英語で読む夏目漱石『三四郎』の名言
皆さんは夏目漱石の『三四郎』はお好きですか?
私は若い頃、初めて『三四郎』を読んだとき、頼りない主人公が特に成長もせずに終わってしまうのを少し物足りなく感じたのを覚えています。
当時は『それから』の主人公・代助の洗練された美意識に魅了されて、だんぜん『それから』派でしたが、今となっては『三四郎』もしみじみ良い!と思います。
とはいえ、私は明治時代の風俗や文学に詳しい方ではないので、100年以上前に書かれた漱石の文章は時に難しく、細かい部分は理解せず筋を追うだけの「通読」しかできていません。
そんな私ですが、数年前にジェイ・ルービン氏による英訳版『三四郎』を手に取って「英語のおかげでやっと分った!」と思った箇所がいくつかありました。
近眼でぼんやりしていた視界が、メガネをかけてハッキリしたような感じです。
一方で、やはり「原文の方が情緒があって美しい」と思う部分もたくさんありますが、総じて英訳のおかげで『三四郎』への理解が自分なりに深まったと思います。
小説の内容理解だけでなく、同じ文章を複数言語で読むことは言語同士の発想の違いが浮き彫りになり、語学の勉強になるのは言うまでもありません。
以前、NHKラジオで『英語で読む村上春樹』という番組がありました。
その番組の記憶にもインスパイアされて、『三四郎』に出てくる名言を原文と英訳で比較するYouTube動画をつくりました。
取り上げたのは、広田先生の次のセリフです。
とくに前半の「熊本より東京は広い。~頭の中の方が広いでしょう。」はシンプルな比較の文で、中学生でも英作文にチャレンジできそうではないでしょうか?
でも、「広い」に的確な訳語をあてられるか、「頭」をどう訳すかなど、実はかなり奥深いものがあります。
下が、ジェイさんによる英訳です。
前半部分はともかく、私は「囚われる」の訳語にsurrenderが使われていたのが意外で、衝撃を受けました。
自分だったらtrappedなどを使うかな、と思いましたが、正解がひとつではないのが翻訳の面白いところです。
皆さんはこの英訳を原文と比較して、どう思われますか?
英語の多読に興味のある方、実践されている方は、英訳版の『三四郎』を手に取ってみてはいかがでしょうか?
動画では、取り上げた名言の単語や文法のポイントを解説しているので、ペーパーバックを一冊読む自信がない方も、英語版Sanshiroの雰囲気をすこし味わっていただけます。
よろしければそちらもご覧ください。
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