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帰ってきたイゴール・ザ・キャット配信

戦慄のパントマイム配信よりおよそ3ヶ月半後の2021年2月15日(日本時間)。ダイスケ・ツジの配信チャンネルにおいて、視聴者からのチャンネルポイントによって解き放たれた謎の猫・イゴールが帰ってきた。ツジ氏は先ごろ日曜日(LA現地時間)の配信のテーマを「Roll the Dice」というびっくり箱的な何でもありの日と設定しており、今回はその第一弾にもあたるのだが、イゴールにとっては華々しいカムバックとあいなったようだ。以下、主な流れを邦訳する。公式YouTubeチャンネルのアーカイブはこちら


◆最初のサイコロの出目

LA現地時間ではバレンタインデー当日に行われたこの配信。最初は無事組み上がったゲーミングPCのお披露目から始まったのだが、妙なタイミングでかかるエコー、そしてかそけき鈴の音と、次第に不穏な気配が漂う。ツジ氏も時折目を泳がせるのだが、無視して続行。スウェーデン在住のファンがクリスマスシーズンに送ってくれたという差し入れスナックの味見(「僕は俳優で体型の維持に気をつけてるから、ひとつだけね」とのこと)も済ませて、いよいよ本題へ。

D: さて今日の「Roll the Dice」は新しいことに挑戦するっていう主旨なんで、さっそくやってみよう。そのついでにおしゃべりもね。別の配信者がクロスワードパズルやってるの見かけて、へー面白いなって思ったんだけど、僕はクロスワードパズルが大の苦手なんでした。でも、それとは別に好きなもの、かつ大得意なものがあってね。数独。そう。で思ったのが──(突如、怪しい獣の息遣いがどこかから。あたりを見回す)……えー、今日はみんなと一緒に数独をプレイしてみようと思います。きっと楽しいよ、おしゃべりしながらさ。画面上でプレイできるようここに数独を用意したから、一緒にやりたければ……(怪しい物音再び) えっと、ごめん。僕だけかな、なんか。みんなも聞こえた? え、じゃあパソコンからの音? どうなってんだろ……(どんどん小さくなるツジ氏のワイプ画面) 何? 待て、僕は何もしてないぞ。え? 誰がやってんのこれ。何なの、なんかOBSの妙なバグとか? 何だよ、何だってんだよ。うわ、やめ、やめろ、やめろーー!!


◆イゴールよりごあいさつ

暗闇から咀嚼音が聞こえてくる。画面が明るくなると、黒の猫耳、額にM字マーク(ということは彼はキジトラなのだろうか)、ドレスシャツにネクタイという姿でスナックを食んでいるイゴールの姿が。

I: ごきげんよう。自己紹介させていただこうかニャ。僕は猫のイゴール。僕のことを知ってる人も、そうじゃない人もいるだろう。知らない人のために言っておくと、僕はダイスケ・ツジのチャンネルのちょっとしたインサイド・ジョークみたいなものなんだけど、今は言うなれば、生身になったアウトサイド・ジョークってとこなのかもね。みんな調子はどーお? あ。おかげで、そう、みんなのおかげで、ジユーの身になりましたあー。だからここにいるの。僕の配信へヨウコソ。

てゆうかさ。てゆうか聞いてよ。ダイスケは遊ばせてくれないんだ。僕と遊ぶより、それか配信させるより、自分が数独やった方がマシだって。『ふざけんニャ!』だよ。配信なんてどってことないじゃん、誰にでもできるって。でも猫の配信って見たことある? ないよねえ。ああ、たしかに猫と一緒にやってる配信者はいるよぉ? 視聴者に猫を見せて、うちの猫見て〜可愛いでしょ〜ってやるやつ。でもね。こっちは正真正銘、実際、ホンモノの猫の配信だから。史上初、唯一無二のイゴールのね。ようこそ。お礼は結構だよ。

