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次期アメリカ副大統領カマラ・ハリス氏が繰り返す言葉

(前略)
「皆さんは 
希望を、団結を、誠実を、科学を、そして真実を選びました。
ジョー・バイデンを次期大統領に選んだのです!
(中略)
私は副大統領になる最初の女性かもしれませんが、私が最後ではありません。
これを見ている全ての小さい女の子が、アメリカは可能性の国だと理解するからです。
ジェンダーに関わらずアメリカの全ての子どもたちにアメリカは明確なメッセージを送りました。

高い目標を掲げて夢を見ましょう。
信念を持って先頭に立ちましょう。

前例がないからと他人があなたを制約しようとしても、他人には見えない自分を見つけましょう。

その一歩一歩に私達は拍手を送ります」(1)


11月7日、アメリカ東海岸のお昼頃、各地域で次期大統領選挙が民主党のジョー・バイデン元副大統領に当確したというニュースが流れた。その瞬間、アメリカの各主要都市で選挙結果を外で見守る元バイデン副大統領のサポーターたちは歓声を挙げた。

シャンパンを開けて、シャンパンシャワーを振りまく人、ワインで乾杯する人、バイデン、ハリス(次期副大統領)と書かれた旗を振り祝う人、喜びで抱き合ったり涙を流す人、車のクラクションを鳴らしてお祝いする人、音楽に合わせてストリートで踊りだす人達……。夜には打ち上げ花火も上げられた。それぞれの人たちがそれぞれの体からにじみ出る自然なやり方で、次の大統領の当確を祝い喜びを表現していた。その様子は、いわば、アメリカ全土で、新たな民主主義の幕開けを祝う、人々の魂の祭りが各都市で開催された、そんな風に思えた。

私は永住者としてアメリカに住んでいるが、アメリカの市民権は持っておらず、選挙権はない。しかし次の大統領が誰になるかで、日常生活にも様々な影響がでることが予想されているため、選挙の行方を静かに見守っていた。

11月3日が選挙日だった。だが、今回新型コロナの影響もあり、郵便投票をした人も多く、その集計に時間がかかり、バイデン元副大統領の当確がわかるまでに4日間もかかった。この間、誰を支持しているかに関わらず、結果が気になり、赤と青に二分されたアメリカの地図を示すテレビやデバイスのスクリーンを睨みつけ、寝不足になったアメリカ在住者は少なくなかっただろうと思う。何を隠そう私もその一人だ。今回のアメリカ大統領選挙はアメリカ国内だけでなく、世界中が見守る大統領選挙だったのではないだろうか。

次期大統領と副大統領がバイデン氏とハリス氏に当確が決まった夜、彼らの勝利の演説があった。勝利演説は次期副大統領になるカマラ・ハリス氏から始まった。冒頭のメッセージは次期副大統領になるカマラ・ハリス氏の言葉だ。

もちろん、バイデン次期大統領の演説も非常に力強く心に響いたのだが、ハリス氏の演説が最初だったこと、また、アメリカ史上初めての女性副大統領になることも後押しして、カマラ・ハリス氏の演説の全ては非常に力強く、一移民の私の心に響き、それを震わし私に涙を流させた。ハリス氏の言葉の一言一言に重みを感じた。冒頭の演説の引用で、長くなるため中略としたが、その間には、アメリカを支えて、権利のために尽力した黒人を始め、様々な人種の女性を讃える言葉もあった。

アメリカ史上初めての女性副大統領となるカマラ氏は、検事としてキャリアをスタートし、初めての女性アフリカ系アメリカ人としてカリフォルニア州の検事総長を経て、カリフォルニア州で初めての女性アフリカ系アメリカ人上院議員となった。(2)

ハリス氏の両親は移民で、ジャマイカ人の父は経済学者で、インド人の母は医師(3)でハリス氏自身は移民の二世である。だからだろうか。アメリカの政治というと、自分とは違う世界での話のような気がしていたが、ハリスが移民二世であり、女性であるということで、筆者にとっても身近に、そして自分ごとのように感じ、ハリス氏の言葉がすっと私の胸に入って来たのかもしれない。


私は二十年ほど前に日本でアメリカ人の夫と結婚後、数年日本に住んでいたのだが、子供が生まれ、夫の母が高齢になってきたということもあり、十二年前にアメリカの東海岸に移住した。

それまで、日本でやりがいのある仕事に就いていた。子供を持つ女性にも働きやすい環境だったから、仕事を辞めることは簡単な決断ではなかった。それに、自分にも夫の母よりは少し若いが高齢の両親がいた。それなりに幸せな生活をしていた日本を離れ、一から文化や言葉が違う見知らぬ土地で生活を始めることに抵抗がなかったといえば嘘になる。

