見出し画像

ダイスケ・ツジサイン会 ツジユニバース編抄訳


日本時間で2021年6月5日。レオナード・ウーとの合同サイン会配信に続き、ダイスケ・ツジ単独での後半戦が行われた。判明した申込数はなんと191点。前回のリアルタイムでサインを行う形式ではとても終わらない数ということで、事前に済ませたサインをツジ氏のさまざまなキャラクターがプレゼンテーションする形へ移行。以下、既知のキャラも未知のキャラも入り乱れてのめくるめく11変化、即興一人芝居配信の印象的だった部分を抄訳する。実際の動画はこちら



◆1番手: 英国紳士ブリテン・A・コロンハイザー

今日のために英国らしいハンチング帽をかぶってきたというブリテンは、ダイスケ・ツジのサイン会には何気に2度目の登場。彼本人の自己紹介によれば、

「私、ダイスケ・ツジがサイン会配信をやるたび出てくるんですよね〜、彼はなんだかいつも私を連れてくるんですよ」

「名前がブリテンで出身がブリテンなんです私。Aはarseの略。英国ではassという意味ですが、クールみたいな意味もあるんですよ〜? 流行に敏感な人、みたいなね(※訳註:ウソです)。だから人にはやあarseって声をかけられますし、そうです、arseとは私のことです、という返しになるわけなんですね〜」

また「かの有名なコロンハイザー家の末裔」で、句読点のコロン、そして腸のメイン部位である結腸(colon)双方の命名者は彼のひいひいおじいさんイングランド・B・コロンハイザーであると主張。

「両方のコロンの発明の場に居合せてただ手柄を独り占めにしたわけなのですが、まあその話はよそうじゃないですか。コロンハイザー家の人間の常として、本日はほんのちょっとの間だけ配信を乗っ取りに参上した次第です」

「私のアクセントがめちゃくちゃだとお思いでしたら、我らコロンハイザーが世界中のあちこちで暮らしているせいでしょう。旅好きな一族でして。行った先を乗っ取って自信をもって馴染み、乗っ取った文化をこうズズっと吸収するわけですね。不思議に思われたのなら申し上げますが、アクセントがめちゃくちゃなのはそのせいなのです、完璧な英国アクセントですよ〜?」

やっぱり言外に、そして普通に入植者(colonizer)の意味もあるらしいブリテン。品の良くないスラングの間違った意味を人に吹き込むクセがあり、サインのリクエストにはフルで応じるツジ氏を「英国では気前の良い人をそう呼ぶので」bitchと呼ぶなどしていた。

ブリテンからのこぼれ話としては、

・ツジ氏の個人的なモットーのひとつは「sincerity, specificity, simplicity(誠実さ、固有性、シンプルさ)」。舞台へ出る前に時折自分に言い聞かせているそうで、「シンプルであれ、そして思い切ったチョイスをして自分ならではの固有性を発揮せよ、ただしそれでいて真心をこめ、誠実であれ」といった意味合いとのこと(2020年8月のQ&A配信でも触れていた覚えあり)

など。最後は「このキャラクターで気分を害した方がいらっしゃいましたら、『ティファニーで朝食を』のミッキー・ルーニーだってひどいものでした。なのでつべこべ言ってんじゃありませんよッ!!ハッシュタグつけて#DealWithIt」と言い残して去っていった。

(※訳註: 白人であるルーニーがイエローフェイスメイクで演じた日本人キャラクター「ユニオシ」のこと。現在では「フー・マンチュー」に並び、偏見によって誇張されたアジア人描写の典型例とみなされている。下記動画参照)


◆2番手: 著作権上の理由によりJynn Sekoiと書いてジン・サカイと読むところのJynn Sekoi(定例リマインダー)

入れ替え中画面の向こうからブリテンとのやりとりが聞こえてくる。

B「仁、どこにいるんです? ああ、タイムトラベルしてきてるんですか。さ、あなたの番ですよ」

J「わかったわかった。着いたぞ。もう英国へ戻って他人の土地を奪うなり何なりするが良い。蒙古どもの同類ではないか、貴様のそういうところは気に食わんぞブリテンよ。よし、では戻ろうか」

2021年5月のお誕生日配信ぶりにタイムトラベルで馳せ参じた仁は、「我こそは境井仁!! 百姓ども、否! ゴースティーたちよ、達者にしておったか。わが誕生日ぶりだな、会いたかったぞ!!」ととてもお元気な様子だ。

