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天の川を撮ろう②~撮影編~

前回に続いて、今回は天の川の撮影設定などについて解説します。
前回の①を読んでない方はそちらを先に読んでください。

1.撮影時間・時期

天の川は一年中見ることはできますが、冬は淡い部分しか見えず、目視では見えないレベルです。
今回紹介するのは、天の川の中でも特に明るい部分の撮影についてです。

今回解説する天の川の部分

この明るい部分の天の川を撮影できるのは、2月~11月頃です。
時期によって見える「位置」や「時間」は大きく変わります。
星の見える位置や時間のわかるアプリ(Star Walk2など)があるので、撮影前に確認しましょう。

2月の天の川(画像はアプリStar Walk2)

2月は明け方・南東方向に天の川が見え始めます。日の出時間が近いため撮影できる時間は短いです。季節が進むほど天の川が見え始める時間帯が早くなります。

11月の天の川(画像はアプリStar Walk2)

11月は日没後・南西方向に天の川が見え始めます。天の川はすぐに沈んでしまうため撮影できる時間は短いです。

2月や11月は撮影できる時間が短いので、撮影時間だけを考えると夏がオススメです。

他に撮影タイミングの条件が2つあります。
1つ目は快晴であることです。
天気を確認する際、一般的な天気予報の晴れマークは参考になりません。空の8割曇りでも2割晴れ間があれば晴れマークになるからです。そのため、雲量の予報を参考にします。「SCW」のサイトで時間ごとの雲量を確認しましょう。黒色が快晴で白色に近づくほど雲が多いです。

画像は「SCW」の雲量マップ

2つ目は月明かりがないことです。
月明かりがあると、天の川が写りづらくなるため、新月や月が出る前・沈んだ後のタイミングに撮影しましょう。

撮影の時期・時間の条件
・2月~11月頃
・快晴
・月明かりがない


2.撮影場所

月と同じように街明かりや外灯などの光害がある場所では天の川が見えづらくなります。また、撮影場所は暗くても、撮影方向に光害が強い地域があると影響を受けます。
光害が少ない場所を探すのには「Light Pollution Map」 というアプリが参考になります。

画像は「Light Pollution Map」

上の写真を見ると、光害の強さが青~紫で一目でわかります。天の川を撮るには「青・緑・黄」の辺りがオススメです。薄いオレンジの場所でも何とか撮れますがオススメできません。


3.撮影機材

カメラ フルサイズセンサーのカメラ
レンズ f値2.8以下に設定できる広角レンズ
三脚
レリーズ
シャッターを押したときのブレを防ぎます。また、同じ構図で数十枚撮るため、一度設定したら後は自動で撮影してくれるタイマー機能付レリーズを選びましょう。
レンズヒーター(必要に応じて)
撮影中にレンズが結露して曇るのを防ぎます。
撮影中もこまめにレンズが曇ってないか確認しましょう。
・ソフトフィルター(好み)


4.撮影設定

4-1 基本設定
・カメラ撮影モード:Mモード
・手振れ補正:切(補正機能によるブレ防止)
・長秒ノイズリダクション:
 星空:OFF、地上:ON
・保存形式:RAW
・ピント位置:マニュアル設定

4-2 星空の撮影設定
〈設定〉

・f値:2.8 
・SS:13~20秒 
・ISO:3200~6400 
・撮影枚数:加算平均合成用に20枚
 (AIノイズ除去をする場合は1枚)
・ピント位置:星空