それでも、日本とアメリカの2つのアイデンティティを持つ子供にとって、より多様性のあるアメリカで生活するほうが将来的に可能性が広がるだろう。アメリカ人の夫にとっても、日本で働くよりも、地元に戻ったほうがキャリアの面で有利になる。家族にとって総合的にはアメリカで暮らすほうが良いだろうと、自分のキャリアを捨ててアメリカに渡った。

移住して数年は、生活に慣れるのに精一杯だった。さらに二人目の子供が生まれ、異国で子育てをするのに、毎日が矢のように過ぎ、政治について興味が湧くところまではいかなかった。だが、今年に入り新型コロナがアメリカ各地に広がり、人種差別の問題、西海岸の山火事など、様々な社会問題が頻発する今年、必然的に州や行政の動きに興味を持つようになった。それに伴い、メディアで報道される国のリーダーであるトランプ大統領の発言や行動にも、あくまで政治には素人の観点からだが、注目するようになった。

その中で、過去のいくつかの記者会見でトランプ大統領の女性記者を侮辱した映像を見た。女性記者からの質問や、記者のリアクションに対して、トランプ大統領は、人種差別的な発言をしたり、「ばかげた質問」、「あなたは何も考えていない」などと返答した。見ていて辛くなるものばかりだった。自分の子供達もテレビを見るし、こういった動画はネットでも見ることができる。絶対に自分の子どもたちにはこのやり取りを見せたくないと思った。

アメリカを代表する大統領の言動は影響力がある。暴言を吐かれた記者は私にとって赤の他人であっても、それらの言動は、私自身聞いていてすごく嫌な気分にさせた。子供がその映像を見たときにどういう影響があるのだろうか。

また新型コロナウイルスに関して言えば、トランプ大統領はパンデミック当初、専門家の意見に耳を貸さず、マスクの着用をしていなかった。こういった映像が子どもたちを始め国民にどういった影響を与えるのかと思うと非常にやりきれない思いがこみ上げてきた。

私は家族にとって、子供にとって、アメリカで暮らすほうが幸せになれると思い移住したが、一体この選択が本当に正しかったのだろうかとさえ考えるようになった。


そうして選挙日を迎え、先週、バイデン氏が次期大統領にハリス氏が次期副大統領に当確し、勝利演説を聞いた時に、心のなかでやりきれずに鬱々としていた気持ちに晴れ間がでてきたような気がした。

ハリス氏は、勝利演説のときもそうだが、小さな女の子へ、この国での可能性を示す事の重要性を繰り返し述べている。11月14日のハリス氏の公式ツイッターのアカウントでも、「小さな女の子へ私達は可能性を示している」とツイートしている。一緒にアップされていた動画では、「自分がステージに立って演説するのをアメリカ中の女の子が見ている、その親御さんたちもそれを見て、アメリカでの可能性について子どもたちに話をするでしょう」と言っている。

ハリス自身が女性であり黒人と南アジアのルーツを持つ移民の二世であることもあり、マイノリティの人たちへのエンパシーを持ち合わせていることも、演説や動画から伝わってくる。

子どもたちに、バイデン氏はもちろんだがハリス氏の言動をもっと見て欲しいと思った。

特にハリス氏はアフリカ系アメリカ人女性で初めてカリフォルニア州の検事総長や上議員に選出され、自ら前例を作ることで後に続くマイノリティの女性たちへ道を切り開き、子どもたちへ、特に女の子達へ可能性を示してくれている。

バイデン元副大統領が次期大統領になるように、将来的にハリス氏が副大統領を経験し、大統領になる可能性は大いにある。そうなると、アメリカ初の女性大統領になる。

今後も、これまでのように、次時代を担う子どもたちにカマラ・ハリス次期副大統領自ら、アメリカが可能性の国であるということを示し続けてほしい。

これからもハリス副大統領の言動に注目していきたいと思う。


参考文献
(1)【米大統領選2020】 カマラ・ハリス氏の勝利演説 子どもたちにメッセージ
https://www.bbc.com/japanese/video-54861200 (2020年11月12日閲覧)
(2)United States Senate, Kamala D. Harris
https://www.senate.gov/artandhistory/history/common/generic/Photo_Kamala_Harris.htm
(2020年11月12日閲覧)
(3)CNN Politics, Kamala Harris Fast facts, CNN Editorial research
https://www.cnn.com/2019/01/28/us/kamala-harris-fast-facts/index.html (2020年11月12日閲覧)


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