「しかしダイスケ・ツジは自分のことは自分でやるべきではないのか。己の成功を俺に頼ってばかりではなく。であろ? 一人前の人間として独り立ちして、自分なりのキャリアを築かねばな。俺を松葉杖がわりにするのはよしてもらいたい」

とぼやきつつサインのプレゼンテーションを始めたところへ、リアルのツジ氏実兄を名乗る視聴者がチャットに登場。

「誰が騙されるものか。我が兄はそんな名乗りはせぬ。立派な日本人ならばそんな名はつけぬものなのだ」

と一蹴されていたが、「誕生日といえば自分のももうすぐ」とか「ライトセーバー返せよ!」(ライトセーバーは実兄氏が先日ツジ氏と一緒にディズニーランドへ行った際、「移動が多くてかさばるから置いていった」ものらしい)とか主張していた彼は、翌日、本当に実の兄氏だった旨が報告された。詳しくは記事末尾を参照のこと。

仁からのこぼれ話としては、

・「1274年にはテレビというものがなかったので、こちらに参った時にはようテレビを見ておるのだが、『ダークナイト』のバットマンはかっこいいな!」

・仁とツジ氏のお気に入りセリフのひとつは、鑓川でのゆなとの酒盛りシーンに出てくる「時には逃げるしか道がないこともある」


◆3番手: ミスター・アグロ

手前のJynn Sekoiとは声質が似ているため、入れ替え中にふたりで混乱する様子が漏れ聞こえたりもしつつ(あまつさえ「ミスター・アグロ、実はジン・サカイだった」説が生まれたりしつつ)、ミスター・アグロ登場。

「ようお前ら!! ジン・サカイとはまったくの別人ミスター・アグロだ!! はー……(重いため息)。漫然と言ってみてるだけだが、ダイスケ・ツジは才能溢れる男だよな、豊かな役の幅とポテンシャルを備えた。だが俺はミスター・アグロなんだからな!? ジン・サカイとは別物の!!」

と念を押してからは、初めての自己紹介も。

「俺はご覧の通りのルチャドール(メキシコ式のプロレスラー)で、サンディエゴで修行した。本場メキシコまでは行けなかったんだが、アマレスを少々──いや、ホントは全然戦わないんだけどな」

実は無類のプロレスファンなだけで、コーチ志望ではあったもののそれも叶わず、「コーチやレスラー相手に働く人たちの隣に立って応援しまくる人」になったらしい。だが(日本で言うと修造的な?)「このポジティビティはなかなか効き目があって、応援していたひとりは一時期チャンピオンまで登り詰めたんだぞ。うん、人には死ぬほど優しくするな俺は」ということで、もし自分のサイン会だったら全部のサインに「Love Yoself(自分を大事に)」と書きたいそう。が、直後に入った誉め殺しリクエストで、夢を叶えるためにLA移住を決めたというファンへ贈る言葉が

「やめておけ!! お前はとんでもない間違いをおかそうとしてるぞ! いま俺が言える一番優しい言葉がこれだ!! ダイスケがどんだけ苦労してるか知ってるか!? あいつと同じ轍は踏むな……!! 自分を大事に、LAへ行くのはやめておけ」

だったので笑った(ただしその後はちゃんと励ましていた)。
ミスター・アグロからのこぼれ話は以下。

・英語と日本語も合わせてツジ氏の好きな言葉は「perseverance(不屈)」

・というかpのつく言葉「professionalism, perseverance, persistence, patience(プロフェッショナリズム、不屈、継続、忍耐」は全部大事なこととしてこれまでの配信でもたびたび言及あり

・ジン・サカイとは声や話し方がかぶり過ぎてるので、今後口調は舌ったらずで行く


◆4番手: ミスター・レギューム

ミスター・アグロからの「次のやつは口数が少ない」という前フリとともに登場した新顔は、フランス語で「豆」を意味するミスター・レギューム(legumes)。オレンジの水玉蝶ネクタイにジャケット姿、あまり喋らないわりに顔の動きが大きいのでクラウンキャラなのかと思ったら、厳密には、

「ミスター・レギュームです。ボクのおじはミスター・ビーン。ボクはアジア系のおいっこです」

という名乗りが。元々は今回のサイン会配信を全編ミスター・ビーン風のキャラで行く案があったらしいのだが、「ボクはおじの顔つきは受け継いだけれど、才能は受け継がなかったから」「実行してたら大惨事になってたでしょうね」とのこと。顔の動きでほぼ全てを物語っていたので翻訳いらず。

