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一生に一冊でいい

中学生の時、模試の中で引用されているのを見て「面白そうだな」と思った小説があった。模試の翌日あたりに図書館で借りて、一気に読んだ。
それは大当たりというやつで。
そのあと10年、何冊も何冊も本を読んだけれど、その本は私の中のランキングの不動の1位だった。日々の折々で励まし、勇気づけてもらった。
生涯持ち歩くと決めている大切な作品だ。

この本があったから世界が開けた。そういう本が自分に一冊でもあるだけで、こんなに毎日が違うんだなって、密やかに感動した。
だから、ひとりでも多くの人にそういう本が一冊でも見つかるといいなと思う。
毎日がしんどかったり、物足りなかった時のひとつの突破口として「本」を信じられる人が増えるといいなって。

オーディオブックの会社に勤めてもうすぐ二年経つが、改めて感じるのは「読書」へのハードルの高さだ。「本が苦手」「本が読めないことがコンプレックス」みたいな声をたくさん聞くし、私自身も本好きと表明することにものすごく抵抗がある。一般人程度にしか本を読めてないものでして。

もちろん本の目利き力?といえばいいのか、自分にとって最適な本を選び取る力とか、本から学び取る力を培うために、ある程度量をこなさなければならないという事実はあるのかもしれない。
けれど、もうちょっと手軽な、仕事の息抜きに食べるチョコレートくらいの感覚で、みんなが接することはできないのかなあというのは、考えてしまう。万人に開けていてほしいのだ。

話は変わるけれど、つくばに移住して感じるようになったのが、「街というものは、シンプルに人の集合体なんだ」ということだ。身近な人が議員さんになったり、起業をしたり、新しいことを始めたり…そこに住む人がそれぞれ考え動いた結果が、そのまま街の形成につながっていく様をこの2年でダイレクトに感じた。
人の心は文化によって育まれるし、その礎のひとつはやはり本だろう。自分の住んでいる街にもし、読書はしたいけどなんだか抵抗があるという人がいるのなら、力になりたい。

ずっとずっと考えていたけど、お気持ち表明しよう、と昨日決意したので記しておく。

ちなみに模試で出会った一冊というのは、佐藤多佳子の「黄色い目の魚」です。30過ぎた今読んでも、やっぱりすごくいいな。


読んでくださいましてありがとうございます〜