ホラ、かーんたんじゃん! ほかの配信者で猫耳のついたヘッドフォンしてる人もいるみたいだけど、アレはニセモノ。ニセモノの配信者だからね。ホンモノはこっち。(耳を指差し、触ってみせて) いたっ。ホラわかるぅ? いたっ。手があたると痛いもん。僕の耳はホンモノだから、神経通ってるんだもんねぇ。猫のイゴール以外に、配信する猫はいないよ。


◆唐突に始まるQ&A

I: さて! 配信ってどうやるのかな。イエーイ! ホラおしゃべりしてるよぉ? カンタン、カンタン、配信でおしゃべり。まって、アレ出すから。チャットを画面に、ホラできた。見て! フランス語だと猫は「le chat」て言うんだよね。あっ音楽かかっちゃった、これ好きかもー。……で、「le chat」とチャットはほぼおんなじだから、僕たちも問題なく、楽しくやれるよ。みんなどーお? 何か質問してもいいよ。僕はね、ここから数ブロック先の「In-N-Out Burger」のゴミ箱生まれ。きょうだいは9匹でー、半分は死んでるけど大丈夫だよぉ、よくあることだから。あとの半分は別々のおうちに引き取られてー、僕はダイスんちに引き取られた。大食いで食べるのダイスキ。趣味は間食でーす。

「『In-N-Out』の鉄板オーダーは何ですか?」生ゴミ! 質問ありがとう。(『CATS』の)ジェリクルズの仲間なのかって? もちろん。ジェリクルズのVIPだよ僕。証拠のテスティクルズ(睾丸)だってあるもん。ジェリクルズってそういうのなんでしょ? ほかの猫を食べたりはしないよー、人を何だと思ってるの? モンスター? まったく。 「自分でネクタイ結んだの? 猫って親指あるんだっけ?」。いい質問だね、josephinespeaks。それで頭いいつもり? ねぇ? ジョセフィンは話す前に頭も使ったことあるのかなぁ? ネクタイ結ぶのに、親指なんていらない。ダイスケの手だって一切借りてないからね! 自分のタイ結うのにニンゲンはいらないの。オーケー? (服はダイスケから借りたんですか? という質問に) ちがう! 僕は自立した猫なんだぞ、何故わからニャい!? ニンゲンにごはんもらうのと、ウンチとオシッコの片付けはしてもらってるけど。まあアイツら猫の下僕だもん。めんどくさいことはニンゲンがやるんだから、僕は自立した猫だよ。ん? (チャット欄で助けを求めるツジ氏のコメントを発見して) あ、読まないで、これは読まないでいいからね。


◆早送り配信予習

I: じゃあいってみよ! 何しよっか。ホラ、もうおしゃべりしてこんなに楽しくやれてるもんねぇー。で、CMとかやるんでしょ。コマーシャル! はいコマーシャルだよ! オーイェア! すぐ戻りまーす。いったん消えて、すぐ戻るんでしょー。

(イゴール仕様インターミッション画面。「すぐもどるます、けだま吐いてきます」「ねこが可愛くしてれば、ニンゲンはぜんぶ犬のせいって思うはず」という文章のかたわら、スライドショーで表示されている猫写真には「ケツ穴しゃしんありがとう」というキャプションがついており、ネット上のセレブ猫と並んでなぜか『Cats』映画版で猫に扮したイギリスの名優ジュディ・デンチの顔が含まれている)

はいそれからエンディング。エンディングきたね! オーケー。「DandE Saga」? 「Igor Saga」か「Feline(ネコ科の) Saga」にしないとね。いい名前! モデレーターさんありがと。みなさん来てくれてありがと、サブスク忘れずにね! チアーもいっぱいよろしく。見に来てくれて、フォローもしてくれてホントありがとー、また来週、てゆうか今度の水曜日にも会おうね! だってこのチャンネルは僕が乗っ取っとるから、もう僕の! ね? カンタン。カンタン。カンタンだよぉ。