「顔が疲れてきたので次のキャラクターへ移りましょう。じゃない、人、個人ですね。次の人はちょっと怖め。長居は無用、帰ります。顔を休めに行きますね」


◆5番手: 質問が嫌いな眼帯男・マーク

眼帯にニット帽、あきらかにカタギじゃなさそうな雰囲気を漂わせるマークが登場。

「やあどうも、マークだ。質問はなし。あんたらが質問せずに済むよう進めるとしよう。質問しだしたら最後、俺の嫌なとこが見つかるかもしれないもんなぁ」

「俺には片目がないけど、質問はやめてな。答えを知ることは絶対にないから」

「あんたらみんな絵の要求が激しいなぁ。でもダイスケはチャレンジしてるよ」

サクサクとサイン済みの写真を紹介するマークパートでは、BGMも何やらあやしげ。「選曲した自分の背を叩いておつかれって言ってやりたい気分だ、俺にぴったりだよ」と本人も満足気である。リクエストの投げキスも「死の接吻」と称しており、ひたすらあやしい。果ては、

「No one(宛書きなし)。いいな、普段の俺も誰でもない人間なんだ。むしろそう名乗るべきだよな? 変えよう。(名前の表示を修正して) 俺の名前はもうマークじゃない。誰でもない奴だ」

とその場で改名もしていた。サクッと担当分を終えて「じゃ、質問しないでくれてありがとうよ。とくにこの目のことで」と去っていったマークについては、チャット上で『竜が如く』シリーズの真島の親戚説も飛び出していた。


◆6番手: 御年108歳の人類学者 ミセス・"ボノボ"ヘンダーソン

マークいわく「ものすごく、ものすごく傷つやすい人」であるらしい次のプレゼンターは、ミセス・"ボノボ"ヘンダーソン。黒の大きなサングラス姿で背を丸め、配信機材にも慣れていない様子。

「こんにちは、これ入ってるの? チャットはここ? あら、よさそう。ここに見えてるのは何なのかねぇ、アタシほぼ目が見えないからまあ何でも構わないけれど。聞こえてるなら言いますよ、アタシはミセス・"ボノボ"ヘンダーソン。ボノボはあだ名で、昔人類学の教師をしてたのね。霊長類やお猿さんはたくさんいるけれど、とくにボノボのお話が大好きなの。ご存知? ボノボは愛し合うのが好きで、たくさんエッチッチなことをする動物なんですよ〜? おかげで生徒たちからボノボと呼ばれるようになって、それが定着したというわけ」

「(ダイスケ・ツジが現在プレイ中の)『Red Dead Redemption 2』にはボノボが出てないのかしら? 『Ghost of Tsushima』には? 出してもらいたいものだわねぇ」

「あら〜楽しいわねぇ、いつもはお家でひとりでいるもんですからね、おでかけするって素晴らしいわぁ」

マークの後の可愛いらしいおばあちゃんキャラに和むチャットであったが、「中指でメガネのブリッジを押し上げる仕草をして下さい」というリクエストに対し、立てた中指をちょおっと長めに顔前へ掲げるなどしていたので、何気にムツ○ロウ的なエッジの効いたキャラなのではないだろうか。「今年生まれた甥っ子を祝福してもらえませんか?」というリクエストに対しては、

「そうねぇ……じゃあ、ここではお約束になってるみたいだから(おもむろにランダル装着。画面いっぱいどアップになるランダル)。はい、甥っ子さんを画面のそばに近づけてちょうだい。この悪い子猿ちゃんから祝福を授けましょうねぇ。(ビンタ) 神のお恵みを。(ビンタ) お恵みがありますよう。(重めの連打音)聖霊がともにありますように。はい、甥っ子さんに神のお恵みがありますように。ダイスケは人の祝福の仕方なんてよく知らないけれど、怪我の功名だったんじゃないかしら。配信っていうもので誰かを祝福するにはベストのやり方なんじゃなあい?」

とすまし顔であった。


◆7番手: 戻ってきたDJ兄貴サムライマスター aka DJ ASMR

「(パーティーピーポー、調子どうよ?? 俺だよ俺!! 戻ってきたDJ兄貴サムライマスター、またの名をDJ ASMR!! 音楽の音デカイな? )」

ただでさえ小さい音楽のボリュームをさらに絞って、DJ兄貴が久々登場。相変わらず身振り手振り表情すべての動きが大きいものの声の音だけがほぼ常にミュート状態、併せて使用される効果音もものすごくか細い。視聴者に音量を確認しながら、今日も人類の可聴域の限界に挑んでいる。

「(昨夜はバルミツヴァーでDJやってて、声が出なくなっちゃってさ。まあ昨日も声出なかったから、最後にちゃんと声が出せてたのがいつだったか思い出せないんだけど。慢性的じゃないやつ希望)」

