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1.5℃目標は本当に達成できるのか?

地球の気温上昇を抑えることを目的に合意したパリ協定は、現実的にまだ達成可能なのでしょうか?主要な気候関連目標の達成が難しくなっている中で、目標や優先順位の見直しを行うべきではないかという意見が一部で上がっています。

パリ協定とは?

パリ協定とは、国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)において195か国の締約国が署名した協定のことです。この協定で署名国は、世界の平均気温の上昇を産業革命以前から2℃未満に抑えて、可能な限り1.5℃に抑えるよう努力することを取り決めました。パリ協定に基づき、署名国は2050年までにGHG排出量のネットゼロ達成を宣言しました。2050年にネットゼロを達成するためには、2030年までに2019年比でGHG排出量を43%削減する必要があります。

パリ協定の合意から既に7年以上が経過しており、2030年まで残り7年となる中で、1.5℃目標の達成が現実的に可能なのかという点について、改めて検証する必要があります。

1.5℃目標の達成は実現不可能であると考える気候専門科学者がいる一方、もっと抜本的な対策を取ることができれば今でも目標達成は可能であると考える者もいます。産業界の中には、特に化石燃料を生産する会社等は、パリ協定の無効を望む会社もあります。なぜなら、パリ協定はこれらの会社の既存ビジネスの拡大を妨げるからです。

民間部門で議論されていること

  • 1.5℃目標を達成しなければどうなるのか?

  • 目標を再検証し、再設定する時期にあるのではないか?

  • パリ協定の目標や計画が崩れた場合、どの業界・企業が得をし、または、損するのか?

  • 1.5℃目標の達成は困難であり、地球温暖化は避けられないため、緩和ではなく、適応の道を探ったほうがいいのではないか?

COP28議長の矛盾

COP28議長であるジャーベル氏は、国際会議等で世界は1.5℃目標達成を諦めてはいけないと主張しています。しかし、ジャーベル氏はアブダビ国営石油会社のCEOも務めており、彼の主張には矛盾があります。2021年にジャーベル氏はアブダビ国営石油会社のCEOとして、2030年までのUAEの石油生産量を急拡大しながら、GHG排出量も同時に削減できると宣言しました。

科学者や気候変動対策推進派が恐れていること

彼等・彼女等は、1.5℃目標の達成が困難であることを認めてしまうことは、各国政府や企業の気候変動対策を遅らせることを正当化することに繋がるのではないかと心配しています。

実態はどうなのか?

パリ協定が決まった翌年の2016年以降、GHGの排出量は減少するどころか、2020年を除いて、毎年増加しています。

科学者の本音

国際的な科学誌「Nature」が2021年にIPCCレポート執筆者に行った匿名の調査によると、回答者のうちの75%が21世紀末までに気温上昇が2.5℃を超えると回答したとのことです。

1.5℃目標の達成を後押しする動き

CO2の排出量は増加していますが、1.5℃目標の達成を後押しする変化も起こっています。一つは、ウクライナ戦争により、欧州がエネルギーシステムの変革を加速させていることです。欧州は、エネルギーについてロシアへの依存度を下げるために再生可能エネルギーの普及と省エネルギー対策を急いで強化しています。もう一つは、バイデン政権下のアメリカで、グリーン技術への投資を推進する、予算3690億ドルのインフレ削減法が成立したことです。

参考文献


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