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麗子の足

二・二六事件に関わる軍医の男に、想いを抱く女性の切ない恋を描く。向田作品に欠かせない田中裕子をはじめ、森繁久彌、永島敏行、加藤治子、佐藤慶、今井美樹らが出演。第24回ギャラクシー賞奨励賞受賞作品。 岸田劉生氏の麗子像は、主人公の自室に飾ってあり物語の重要なツールとなっている。

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昭和11年の2.26事件が起こる数ヶ月前から話は始まる。主人公である麗子(田中裕子)と聡一郎(永島敏行)は、いとこ同士である。聡一郎は、軍医中尉。麗子に想いを寄せている。麗子は、聡一郎の想いに気付きつつ、昭和10年の女性は慎ましく、自分の感情を抑えるという教育を受けていた時代である。麗子は、聡一郎の想いに気付かぬふりをせざる負えないのであった。しかし、聡一郎には、ある理由で麗子の思いを計る時間の余裕がなかった。時が刻々と迫る中、麗子に自分の想いを遂げる行動を起こす。聡一郎の行動に驚いた麗子は、拒絶をする。しかし、この日を境にして麗子は愛に溺れる女となっていく・・・。田中裕子氏のまるで何かにとりつかれたような演技に心酔させられる。田中裕子氏の演技力は素晴らしいの一言なのだが、彼女の演技力を引き出したのは、向田邦子氏の原案を丁寧にそして、大きな共感を持って演出した久世光彦氏の功績である。恋愛が自由に出来なかった時代、短い時間であったとしても熱く昇華した男女の愛に胸が震える。


日々観た映画の感想を綴っております。お勧めの作品のみ紹介していこうと思っております。