「(『俺は冥人だ』か、好きな台詞を書いて下さいって? 俺もお気に入りだから『俺は冥人だ』って書いといたYo!俺ら気が合うじゃん、調子どうよ?? どうなのよ??)」

「(『ダイスは配信でこういうことしてる自分がわかった上で、夜普通に眠れてるの?』だって?  眠れてないYo?」

「(漢字でも宛名書いてもらえるかって言うから書いといた。だって俺イケ女じゃーん!? あと名前のサインは英語と日本語でも書いといた。だって俺バイリンガルじゃーん!?)」

口をマイクにめちゃくちゃ近づけて喋っているせいで、視聴者から「囁き声が大きすぎる」とか「いまたぶんうちの母親、自分の子がエロビデオのNG集見てると思ってるわ」とか言われる配信もそうはなかろう。チャンネルポイントリクエスト「ランダルビンタ」もかそけき打撃音が「(ゲシッ)」くらいの音量でかろうじて聞こえる程度である。

「(いったぁ〜。今のはヒドイな、ランダル。ちょっとチクっときた。イェアァ。オーイェア〜。さあマジにエロビデオっぽくなってきた☆)」

最大音量に達したのはたぶんこの直後の舌鳴らし音だったのではないだろうか。静かなのに何かがうるさいDJ兄貴パート、最後のサイン申し込み者はなんとツジ氏のリアル幼馴染と思しき人物。

「(だと思う。弟の方の○○(依頼者)が、兄貴の××への誕生日プレゼントにするんだって。今日○○来てるかわからないけど、もし今いたら、最近どうよマイブラザーー! ガキの頃、小学校くらいん時よく遊んだよな。お前からリクエスト来るとかワイルドじゃん? 誕生日オメ、××。念のため漢字でも名前書いといた。あと同姓同名の別人だとヤバイし、あんま多くは語らないようにもしといたわ。でもこういう名前のヤツ、そう何人もいないよな?  いっやー懐かしいな、会って遊ぼうぜ! だって俺ら幼馴染じゃん??)」

劇的な再会も小声で通すDJ兄貴であった。


◆8番手: 猫のイゴール

休憩を挟み、満を侍して現れたのは「ファンのお気に入り」イゴール(これまでのいきさつはこちら、配信を乗っ取った時の模様についてはこちら)。

「ヤア、イゴールだよ。会えなくて寂しかった? お化粧がなくなってたりもしてるケド。みんな元気? ただいまあー。知らない人のために言うと、ボクはイゴール。猫だよ。お腹すいてるの。もの食べてる最中も腹ペコなんだぁ。喉かわいた。テキーラ飲みまぁす。テキーラ、猫にはいいんだよ? 知らなかったかもだけど。自分ちの猫にあげてみなよ。知らないけど、そんで様子を見てみたら。まあやっぱりやめとくのがいいだろね。ボクの姿を見ちゃうかもしれないから。猫だから何の責任もとらないよぉ? ……ううん、マタタビはやんないよボク。『猫にはアルコール厳禁』? なんでわかるのさぁ。猫にアルコールやったことがない限りそんなこと言えないじゃん、モンスターめ。猫がアルコール嫌いなら、コレは何?(テキーラのショットを一口) おいしー。おいしー。ツボにはまる。ぽんぽんの中のにゃんこツボにガツンって 」

猫だから雑談もサインの紹介も気まぐれで、「mew」というHNの視聴者に「猫の鳴き声っぽい名前だから君もたぶん猫なんでしょお?」と呼びかけたり、「誉はあの、あれ、名前忘れちゃったけどボクがウンチする砂の箱、あそこでも死ぬよね。誉は猫トイレで死にました」だとか、「ティフィニ」という宛名に対して「『スターウォーズ』を知ってる人ならわかるけど、ウティニーー!!(※訳註:『マンデロリアン』にも登場する砂漠のスカベンジャー、ジャワズの台詞)と韻を踏んでるスペルがいいよね。これもティフィニーー!! って発音するんでしょ」とコメントしたりと相変わらず自由。

