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文×写真ZINE、制作の記録 ー 2023年のふりかえり① ー

12月も折り返し、確実に近づく年末の足音が聞こえてきましたね。

2023年、私的ハイライトはなんといっても「初めてのZINEを制作したこと!」でした。

作ったのは、こんなZINE。

そこで、本noteにその制作過程を書き残しておくことにします。(あれもこれもと詰め込んでいたら4500字超になってしまいました…)

自分が再び作るときのための備忘録的なところもあるけど、これからZINE(リトルプレス)を作ってみたいと思っている人に届くことを願って。

書きたい人のためのコミュニティ「京都くらしの編集室」ではじまった「アドベントカレンダー」。「2023年の振り返り」というテーマで、12月1日〜25日のクリスマスまで日替わりでメンバーが記事を書いていくというもの。

この企画にのっかってZINE制作の振り返りをしよう!と思い立ち、12月17日はわたしが担当します〜。

制作前

1. 「ZINEを作りたい」と思いはじめた、2年前

「料理とうつわに関するメディアを作りたい」と最初に思ったのは、記憶にある限りだと2022年の年初め。気づけばあれから2年もの月日が過ぎている。うだうだと理由をつけては先延ばしにしていました……。

2年間、その思いを温めてしまってる間に気づいたことがあります。

それは「暇な日なんて一生来ない!!!」ということ。

日々やることって山のようにありませんか?
仕事や家事を筆頭に、子どものイベント、名前のつかない細々としたタスク、読みたい本、作ってみたいレシピ、会いたい人などなど……「今日もやろうと思ってたアレ、できなかった」なんて日はザラ。

だから“ほんとうに”やりたいことは、仕事と同じかそれ以上だと思って優先順位を上げる。仕事のスケジュールと同じように、制作時間をブロックすること。まずはそのマインドの切り替えが必要なのかも……と感じています。

年末に購入した「〆切手帳」の見返し。ガツン!とくるわぁ

2. どんなテーマでZINEを作るか

・テーマ(何が書いてあるか)
・企画(記事の内容)
・取材先
・ZINEのタイトル(仮でも)
・制作時間をどう捻出する?

おそらくここが1番の悩みどころで、足が止まりがち。

2年前に「食とうつわに関するもの」とだけ決めていたものの、そこから先の企画や記事の内容は何も決まってませんでした。

そんなとき訪れたのが、5月に開催された文学フリマでした。
当時のブログにも書いたけど、いったん純粋にお客さんとして楽しんだとき、「自分ならどんなZINE、本が欲しいかな?」ということを見て感じることができました。そして次は「出店側になりたい」とも猛烈に思ったのでした。

そこから、急に「「ZINEを作ること」が現実味を帯びてきて、ふと思い出したときに企画を考えるようになり、
・「うつわ」をテーマにインタビュー、エッセイ、お店紹介と3部構成にすること
・うつわ単体でなく料理を含んだ写真にすること
を決めたのでした。

3. ざっくり制作スケジュールを引く

完成したい日(今回でいうと11/11の文学フリマ)から逆算して、制作スケジュールを立てていきます。

「ZINEを作りたい」という人からももっとも聞かれるのが「制作期間」なのですが、もうこればっかりはズバリ「人による」です!

わたしに関していうと、6月くらいから頭の中でぼんやり企画を考えていて、8月中旬(夏休み)から台割を作ったり企画書を作ったり手を動かしはじめ、本格的な取材や執筆、デザインは9〜10月中に行いました。トータル2〜3ヶ月ほど。

聞いた話だと構想から完成までで1年〜半年の方もいれば、制作期間1日(!)という強者も(本業が忙し過ぎて、徹夜して一晩で仕上げたらしい)。火事場の馬鹿力、にしてもすごい……。

制作中

2. 台割り、ページ数を決める

テーマや企画が決まれば、あとはガシガシ手を動かすだけ!
最初にとりかかったのは台割と、表紙・裏表紙を含め何ページになりそうか、仮決めしました。

台割とは冊子を作るときに、一度に何ページを印刷するか、各ページの内容をどうするかを割り振ること。

カタログ・パンフレット・雑誌などを編集する時に、まず一番最初に冊子全体の構成を決めます。全体の企画内容・どの企画に何ページ分使うのかを決めてページを割り振り、冊子の総ページ数が決まります。

台割 | 賢者の印刷用語集

3.ラフを描く&デザイナーさん打診

「こんな感じのデザインにしたいんだけど……」とデザインラフを描いて、それをデザイナーさんにお渡しし、予算と折り合うかを検討。ここも割と悩んだなぁ。

どんなデザイン、テイストにしたいかによってお願いするデザイナーさん、作家さんも変わってくるし。

わたしの場合、新卒でWeb制作の仕事をしていたため、ブランクはあれどIllustratorとPhotoshopはある程度さわれることもあり、予算や時間次第では「自分でやるか」も悩みました。でも、今回は思い切ってデザイナーさんにお願いすることに。

4. 取材

企画の段階で取材させてもらう方の目星をつけていたので、何人かピックアップ。企画内容や忙しい方であれば日程的にもすんなり決まらない可能性もあるので、「断られたら、次はこの人にあたる」というところまで考えておくといいかもしれません。日程調整し、いざ取材へ。

5. ひたすら書く&撮る

ここまできたら、あとは自分との戦い。
エッセイ、インタビュー記事をひたすら書く!写真を撮る!

