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マシュー・サイド著「失敗の科学」を読み解く - ⑤ボクらの「マージナル・ゲイン」

さあ、木曜日だ。

木曜日は、マシュー・サイドの「失敗の科学」を読み解いていこうと思っている。ただ、ボクはこの本を読了していない状態でこの記事を書いている。なので、このシリーズはこの本の解説というよりは「リアルタイム感想文+ボクの思考」という内容になって行くだろうと思っている。

ご興味おありの方は、ゆっくりお付き合いいただけると幸いだ。


「マージナル・ゲイン」とは

今日は、この「失敗の科学」の"「一発逆転」より「百発逆転」"という章を読んでいる。

キーワードは「マージナル・ゲイン」だ。
英語で書くと"marginal gain" - "marginal"は「ごくわずかな」とか「取るに足りない」というような意味、"gain"は「利益」「利得」「儲け」などの意味だ。

この「マージナル・ゲイン」は、2009年頃にイギリスのロードレースチームである「Team SKY」のゼネラルマネージャーであったデイブ・ブレイルスフォードが提唱した改善の取り組みの考え方だ。簡単に言うと「1%程度の効果が見込めないような小さな施策であっても、それを100積み重ねることで大きな効果を得よう」という取り組み、考え方である。

マージナル・ゲインの実例

この「失敗の科学」の中では、Team SKYが実施した施策が紹介されている。そこには、自転車競技においてA地点からB地点に最速で到達する方法を探すために、自転車の空力測定ができる施設を作り、選手たちのトレーニングを細かく測定してデータ化し、専用のマットレスや枕を導入し、スタッフが選手の部屋の掃除やユニフォームを洗濯する際の洗剤にまでこだわって、小さな改善を積み重ねた結果、目標としていた「5年でツール・ド・フランス優勝」を2年縮めて、チーム創立から3年で総合優勝を勝ち取った…

メルセデスがF1で優勝したエピソードも載っている。
メルセデスは、2014年のF1シリーズで優勝を目指すために、2013年頃からマシンに1万6千のセンサーを付け、さらにピットで使うホイールガン(ホイールナットを締め込むときに使う電動工具)にも8つのセンサーを付け、クルーがナットを締めるときの角度やナットを締めるのにかかった時間などを計測し、コンマ数秒を縮める訓練を積んだ。その結果、メルセデスチームはその年の世界チャンピオンに輝いた…

こんなの腹落ちしねえ…

ボクは、これらのエピソードには腹落ちしなかった。
唯一腹落ちしたのは、アメリカのホットドッグ早食いイベント(毎年7月4日にニューヨークで開催される「ネイサンズ国際ホットドッグ早食い選手権」)で優勝し続けた小林尊のエピソードだ。

彼は、ホットドッグを半分に割って食べてみたり、ソーセージを先に食べてみたり、水に浸けてみたり、その水の温度を変えたり、水に植物油を混ぜたり、一気に食べる方法を試したり、ペース配分してみたり…、様々なことを試し、それを全て記録し、それらを丁寧に検証した。その努力の結果、彼は当時の世界記録の2倍のホットドッグ本数を食べて優勝し、1万ドルの賞金とチャンピオンベルトを勝ち取った。

小さな改善を積み重ねていくこと、
その最中には、小さな失敗が無数に存在し、その失敗が「なぜ失敗だったのか」を検証し、次に進んでいく…、ボクもこれは非常に重要なことだと思う。大賛成だ。

重要なのは「目標の設定」

ただし、重要なのは「目標の設定」だ。
これらのエピソードで重要なのは、Team SKYが3年でツール・ド・フランスで優勝したことでも、メルセデスがマシンに1万6千のセンサーを付けたことでもない。重要なのは、Team SKYが「A地点からB地点に最速で到達する方法を見つける」、メルセデスが「マシンがサーキットを1周するタイムを〇〇秒まで縮める」、小林尊が「制限時間(12分)内でそれまでの世界記録を超えるホットドッグの本数を食べ切る」という目標を持っていたことだ。

この「目標」がなければ、マージナル・ゲインのアプローチは意味を為さない。データを取っても、良いのか悪いのか検証することができない。ましてや、なんのデータを取ればいいのかすらわからないはずだ。

ボクらの「マージナル・ゲイン」とは

しかし、ボクらはこんなエモーショナルな目標を持つ機会に恵まれることは少ない。そう、ボクらが持つべき目標は「ベンチマーク」しかない。しかもそのベンチマークは現実的なヤツじゃなくちゃだめだ。ボクらがいきなり大谷翔平をベンチマークしても意味がない。

まずは身の回りにいる一目置いているヤツをベンチマークしよう。そいつを超えるために様々なチャレンジをしてその結果を検証するんだ。そして、次のチャレンジ、次のチャレンジと繋げていくと、いつかそいつを超えることができる。そしたらさらに強大なベンチマークを探すんだ。

それが、ボクらのマージナル・ゲインじゃないだろうか。

(続きはまた来週)


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