「あっ。これお気に入りのやつ。『猫のイゴールとしてサインを、何なら落書きをいただけませんか? 』 ボクのことだよ! 『(日本語による『Tsushima』配信時のツジ氏の名台詞)ホマレ死んじゃったよ〜んの引用つき通常のサインでも構いません。イゴール配信と日本語配信はいまでも心の宝物です』すばらしいなあー! だからはい、バカ面いっぱいにお絵描きしてやったよぉ。見てこのバカ面。 マシにしてやった。もっと猫っぽくしてやったの。ここに『境井猫』って書いてぇ、イゴールの足跡も。ゴロゴロゴロゴロいってて、『ホマレ死んじゃったよ〜ん』は 『honor died oh nooo』みたいな意味ね。あと『カーペットにウンチしました』っていうのも書いといたんだけどぉ、昔はカーペットなかったかもだから『タタミにウンチしました』にしとけばよかったかな。でも何でもいいやぁ、猫だもん」

というのは拙リクエストだったのだが、一番落書き映えしそうな仁のポートレイトを選んでおいて良かったと思っている。
なおランダルとの2度目の対戦はイゴール勝利、3度目の対戦はチャンネルポイントリクエストでランダル勝利が指定され、これまでの通算戦績はイゴール側の2勝1敗となった。

ちなみに3度目の対戦をリクエストした視聴者には「裏切ったなぁ。眠ってる間にお前を再起不能にしてやる。猫には気をつけておきなよ?  外を歩いてる時に猫を見かけて、そいつが君の方を変な目で見てたら、お前のこと知ってる猫だからな」と呪いをかけていた


◆9番手: ずっと涙目・ランギッシュ教授

イゴールから「ちょっと色々あってダウナー入ってる人だから、みんな優しくしてあげて〜」と紹介された次の新キャラクターは、打って変わって落ち着いた雰囲気の(たぶん)熟年男性、ランギッシュ教授。

「やあ子供たち、私はランギッシュ教授です。本日はあと10枚の写真のプレゼンテーション責任者を申しつかりました。さきほどあの甚だしく底意地の悪い猫が言っていたように、私、このところ色々ありまして……詳しくは話したくありませんが、だからこそ極力ポジティブに行こうということで、エネルギッシュな音楽を選んでみました。皆さんにも楽しんでいただけると良いのですが」

と穏やかな調子ながら、のっけから声が泣きそう。「『誉は浜で死にました』は私もお気に入りですよ。その、今年はとくに辛いことが多くてですね……ありがたいことに人死にこそ出ていないのですが、私自身の周りでも誉がいくつも死んでおります」とこぼした後に告白していわく、

「今年に入って起こった出来事のせいで、『誉は浜で死にました』には、自分を重ねてしまう部分もあるんですよ。実は私、職を失いまして。離婚も進行中ですし……」

「(チャット欄のコメントを読み上げて) 『誉は法廷で死にました』? これはとてもおかしいですね、実話ですから。はっはっはっは、はっは、は……(徐々に涙声に。しばらく顔を背けて涙をこらえる)」

サイン購入者がこぞってチャット上に不在だったのも堪えていたらしく、日本の購入者から唯一リアルタイムで返事があったことを非常に喜んでいた。

「ありがとう、他には誰もいらっしゃいませんでしたから(涙声)。でもあなたはいて下さったのですね。ありがとうございます、お名前を何と読めばいいのかもわかりませんが、それでも感激しております。ありがとう。ありがとう……。他の方たちはなぜご不在だったのか。誰もが自分のためにそばにいてくれるとは限らないのですよね。それも人生。それも人生です(涙目)」

グループセラピー会場と化したチャット欄から乱れ飛ぶハグエモート。「この経験で人生が変わるかも」と多少上向きになったかと思えば、「民のためすべてを犠牲にした。私はもう一度でも同じことをします」というセリフの引用リクエストに対して「私も家族のためすべてを犠牲にしましたが、もう一度同じことをやるとは言えません(涙腺決壊)」とまた下降したりと情緒が忙しい。それでも、

「こんな風にシンプルなことをやっていれば、生きていけそうな気がしてきました。リクエストを下さったことと、それを読み上げる役を任せていただいたことに感謝しています。これで生きていけそうです。それでは皆さんお元気で、強くあって下さいね」

最後は前向きに締め、またハグエモートを乱舞させていた。


◆10番手: 永遠の旅人・ギグルス

「次はだいぶ風変わりですが大変興味深い人物ですよ。おそらく人? だと思われますが、どうでしょうね。彼もまた私とは違った意味で、色々あった方のようで」という教授の前フリを受けて、ピエロの赤鼻をつけたギグルスが登場。マークやミスター・レギュームとは違った意味でかなり浮世離れした雰囲気だ。つぶらな目をみはりながら挨拶することには、

「僕、ギグルス。前置きとして言うと、旅人だよ。もうずっと旅してる。未来永劫に。自分がどこから来たのか、どこへ行くのかもよく知らない。でも旅をしてることは知ってる。今はとりあえず写真の紹介するよ」

