があった。

「あ~いらっしゃい。久しぶりだね~」
ここの店長さんと知り合いな様な会話が聞こえてきた。
それよりも、どうしようかなぁっとスマホの画面とにらめっこしてると、今入ってきたお客さんの背中が一瞬視界に入った。そのお客さんは私のテーブル席の横にあるカウンター席に座った。楽しそうに店長さんと会話し始めると、なんだか聞いた事あるような声やなぁって、失礼やけどそのお客さんの背中をもう一度見ると…

「…あれ?石井さん??!」
と思わず声が出てしまった。
そのカウンター席の背中は少しびっくりした様子で静かに私の方を振り返った。
「あっ…なべさんやんか」
いつもの静かなリアクション。

「2人は知り合いなの?」
店長さんに言われて、石井くんの隣に案内された、というか私の注文してたコーヒーがそこに置かれてしまった。

「劇場のスタッフさんなんです。今日、休みやったんやなぁ」
「石井さんもお休みやったんですか?」
なんだか、いつものたわいもない会話をまさか偶然寄ったカフェでするとは思いもしなかった。

「買い物でもきたん?」
ドキッ
これは言ってしまったらまずいので適当に誤魔化そう。
「はい。服とか?なんか…いろいろ?と?」
「なんで疑問形なん?」と、クスクス笑われながら2人で会話してると、それを聞いていた店長さんも笑いながら
「石井くん珍しいね。そんな風に会話する人。2人は仲良しさんだね」
「ええええっ」
そんな風に言われるなんてビックリして大きい声がでてしまった…
大きく開いた口を両手で塞ぐ私の顔を静かに見つめてきた石井くんは

「仲良しさんって…子供やないねんからなぁ」
て、言うてからにこっと笑って
「でも、食べてるもんは子供やなぁ」
店長さんは、それに大ウケし、私は顔が熱くなって嬉しいやら恥ずかしいやら分からんくなった。

「ありがとうね。また2人で来てよ」
と、店長に見送られ2人で店を出た。

「これから、どこ行くん?」
「んー……」
誕プレ探しに行きますとは言えんしなぁ。
「予定ないんなら、俺もう1軒カフェ行くねんけど、来る?」
思わぬお誘い。
「はい、じゃあ行きます」
誕プレのヒント見つかるかもせん。
石井くんの歩幅に合わせようと必死について行く私。ゆっくりとマイペースにそれに合わせてくれる石井くん。
徐々に合わさってくる歩幅、横並びで歩くってそんななかったかもせんなぁ、とふと見上げるとまっすぐ前だけを見る石井くんの横顔はキレイやった。

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