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環境問題を理解する: オゾン層保護に関する取り組み

さあ、火曜日だ。
火曜日は環境問題について書く日だ。
この「環境問題シリーズ」にはボクの考えが入る余地はない。ただひたすら事実を正確に書くことを目指しているが、将来的に新しい考え方や技術が導入され、ここに書いたことは古くなっていくことをご理解いただきたい。

先週は「エネルギーの供給源の種類とその特性」ついて書いたが、今日はオゾン層が破壊されるメカニズムについて書いていこう。


大気に関するもうひとつの問題

前回までに、現代文明が大量に空気中にCO2を放出していることが原因で、温室効果が過剰な状態になっていて、それによって地球温暖化が進んでいることを書いてきた。

しかし、地球は大気に関して、もう一つ課題を抱えている。
それが「オゾン層の破壊」だ。

オゾン層とは

ボクたちが普段呼吸している空気のうち21%は酸素だ。
酸素は、酸素原子(O)が2つ結合した状態=O2であるが、オゾンはその酸素原子が3つ結合したもの=O3である。オゾンは強力な酸化能力を持ち、病院やレストランなどで脱臭や除菌などに活用されている。

自然界では、地上から10数kmから50kmくらいの高さにオゾン濃度の高い層を作っていて、このオゾン層が太陽から発せられる紫外線を吸収している。オゾン分子(O3)は紫外線(UV)を触媒として、酸素(O2)と一酸化酸素(O)に分解される性質があるので、結果的に紫外線を吸収し、オゾン層は生態系に対して過剰な紫外線が照射されないよう緩和してくれているのだ。

オゾンホールとフロンガス

1974年、アメリカ カリフォルニア大学アーバイン校のフランク・シャーウッド・ローランドとマリオ・モリーナは、クロロフルオロカーボン(フロンガス)が成層圏に運ばれ、オゾン層を破壊している可能性が高いと考え、その研究結果をNature誌に発表した。

クロロフルオロカーボン(フロンガス)は、1930年代にアメリがで開発された、フッ素と塩素を含む自然界に存在しない科学化合物だ。クロロフルオロカーボン(フロンガス)は、無色・無臭・不燃性で安定性があり、冷却効果があって燃えないので、当時は電化製品の冷媒やスプレーなどに多く使用されていた。

その後、1982年に日本の観測隊が、南極上空でオゾン層の一部のオゾン量が極端に少なくなり、穴が開いたような状態になっていることを観測した。それが「オゾンホール」だ。

オゾン層が破壊されるメカニズム

地上で放出されたクロロフルオロカーボン(フロンガス)は、上部成層圏(高度40km付近)において太陽紫外線により分解されて 塩素原子を発生する。この塩素原子が触媒となって、上部成層圏でオゾン破壊が連鎖的に起こるのだ。南極圏や北極圏では冬季に太陽光が届かず、その間に成層圏内に塩素分子が蓄積され、春季に太陽光が戻ってくると、その塩素分子が乖離して活性塩素原子になることによってオゾン破壊が進む。つまりオゾンホールは年間で周期的に発生し、消えていくこと繰り返しているのだ。

オゾン層が薄くなる=オゾン量が少なくなると、紫外線の吸収量が減り、地表に照射される紫外線量が増え、生物のDNAにダメージを与えるようになる。その結果、以下のような影響が表れる。

1. 皮膚がんや白内障の増加
2. 免疫作用が低下し感染症が増加する
3. 動植物の生育が阻害される

オゾン層保護のための取り組み

オゾンホールの拡大は人類だけでなく、多くの地球上の生物にとって有害であることから、国連は1985年3月に「オゾン層の保護のためのウィーン条約」を定めた。また、その後1987年に「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書(モントリオール議定書)」が採択され、世界的にフロンの生産や使用を段階的に減少させることが約束された。

日本では、1988年に「オゾン層保護法」が制定され、その後2013年のフロン排出抑制法(2001年制定のフロン回収・破壊法が改正されたもの)によって、フロンガスを使用する製品の製造から廃棄、使用済みフロン類の回収・破壊などの包括的な対策が導入された。

モントリオール議定書以降、オゾン層破壊性の高い特定フロンの生産は全廃されて、冷媒が必要な製品には、オゾン破壊性のない代替フロンや自然冷媒(二酸化炭素や炭化水素など)が使用されるようになった。このような取り組みにより、現在では特定フロンを99%削減することに成功している。

国連の発表によると、2040年には多くの地域でオゾン層が回復する見込みであるようだ。特にオゾン層の破壊が大きかった北極や南極においても、2066年には1980年のレベルまで回復することが見込まれているので、地球環境問題の中では、このオゾン層保護が最も効果をあげている取り組みだと言われている。

来週は海洋汚染などに触れていこうと思っている。


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