長いこと発声というものをしていないかのような喉声でサインを紹介してゆくのだが、ふともらす言葉が非常に意味深で、様々なバックストーリーがありそうな気配がする。

「『時にはすべてから逃げるしか道がないこともある』……僕がやったのもそういうことかも。僕も自分の知るすべての前から歩き去って、まだ歩いてるし、歩き続けてる。でも次にある何に向かって歩いてるのかはわからない」

「数とか時間って何?」

「これもまたNo One(サインの宛書きなし)。同じ人なのか、違う人なのか、どっちにしても誰でもない人なんだね。次もNo Oneだ。この写真って誰のためのものなの? おかしい、誰でもない人が『I am the ghost.』だって。誰でもないから幽霊だって言ってるみたい。僕も幽霊なのかな? あとで、旅の途中にでも考えてみよう」

「このふたりは同じ引用文を、順番だけ別でお願いしてるんだね。別々の名前で誰かのフリをしてるだけの、誰でもない人なのかな」

「じゃ、僕は旅に出るよ。次に出てくるのが最後の人だから、そろそろおしまいだね。長い間旅をしてきたから、僕のおしまいも近いといいんだけど。でもやっぱり、おしまいは怖いなぁ」


◆11番手: ダイスケー・ツジェ(Daisukee Tsujet)

ギグルスから「次の人はみんなももうよく知ってる誰かに似た人かも」と前置きされて画面に現れた大トリは、何やらクールに決めた人物。

「やあ。元気? ダイスケー・ツジェです。僕はダイスケ・ツジのクローn、じゃない双子の兄弟。そう。同じ試験k、じゃない、同じ母親の膣から一緒に出て来たのさ。僕の方が早めだったから、少し年下かな。というか実はかなり年下。厳密にはまだ1歳くらい? ま、それはいいとして」

「僕とダイスケはどっちもアーティストで詩人、海辺での長い散歩が好きなんだ。ただ僕は役者じゃなく、音楽をやってる。K2GっていうC-popバンドをね。C-popのCは何かって? 『クローンズ』さ。意味は考え過ぎなくていいけど。さ、この僕、ダイスケー・ツジェに紹介してもらえるラッキーな人たちは誰なのかな?」

「その前にちょっとみんなのことに集中しようか。調子はどう? みんなのことが知りたいよ。まあまあの調子? うん、聞いてるよ。だってそれが、本当の男がすることだからね。よし。ガール、それじゃ行くよ」

登場5分もたたず何かとんでもないものが来た気配を感じ取り、ざわつくチャット。サイン写真の紹介が始まったら始まったで、ひとりひとりにジェンダー問わず「ガール(gurl)」と呼びかける謎の距離感もあらわに。

「やあガール、これって男の名前なの? どうだろ。どっちだって構わない。いずれにしても、君はマイガールだよ。K2G(ハンドサインつき)」

「ガール、たくさんの愛を君に。いい? 本当の男は互いを愛し合うものさ。本当の男は、素直な感情を表に出すことを恐れたりしない。(下唇をキュっと噛んでキメ顔) ガール。ちょっと呑むよガール。(した後に素で笑ってしまい、テキーラを呑んで気を取り直していた)」

「(リアタイ視聴はしていないらしいリードさんという申込者に向かって)ガール? ガール、リード。リード、ガール。ガール? ガールいないのかな? ガール、なぜ僕を置いてけぼりに? いまここに一緒にいて欲しいんだよガール」

「ちょっとガール、教えてよ。触発される言葉はサインに書いて欲しいの、それともダイスケー・ツジェから配信で直接言って欲しいの? オーライ。双子のダイスケがいつも言うように、僕も自分を愛せって言ってるんだけど。それでいて僕のことも愛してガール」

「いいさ。君がいなくても生きて行ける。僕だって強いんだ。新しい一歩を踏み出すくらいの強さはある、独立した男なのさ。(下唇キュッ。次の男性名の申込者に向けて) これで君もマイガールだ。僕と君。どちらもひとりの人間(indivisuals)として自分の足でしっかり立っていこうよ。次のシングルにしよう。『Indivisuals』」

「イゴールの絵を描いて下さい、ね。バーン。やったよ。君の猫だよガール。一緒に住もう。それでイゴールっていう猫を飼おう。自分を愛して、そして僕のことも愛して。なぜなら愛に飢えてるから」