◆イゴールのスナック食レポ

I: 今日やることだけどぉ、「イゴール、スナックを食べ尽くす」に変えるね。だってお腹すいてんだもん、いつでもペコペコ。ゴミ箱で育つとこうなるの。食べれるときに食べないと。食べれるうちに食べないと、後からじゃチャンスがないかもしれないでしょ。わかるかなぁ? 目の前に食べ物があったら、全部平らげないとダメ。だからあるものぜーんぶ食べちゃう。これおいしい。アイツが食べかけで袋開けっぱなしにしてったやつ。しけっちゃったらいけないもんねぇ。あと今日ってバレンタインデーで、あ!! チアー300ありがと! ホラ僕の方がうまくやれてるじゃん。そうだ、さっき配信の最初に誰かがレイドしてくれたのに、ダイスケ気づいてもいなかったでしょ。アイツ調子乗ってんだもん! でも僕はちゃんと気づいてたよぉ、いい配信者だし猫だから!

(以下、「僕って舌っ足らずなんだね。新しい設定だあ、自分でも知らなかったけど舌っ足らずだったんだ僕。人生ってびっくりスルことだらけ!」と驚いてみせたり、咀嚼したシナモンロール菓子を口から出しながら「僕が食べ物を吐き出してる時は誤解しないでね。褒め言葉だから。美味しいから後にとっておくって意味だからね」とお断りを入れたりしつつ、差し入れスナックを食い散らかすイゴール)

 あ! 飲み物忘れてた! 最初に飲まなきゃだった。こんなのあったよぉ、 シャンパン!(ツジ氏が出演中のドラマ『Invasion』の制作元であるApple TV+から送られてきたという、飲みかけのシャンパンの瓶を取り出して)猫は普段アルコール飲まないけど、今日はトクベツ。バレンタインデーだし、僕が大好きなヒトは自分だから。(マグカップで一口味わい) ダイスケはワイングラスでシャンパン飲んでたけど、ほんと負け犬だよねー。シャンパン専用のグラスがあるのにさ。マグってゆうんだよ。あ! あとこれも送ってもらったの。アポテカルネス・フールマスト?(※訳注: ユールムストは北欧のクリスマスシーズン定番のノンアル炭酸飲料。甘いルートビア的な味である) 意味は何だかわかんないけど! あっと。(封を切ると、炭酸の抜ける音。この前日、ツジ氏はシャンパンを空けようとして思い切り中身をぶちまけていた) どう? 僕はダイスケみたいにバカじゃないからねぇ。アイツがやってたら中身が噴き出して、びちゃびちゃにしちゃってたハズ。でも僕はイゴール、用心ぶかい猫だもん。音聞こえる? 僕かしこいの、猫だから。猫は用心ぶかい生き物なの、わからないかな? 飲んでやるから静かにしな、フールマスト。よし。じゃあここに注ぐよ。パソコンの上に置かないようにしないとね。フールマスト。よーしいくぞー、フールマスト。こういうの飲むの久々だなあー。久しぶりだよ、だってアイツずうっとダイエットとかいうのやってたから! 役者ってさぁばかなんじゃない!? でしょ? じゃあみんな、かんぱーい。ハッピー・バレンタインデー! みんなが愛する人と一緒でありますように。このシャンパンとフールマストも愛し合ってるよ。(ユールムストを味見) わー、コーラみたいなのかと思ったら、フールマストの味って全然コーラと違うんだねぇ。うん。うん。この配信の後すっごい太りそう。いいね。乾杯! これ……(マグカップとグラスを交互に傾けて) どっちかをどっちかに……やめとこ! どうせぽんぽんの中で混ざるんだもん、外でまで混ぜなくったってイイよねぇ。口の中で混ぜろ? いいアイディア!(口中調味中。ものすごいしかめっつらになるが) いいアイディア! すごくいいアイディアだったぁ。よし、次はっと。これでもうふたつスナック片付けたぞ、配信ってカンタンだなぁ。


