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記憶の擦過傷

「きみはしっかりしているからひとりで大丈夫。
だけど、彼女には傍に寄り添う人が必要なんだ」とか

「尊敬と愛情と恋心だけでは越えられない…
大好きなはずの、そのタフさこそが、僕をどんどんみじめにしていく」とか

「あなたはすでに才能を開花させる方法を持っている。
このまま自分で道を切り開けるはずなので、向いていない彼女のほうを推すことにしました・・・・」とか。

数年ごとに襲われる発作のように、20代にショックを受けた言葉が大波のように押し寄せてきた。
心のどこか、記憶の片隅に、ずっと引っかかり続け、傷が治ったと思った頃にかさぶたが裂けるように、ピリピリ チクチクと再発する感じ。

「暗い顔をしてても何も始まらないから、とびっきりの笑顔を作って乗り越えようとしただけ。本当はいつも不安だらけなの。」

「あなたが、タフな私が好きだって言ってくれたから、がんばり続けてこられたのに。」

「自分で進むべき道も方法もわからなかったから門戸を叩き、受け入れてくださったではないですか。
どうして求めているほうに手を差し伸べてくださらず、その気のない人に懸けてみようなんて・・・むごいです」

すぐにこんな言葉を返すことができていれば、かさぶたにもならず完治していたかしら?

そんな展開は待っていなかった、自分でもそう思う。

彼らの目にうつっていたわたしは誰?

明るくて、強くて、タフで、なんでも自分でできてしまうスーパーウーマン?

でも
ほんとうに、彼らにはそう見えていて、見られていたとおり過ごしていたら、こんな発作に見舞われることはなかったかもしれない。

もし
私を通して見ていた彼らの偶像になれたとして、それは自分で望んだわたしになれていたかしら?

明るく強くタフで、自力で切り開いていけるわたし。
記憶の中の、彼らの眼差しを手繰り寄せ、もう一度、ここから辿り直してみようかな。
自分で会ったことのないわたしに出逢えるかもしれないワクワクを抱きながら。


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