「じゃ、これが僕の最後の1枚。わかる、わかるよ、僕がいないと寂しいよね?  でもこれで全部。(申込者からのメッセージを読み上げて)『ゲーム内での演技素晴らしかったです』、ありがと。あれは双子のダイスケの仕事だけど、僕の演技もいくつかあるんだ」

「『民のためすべてを犠牲にした。私はもう一度でも同じことをします』の引用文を書いてください。……ガールズ、覚えておいて。僕だって君たちのためなら、すべてを犠牲にするよガール。何度も、何度でも繰り返しね。(下唇キュッ)K2G」

チャット欄が「gurl」とか「gorl」で溢れるまで体感10分とかからなかったのではなかろうか。本人も手応えを感じたか、リアタイ視聴者向けの絵葉書プレゼントコーナーを前に「今日の配信の勝者は僕だよね? 今日の目玉、僕。だから僕が絵葉書を書くことにするよガール」と悦に入っていた。ちなみに当選者に送られる絵葉書は「It's syphilis.(病名は梅毒です)」「I'm banging your wife(奥さんとヤってます)」などの候補を抑えて「I'm a registered sex offender.(僕は性犯罪者として登録されています)」、つまり平均してひどい中から一番ひどい文面が選ばれていた。


◆12番目: 全員で早変わり

最後に残ったあと11人分のサインは、今日登場したキャラ総勢11人の早変わりで紹介。それぞれの挨拶を抜粋すると、

ブリテン「いつか配信をコロンハイズしたいものです。この先またお会いいたしましょう(後半、東南アジアのファンからの植民地賠償ランダルビンタを食らいながら「なんで!何も悪いことしてないじゃないですか〜、すべては私の所有物なんですよ?? わけがわかりません」と泣きっ面になる一幕も)」

仁「俺がまた戻って来ることは承知しておるな?」

アグロ「もう舌ったらずになったミスター・アグロだ。ん? (リクエストにより)また仁に戻らなきゃならないのか??」

レギューム「このキャラは自分でもよくつかめてないんだよなぁ(笑)。ミスター・レギュームでした。たぶんもうお会いすることはないでしょう(笑)」

マーク「ハーイ、もう一回マークだよ。引き続き質問はなしね、俺のこと知る必要なんてないんだからさぁ。じゃ、知っていいのはここまでってことで」

ヘンダーソン「眼鏡はどこ? どこにやったのかねぇ、あれがないと見えないのよ。あらやだ、帽子の中に入れてたわ。じゃあもう寝に戻りますよ」

DJ兄貴「(みんなどうよー!? また配信でな! 喉があんまり使えない時に! そんじゃな、バイバイ!)」

イゴール「ボクとマークって声が同じだね、今気づいたけど。(仁の正面顔のモノクロポートレイトを示しつつ) これ○○宛のサインねー。もうちょっとこのへん、猫耳とかで改善するような気もするけどぉ、ボクの気のせいかな?  みんなと久々会えて良かったぁ、もう帰るね。また配信に戻ってくるよ。たぶんダイスケの誕生日にでも。本当はあんまり配信とか好きじゃないんだ。猫だから横になって寝て食べるのが仕事なんだもん。じゃね!」

教授「もう一度出番がありましたか。なんとかやってみましょう。おや、私へのランダルハグのリクエストが?(ランダルにハグされて涙ぐむ)こんなにハグを必要としていた自分にいま気づきました、ありがとう。(あらぬ方を向いて自分を叱咤)しっかり! しっかりしろ! あとたった一度じゃないか! 皆さんに笑っていただけたなら、私の人生にも意味があったということ。そのうち立ち直りますから」

ギグルス「はい。190番目ね。サインに、ランダルスラップもリクエストされてるからビンタ食らわなきゃならないんだろうな。あいた。いいビンタ」

ツジェ「オーライ、ガール。よく言うだろ、一番の楽しみは最後にとっておけって。今度のはふたりのガールズ宛だよガール。ガーール。ひよこの絵を描いて欲しいって? 可愛いね。やっといたよガールズ。でもふたりの名前がちっちゃい子みたいに見えるから言っておくけど、ここで言うガールズは文字通りであって、性的な意味はないんだぜ? 誤解しないで、性的なアレじゃない。君らガールズに言うやつは決して。オーライ、最後のランダルスラップだ。ガール。イェア。いいね。ああ、イェア。今のはなおいい。イェア。……あの、浴槽配信よりはマシだよね? あそこまでひどくない。オーイェア、ガール」


