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ホワイト・ロータス

あらすじ:ハワイの高級リゾートホテル「ホワイト・ロータス」にやってきた、ハネムーン中の若いカップル、成功したビジネスウーマンとその家族、母親の遺灰を持ってきた傷心の女性一人客。3組の裕福な白人たちを満面の笑みで迎えるホテルの従業員たち。一見華やかないで立ちの宿泊客たちと陽気な従業員たちだが、彼らにはそれぞれ抱える事情があった。

このドラマの副題「諸事情だらけのリゾートホテル」がいただけない。この副題は今作品のテーマに向き合っておらず、非常に軽い。本作の主なテーマは「白人富裕層に対する風刺」であり、リゾートホテルに滞在する富裕層、そしてそこで働く労働層を介して現在のアメリカの社会問題に斬り込んでいる。このドラマのテーマを象徴する「ある夕食の風景」である。

オリビア:ママに朗報よ。ホテル内を見渡してみた感じ・・・ストレートの白人男性は皆 絶好調に見えるわ。

ニコル:人を人種と性別で分類する考え方はここ数年は問題になってる。

マーク:確かに。俺は白人男の中じゃ善人だった。性別や人種で差別する連中に“やめろ”と注意してた。だが今や白人男ってだけで悪人で何も言えない。“俺は差別などしない”と証明する必要もないしな。

パウラ:白人男の天下は終わり。

オリビア:いつまでもパパが主役じゃないの。

マーク:かまわないよ。俺は主役にはなりたくない。じゃぁパウラについては話そう。

オリビア:いいけど・・・この子の何を知ってるのよ?

マーク:何が言いたい?

オリビア:言ってみて

マーク:お前の大学の同級生だろ?それからとても知的で魅力的な若い女性だ。

オリビア:本人に何も聞かないくせに。

マーク:これは仕事の面接じゃない。今は休暇中だ。逆にパウラは俺の何を知ってる?

パウラ:タマが腫れてる。

マーク:もう治った。ほら、お互い様だ。彼女も質問してこない。

パウラ:質問してもいい?

マーク:ああ どうぞ。

パウラ:何を支持してる?

マーク:支持するもの?

シェーン:彼女記者をやめようか悩んでるんだ。仕事のくだらなさに気づいて・・・

レイチェル:それは違う。

シェーン:みんなそう思ってる。非営利活動をしてみたいそうだ。母さんはいろんな慈善事業をしてる。

シェーンの母:慈善事業ならいいと思う。楽しいわよ。いい利益還元になる。どれだけ打ち込むか自分で決められるのも魅力よ。柔軟性がある。

レイチェル:正直言うと私は仕事を見つけたいんです。

シェーンの母:ウソ・・・なぜなの?どうして?意味が分からない。必要ないわ。

レイチェル:なぜですか?

シェーンの母:窮屈なだけよ。もっといろいろなことができるのよ。イベントを主催するとか。責任を負う必要もない。

レイチェル:何かに夢中になりたいんです。やりがいのあることがしたい。

シェーンの母:でも大変なだけでお金にならない。

レイチェル:稼げなくていいんです。

シェーンの母:慈善事業では富裕層がお金を出してくれる。でも非営利事業では自腹を切る。世の中お金が全てよ。全てはお金次第。(親子で笑いながら)お金 お金 お金 お金 お金 お金。お金があれば働く必要なんてない。パーティを開くのも立派な仕事よ。

マーク:その考えでは古い階級制が新しいものに入れ替わるだけだ。

ニコル:ほとんどの活動家は経済的な搾取をなくそうなんて思ってない。自分だってその恩恵にあずかってる。権力がほしいだけ。

オリビア:それはママだけでしょ?

ニコル:あなたは何主義者?資本主義でも社会主義でもない。ただの皮肉主義?

クィン:どんな考え方だろうが人間なんて全員クソだろ!地球の寄生生物だ。魚を食べるくせに海にゴミを捨てるバカさ。動物が山火事の犠牲になってる。大量にね。地球を苦しめてる。


登場する裕福な旅行客は華やかだが、彼らはむせかえるような有害さを発しており、ホテルの従業員や現地民との断絶が強調される。そして今のアメリカの現状を照らし出す。

最後、SNS中毒だった16歳のクィンがハワイに生きる希望を見いだし、親元から離れ、ハワイで生きる決心をする姿に感動させられる。


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