6. 編集・校正

第三者の目を一度通しておくと安心。

今回はライティングコーチとして編集ライター、コーチをしている中原絵里子さんにお願いし、書き上がった原稿を読んでもらいました。制作期間中は基本的に一人だけど、「読んで感想をくれる人がいる」ってだけでめっちゃ心強い……!

絵里子さんには「2. どんなテーマでZINEを作るか」の段階でも相談にのってもらい、一人では詰めきれていなかったところまで考えが深まったのでお願いして本当によかったなぁと思うところです(あ、もちろんプロにお願いしているのでブレストも編集も有料ですが、価格以上の価値があったと思ってる!)。

プロでなくとも、家族や友人でもOK。誤字脱字だけでなく、意味の分かりにくい箇所などを指摘してもらえると、原稿の質がぐんと上がる気がします。

7. デザイン

素材となる原稿や写真をデザイナーさんに一式送り、デザインへ。デザインが組み上がった状態でも校正。文章の抜け落ちや送りが変な箇所がないかなどチェックします。

自分の文章と写真がデザインされたものを最初に見たとき、心底感動しました。「プロすご……!」って。

フォントとか行間とかちょっとしたことの積み上げが、プロたらしめているというか。自分以外のクリエイターとものづくりをするとき、この「化学反応」が醍醐味なんじゃないかと思っています。

今回のZINEづくりで考えが変わったのは「得意な人の力を借りること」。

編集もデザインも「ぜんぶ自分でやりがち」だったけど、ほんとうに集中したいこと(執筆、撮影)に専念できたのですごくよかった。当然、デザイン料はかかるけれど「お願いしてよかった〜」と心から思いました。
*雑誌のような作りで、写真多めのZINEだったので、全ページにわたってデザインが必須でしたが、文章だけであればけっこうセルフでできてしまうかもしれません…!

9. 印刷・製本会社さんを選定し、入稿

印刷会社さんもけっこう迷ったなぁ〜。ZINEの奥付けなんかを見ると、よく目にした印刷会社さんをピックアップしますね。

ちょ古っ都製本工房
グラフィック
HAGURUMA STORE
しまうま出版

自宅で印刷して、自分で製本するのもアリ!

ここで後悔していることが一つ。
それは入稿期限ギリギリだったため「色校を見る時間がなかった」こと!とくに写真を多用するタイプのZINEは色校必須であります(自戒)……。

使う紙によってインクののり方が違うし、PCの画面上では明るめに見えているので、紙に印刷すると想定したよりも写真が暗めだな〜と。ここは反省点……次回に生かそう。

制作後

11. 告知

告知用の画像やテキストを作成し、X、Instagram、noteなどのSNSで「文学フリマに出るよ〜」と告知!理想は2週間前〜遅くとも1週間前までには告知しておきたいところ。

とくに東京の文学フリマでは出店数も1800ブースあり、時間内に見切れない……というのがホンネ。お客さんはあらかじめWebカタログで目星をつけて来場する人が多いみたいなので、事前にWebカタログに自身のZINEの情報(表紙画像も!)を登録しておくのがおすすめです。

12. 文学フリマに出店

「やるだけのことはやった。あとは楽しもう!」の気持ちで向かった文学フリマ。当日のレポートは終わった直後にブログにも書きました。

11月11日の文学フリマに出店するぞ〜!と、そこに照準を合わせていたので、何がなんでも間に合わせる必要がありまして。

「このイベントに出店したいから、それまでに何としても完成させる!」という「半強制的な〆切」があったほうがいい。そこから逆算することで「あれ、もう構成考え始めないと間に合わないな?」となってきます。

13. オンラインショップ開設

理想としては文学フリマで初売り。その後、遠方や文学フリマに行けないよーという方に向けて、オンラインショップで販売開始がいいと思います。わたしは初心者でも簡単にオンラインショップを立ち上げられるSTORESを使っています。

「ごほうび」のような時間だったZINE制作

2023年を振り返ると、天国と地獄を一気に味わったような1年でした。

白状すると、今年の前半くらいに事故みたいな案件に遭遇し、その期間は会社員時代も含めて社会人史上もっともしんどかった……。心身ともに疲弊してしまい「こんな思いをするくらいなら会社員に戻ろう」とさえ、うっすら考えていました。。

けれど、今年を締め括ろうというときに、ZINEを制作した時間が、わたしを救ってくれたような気がします。

「自分の手を動かしてものを作る」ことが好きで、書いたり撮ったり、レイアウトを考えたりラフ引いたり……という時間は心底楽しくて「一生これをやっていたいなぁ」って。
「コンテンツ制作って楽しいんだ」と、初心を思い出させてくれた経験となり、今思うとZINE制作は私にとって「ごほうび」のような時間でした。

最後に、最近読んだZINEでいいなと思った一節があったので、ここで引用させてもらいますね。

創作は個人に与えられた自由なのだ、と誰かが言っていたような気がする。作る人が身近にいる環境でないと「創作する行為」というものがなにか特別な能力がないといけないと思い込んでいる人がいるけれど(自分も含めて)、そうじゃないのだ。誰だって作りたいものを作るべきなのだ。それは誰かのためでもいいし、自分のためでもいい。

かもめと街  チヒロ『振り返らずに、船はゆく』

というわけで、このnoteが「ZINEを作りたい」と願うあなたの背中を、少しでも押せたのならうれしいかぎりです!


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