◆おまけ① 楽屋裏トーク

最後の191枚目までプレゼンテーションを終え、「ダイスケ・ツジとダイスケー・ツジェの間くらいの」キャラに戻ったツジ氏の楽屋裏トークは以下。

「こんなバカみたいなネタに付き合ってくれてありがとうね(笑)。でも、素の僕が『(準備したサインを)はいもう書いときました』ってやるよりマシだったと思いたい」

「(何人かリクエストの内容確認が必要だったケースがあったことを踏まえて) オンラインイベントのトリッキーなとこだよね。次にまたサイン会があった時は、願わくば配信にリアルタイム参加してやるべきこと、やるべきじゃないことを具体的に伝えてもらえるといいな」

「今日は午前中、ちょっとネタバレになるけど『真夏の夜の夢』の歌パート(Play Onポッドキャストにて来月以降配信予定)を収録してたりしてエクササイズもしなかったけど、仕事した感ある。役者仕事だったし(笑)」

・ミスター・レギューム
「本気でまたやるんなら彼独自の『声』を見つけておかないとなぁ」
「ミスター・ビーン的なキャラを作り出したかったんだけどちょっとうまくいかなかったかな」

・マーク
「マークについては話せない。今後話すことはあるかも」

・ミセス・"ボノボ"ヘンダーソン
「彼女は実在人物をもとにしてる。猿や霊長類に興味があって人類学をとったことがあるんだけど、その時の先生。小柄な年配女性だった。彼女のボノボ話が楽しくて、ボノボのことを学ぶのも楽しかったんだよね。ボノボってものすごくセクシャルな動物なんで。信心深い人や他の保守的な人たちはセックスを悪いものとみなしたりするけど、そういうのは自然じゃないでしょ。ボノボを見るともうヤりまくってて、自然界には確かに存在してるわけだし(笑)。だから勉強してて楽しかった」

・ランギッシュ教授
「彼はどうなんだろう。あの思い詰めっぷりとか、何かしら共感できるようなキャラもいて欲しかった、みたいなことなのかな。ちょっとスネイプ先生のことも頭にあったかも。彼の要素も混ざってるね。色々あっても必死でポジティブになろうとしてるキャラがいたら(笑)面白いかなと思って。時節柄そういう人も多かっただろうしね」

・ギグルス
「彼はやれて嬉しかった。配信だから完璧なパフォーマンスじゃなかったけど、実はギグルスって僕のクラウンショーでやってきたキャラクターなんで。あんな感じのキャラだけど、いつもはメイクとかもしてるんでそこだけちょっと違う。メイクなしだから完全に同じじゃないけど、根本的には似た感じ。ギグルスとしてやった一番初めのクラウンショーが『Death & Giggles』ってタイトル。死をテーマにしたショーで、彼は要するに辺獄を旅する旅人っていう設定だったんだよね」

・ダイスケー・ツジェ
「たぶん今回のベストキャラ。でも配信まるまるこいつでやれる気はしない」
「まああのまんまクローン、双子ね(笑)。勘違いしたイタい人になったバージョンの自分を作ってみたかった、くらいの単純な発想。僕が勘違いして、セレブとして自分を見失ったらあんな感じになるんじゃないかな。名前のスペルをeふたつとTsujetにしたのは、ほら、あの有名な俳優の──アクセント記号つきのéが出せなくて(笑)。名前はなんだっけ、ティモシー……それ! その字どうやって出すの? Windowsじゃ出し方わかんないんだよ(笑)。ティモシー・シャラメだ。彼の仕事はあまり知らないけど、とてもいい俳優なんだってね。ティモシー自身はイタい人なんかじゃないだろうし、すごくハンサムだ。ただふと思っただけなんだよ、ティモシー・シャラメ本人の人柄は別にイタくなかったとしても、ダイスケー・ツジェはそれっぽい響きになるなって(笑)」


◆おまけ② リアル兄だとわかるまで

Jynn Sekoiパート中に現れた自称・実兄氏の正体については、この翌日のアール・キムとの合同配信中にツジ氏より以下のような報告があったことを付記しておく。

「……そうそう。だってさぁ、配信で『お前の兄ちゃんだぞ』とか言ってくる人いる? (笑) はい? ってなるでしょ。おかしなファンの言うことじゃん、『私あなたの兄なんですけどぉ〜』って。信じないよそりゃ。(配信開始)ハーイ。今ね、僕の兄が配信に来てたことを話してて。みんな見てたかわからないけど。昨日チャットに来てた人が『自分はお前の兄のヤスだ』って言ってきたんだよ。兄はそういう名前なんだけどあやしいでしょ。あやしすぎるから本気にしないでイジってたんだけど。兄から『あれ本当に俺』ってテキストメッセージが来た(笑)」