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古くて新しいコラボレーション――学生時代の原点に戻り挑戦したミニライブ(2)

『古くて新しいコラボレーション――学生時代の原点に戻り挑戦したミニライブ』も合わせてご覧ください。

森亮子さんとのコラボレーションミニライブ、プログラムが決まりいよいよ練習がスタートしました。ちなみにプログラムを考えていく過程で、森先輩の「私は何でもいいよ」という一言に、さすが! と改めて尊敬してしまいました。

恐怖のヘンデル

森先輩との合わせ練習は、当日を除けば本番1週間前の1回のみ。その合わせ練習までの約3週間、正直に書くと8割、いや9割くらい、ヘンデルの「シオンの娘よ、大いに喜べ Rejoice Greatly, O Daughter of Zion」のことで頭はいっぱいでした。

森先輩とこの曲を共演するのは初めて。プログラム案を先輩に伝えたとき、「この曲大変だよね~。なかなか歌える人いないんじゃない?」という言葉に、ドキっとし、怯みそうになりました。

実は別の機会に何度が歌ったことがあり、その度に苦しめられてきた曲です。オラトリオ『メサイア』のソプラノのアリアなので、女性のソプラノ歌手ならば、私が感じるほどの苦労はなく歌えるのかもしれません。しかしソプラニスタだから無理だよね、と思われたくないし、思いたくない! 他の男性がこの曲を歌っているのを聴いたことがないので、ある意味自分との戦いで過去にも練習してきました。

久しぶりに歌う大曲。伴奏者との歯車が狂うと崩壊する可能性もある恐ろしさを想像しながら、でも大好きな曲です。森先輩とならできる! 今回の目標「森先輩とコラボレーションをすることで、自分の原点を見直し、そして自分自身さらに成長したい」を実現するために曲変更はせず、歌うことを決意しました。

リハーサル当日

いよいよ何年振りかの、森先輩との練習です。久しぶりに間近で聴くパイプオルガンの音圧に胸躍らせ、またこの大きな楽器に自分の声が負けないだろうかと不安にもなりながら歌い始めました。

この1回の合わせ練習で、アンサンブルをしながら細かい打ち合わせをしなければなりませんが、先輩の仕事ぶりを見て、さすが……と思ってしまいました。例えば、私の頭を支配しているヘンデル。大変な足鍵盤も付けて、体当たりで準備して来てくれていました。

少し説明しますと、パイプオルガンは足鍵盤(ペダル)が付いており、両手両足をフル活用して演奏できる楽器です。両手の鍵盤だけでも演奏できるのですが、足鍵盤を付けると幅広い表現ができます。

しかし足鍵盤を付けるのは準備も体力も大変なこと。ましてや「シオンの娘よ、大いに喜べ Rejoice Greatly, O Daughter of Zion」のようにテンポの速い曲は、アーティスティックスイミング(昔のシンクロナイズドスイミング)で全力の演技をしているようなもの!?(演奏している姿も美しいので、私にはそのように見えます)。またパイプオルガンは、ストップというレバーを調整し、さまざまな音色を作るため、頭を使う作業もたくさん。今回も元のオーケストラ編成、曲の特徴、木村優一の歌声のことなどを考慮して1曲ずつ音色を考えてくれていました。

ヘンデルを一通り合わせ練習した後、「大変だ~!」と思わず2人で笑い出してしまいました。しかし森先輩が

「ヘンデル、ちゃんと足付けたよ! 大変、この曲!(笑)」

と。足鍵盤を付けて体当たりで本番への準備をしてくださっていることに頭が下がりました。

学生時代にも「足鍵盤付けたんだよ」という会話をしたのを先輩も私も覚えていて、また2人で笑いました。

合わせ練習でお互いの課題を整理し、あとはそれぞれがどれだけ練習してくるか。課題もいろいろ見つかり、ちょっと落ち込み、しかしその先に何かを掴めそうな手ごたえも感じつつ帰路に着きました。

あと1週間、とにかく練習あるのみ。

次回は、本番の様子などをお伝えしたいと思います。お楽しみに!

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