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誰が「物流」を殺すのか - ④物流部門(物流担当者)に求められるもの

さあ、月曜日だ。
月曜日はボクの得意分野の物流について書く日だ。
先週は「どのように物流を設計すべきなのか?」というテーマの記事を書いた。

今日は物流にどんなことが求められているのか書いていこうと思う。


物流部門を置こう

ここまでに、顧客を理解し、その顧客の期待値も把握した。そして顧客の期待値を実現するために必要なモノも、それに対するコストも算出できたので、あとはそれぞれのパーツを組み上げていけばいいだけだ。(その組み立て方はケースバイケースになるので、ここでは割愛する)

物流サービスの設計ができて、オペレーションが始まったら、そこに「物流部門」を置いて、物流の管理を行わなければならない。ひょっとすると、最初は「物流担当者」を置く程度のスモールスタートかもしれない。

物流管理において重要なのは、モノの流れと情報の流れをしっかりと把握することだ。

モノの流れの考え方

モノは生産工程の上流から下流に送られて行き、最終的に顧客の手元に届く。そもそもは、それが極力タイムラグの無いように組み立てられているはずだが、どこかで滞留(遅延)が発生する場合がある。滞留(遅延)が発生すると、そこから下流はすべての工程で影響を受けることになり、顧客が期待していたタイミングで商品が届かないということ起きる。そういったことが続くと、結果的に顧客の信頼を大きく損ねてしまうだろう。

とはいえ、機会損失を恐れるあまり在庫を多く抱えてしまうことも問題だ。在庫が多くなると施設のキャパシティを圧迫し、それがスムーズなオペレーションを阻害する場合が多い。また財務的観点から見ても、流動資産が増加するとキャッシュフローが悪化してしまう。

情報の流れの考え方

情報はその逆で、下流から上流に上がっていくべきだ。
顧客のニーズからスタートし、一つずつ上流の部門へ、そのニーズが分解された情報が提供されていかなければならない。その情報があるからこそ、顧客ニーズの変動や、何かトラブルが発生した時の緊急対応が可能になる。

ボク自身はメーカーで働いた経験がないので、完成品が出来上がった後の物流しか知らない。しかし、このモノと情報の流れはメーカーの製品を作る部門間の工程でも、出来上がった商品を顧客の手元に届ける工程でも同じだと思っている。

顧客のニーズは営業担当が聞き出してくることが多く、その情報を元にして需要予測が計算され、全体会議で部門ごとに落とされることになると思っている。そうなると川の流れの上流にいる部門が、自分たちが運営しやすくなるためのルールを設けて、ひとつ下の部門との間にそのルールに則った物流を形成してしまう場合がある。それは往々にして、部門ごとのオペレーションとコストの責任はそれぞれの部門が負っており、それに必要な物流の調整のイニシアチブを握っていることが多いからだ。

しかし、情報は下流から上流に渡されていくべきだ。
上流の部門から見たときに下流の部門が「顧客」だと考えれば、下流から上がってくる情報が顧客ニーズだ。各部門がそのニーズに合わせて生産していけば理論的には部門ごとに中間在庫を持つということをしなくて良くなる。それがTOYOTAのジャスト・イン・タイム(かんばん方式)だろう。ただし、TOYOTAが作っている製品が自動車であり、またTOYOTAがメーカーであり小売でもあるという条件が重なってジャスト・イン・タイムが成立しているという側面もある。大いに参考になるところはあると思うが、ボクは表面だけジャスト・イン・タイムを真似ても成功しない企業の方が多いのではないかと思っている。

物流部門に求められること

さて、そんな中で「物流部門(物流担当者)」が行わなければならないのは、各部門の出口部分で行われていることと、そのひとつ下流の部門の入口部分で行われていることを知ることだ。

例えば欠品率や納品リードタイム、誤出荷率などを指標化して、物流部門(物流担当者)の手元で一元管理していたとしても、往々にしてそれらのデータは最下流の部門と顧客の間で起きている情報にしか過ぎない。そんな一部のデータだけを見ていても、各KPIが前年や前月に比べて良くなったのか、悪くなったのか、くらいしかわからない。仕方ないので全体のコストの中から一定比率で決められた物流費(だいたいこういうのはえいやで決めていることが多いのだが…)の中でやりくりするために、立場的に弱者である下請け会社などに圧力をかけることになりがちだ。

そんなことが横行するようになると物流は死んでいく。
だから、物流部門(物流担当者)は現場(各部門の出口と入口)に足を運び、下流から上がってくる情報と現場で起きていることのギャップを発見しなければならない。そして、どのようにすればそのギャップを埋めることができるかという改善策を添えて、その部門の責任者および会社の経営層に臆せず伝えることが求められるのだ。

(続きはまた来週)


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