f2.8、SS15秒、ISO6400で撮影。編集なし。

〈各設定について〉
・f値について
暗い星空を明るく撮るためにf値は開放にします。
より低く設定できるレンズがあれば2.8よりさらに下げましょう。
開放だと、写真の隅の写りが悪くなるため、あえてf値を4くらいに上げる考えもありますが、赤道儀を使わない場合、明るく撮ることを優先するため考慮しません。
・SSについて
星が点に見えるSSを目安に設定します。
広角レンズ使用時はSS13~20秒を目安にしてください。
焦点距離を望遠側にするほど、星が線で写りやすいのでSSを速くする必要があります。ただし、SSを早くし過ぎると明るく撮ることができないので、赤道儀が無い場合は広角レンズで撮影することをオススメします。
・ISOについて
天の川をよりはっきり写すために8000~12800くらいに上げてもいいですがISOを上げるほどノイズが増え、加算平均合成に必要な枚数が増えるため6400を目安にしています。
光害があって空が白飛びする場合は、ISO3200を下限に調整してください。多少光害がある場所でも天の川を強調することはできますが、現像処理の工程が増えるため初心者向けではないです。
できればISO6400でも白飛びしない撮影場所を選んでください。
そもそもSNSでよく見るような肉眼で見る景色とかけ離れた過剰な強調をしたくない場合は、1600くらいでOKです。
・撮影枚数について
ISO6400で20枚を目安に撮影します。
理論的には合成枚数をNとすると、写真が√N倍滑らかになります。
つまり、
 4枚で2倍
 9枚で3倍
16枚で4倍
25枚で5倍
36枚で6倍
49枚で7倍
64枚で8倍…
というようにノイズ感が減ります。
合成枚数が多いほどノイズ感は減りますが、撮影に時間がかかる・パソコンのスペックによっては枚数が多いと合成処理が途中で止まってしまう・実際には合成枚数を増やし過ぎると逆にノイズ(正しくないデータ)が増えるなどの問題があるため、初心者の方には20枚をオススメします。より高いISOにする場合は合成枚数を増やしてください。

4-3 地上の撮影設定
〈設定〉
・f値:5.6~7.1 
・SS:120秒以下 
・ISO:100~6400 
・撮影枚数:1枚
・ピント位置:地上

〈各設定について〉
・f値について
本来は全体にピントが合ったような写真にするためf8以上に設定したいですが、デメリットがあるためf5.6~7.1でそこそこ全体にピントを合わせつつ明るく撮れる設定にします、
f値を上げるデメリット
・f値の代わりにSSを長くするため、
 長秒ノイズの発生、撮影時間が長くなる
・f値の代わりにISOを上げて明るく撮る必要が
 あるためノイズが多くなる
・そもそも風で揺れる木などの被写体の場合、
 f値を上げても意味がない
・SSについて
適正露出になるように設定します。
カメラにもよりますが、ここでの適正露出の目安は地上の暗部のヒストグラムの山が左1/4~1/3になるくらいです。
SSを上げすぎると長秒ノイズの発生・風による被写体ブレ・撮影時間が長くなるなどのデメリットがあるため短い方が望ましいです。また、30秒を超える場合は長秒ノイズリダクションをONにしてください。
・ISOについて
適正露出になるように設定します。
ISOは低い方が画質が良いといわれていますが、それは露出不足でない場合の話です。暗所では露出不足になりやすいのでISOは積極的に上げていきましょう。ただし、ISOを上げる場合、複数枚撮影・加算平均合成をすることがセットです。被写体によってはAIノイズ除去だけでOKです。


5.撮影マナー

有名な撮影スポットでは他の撮影者も集まります。周りから迷惑な人だと思われないように星空撮影では次のことに気を付けましょう。

・撮影している方向を明かりで照らさない
他の人が撮影している間にライトの光が入ると、その写真が台無しになります。目に優しい赤いライトならOKという記事もありますが、写真にはガッツリ写り込みますのでライトの色は関係ありません。他に撮影者がいない場合は気にしなくても良いですが、星空撮影ではとにかく「明かり」に気を付けてください。

よくある例
・カメラのセッティングのためにライトをつける
・被写体を明るく写すためにライトで照らす
・ピントを合わせるために被写体をライトで照らす
・カメラのAF補助光の設定がON
・駐車場で車のライトをつけっぱなしにしている

ただし、安全のための明かりはつけましょう。
・車の走行中
 撮影に来た人が亡くなった事があります。
・撮影スポットまでの道中
 できれば安全な範囲で足元周辺だけを
 照らしましょう。


今回の解説は以上になります。
次回は現像編を解説します。



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