◆おイゴの辛口映画レビュー

引き続き差し入れスナックのマジパン・バーの袋を開けようとしている時、不意にこんな話題も。

I: あっと。一応、ちょっと待って。(「あたまくるてナイよ、ねこれす」という字幕がデカデカ表示) おことわりね。ホラ、荒らしとかヤじゃん? 次はアンソニー・ボーディン(訳注:『アンソニー、世界を喰らう』などの食関連番組で知られた著名シェフ、司会者)じゃないや、アントン・ベルグ……1884ねんそうぎょう、マジパンバー。そう、猫にも荒らしが来るの。いつもだいたいネズミか、犬なんだけど。

(ハッと何かに気づき)ちょっと『トムとジェリー』の話していーい? 『トムとジェリー』の話! アレは人種差別、種族差別しすぎの、最低のうんちカスだよ! うんちとすら呼びたくないや、うんちより最低! うんちはまだ食べ物だもんね。大変だった時何度か食べたことあるの、オーケー? とにかく『トムとジェリー』は最悪。文字通り虐待だし殺猫だよ? ジェリーは、いやトムだっけ? どっちがどっちか忘れちゃった。猫がトムだったよね。とにかく、アレは見ちゃダメ。……そう、猫がトムだ。トムは大好きだよ。ジェリーがむかつく! ネズミ年って胸糞の年なんだよね。ネズミってホント胸糞悪いヤツらなんだから。……さあ、このマジパンバーの袋を開けてみるよぉ。マジパンって何? 猫の世界にはないからなあ、なあに? え、みんな(『トムとジェリー』を)もう見ちゃったの? 裏切り者! でもキライだったよね?

でもさあ、最高の映画って何かわかる? みんなもう察しがついてるよね、僕が言おうとしてること。当ててみて。史上最高の映画はなーんだ? ホラ言って。言ってみて。言ってみてったら。(視聴者から『CATS』という回答) ありがと! 賞品は僕の愛情です。はい、じゃあこれ、マジパンバーね。…………(いぶかしげな顔で味見中)ココナッツ入ってる。僕アレルギーあるんだけど、まあ
大丈夫でしょ。(視聴者より『僕のワンダフル・ライフ』について意見を聞かれて) 『僕のワンダフル・ライフ』? 見たときに思ったことはあるけど、我ながらレイシストすぎたから、口には出さナイ! ……あ、ココナッツは入ってナイんだね、よかったぁ死なずに済みそう。君も僕を殺さずに済んでよかったよかった、ありがと。次はドゥムレ・スナックね。名前が好きだな、ドゥムレ。『オリビアちゃんの大冒険』?(※訳注:ディズニー制作、イヴ・タイタス著『ねずみの国のシャーロック・ホームズ』シリーズを原案とする長編アニメ映画) 『レミーのおいしいレストラン』?(※訳注:ピクサー制作、グルメなねずみのレミーが人間のシェフと組んで活躍するという筋の長編アニメ映画) レミーは僕のちっちゃなピンクのちんちんしゃぶってくたばればいいんじゃない? はい、言っちゃった。でも本気だからね。だってあの映画ってさあ、ぜんぶ料理と食べ物の話でしょ。僕のおケツも料理してみればって感じ! ここクリップして! クリップして、レミーに送りつけてやって。アイツ絶対配信やってるでしょ、構ってちゃんだから! 料理するネズミぃ? ばっかじゃないの!


◆唐突に始まるゲーム配信①『Bugsnax』

順調に食レポを続けていたイゴールだが、サラミ的なおつまみSlim Jimを食べているうちに突然呟いた。

I: 飽きた。ゲームしよっと。史上最高の名作なんだよぉ。Slim Jimつまみ食いしながらね。みんな知ってるかわかんないけど、『Bugsnax』っていうんだって。最高のゲームなんだよ、やったことないけど!(ワイプ位置がゲーム画面のど真ん中。ニンゲンの耳の位置にヘッドホン装着) でも名前に虫(bugs)とスナック(snax)が入ってるからイイんでしょ?

(プレイ開始)……このヒトたちなんで話してるの? なんで? スナックどこ? 僕ジャーナリストなの? オーケー、いまこのヒト「バグスナック」てゆったね。一緒に? やだ。「親指あるの?」ってないよ、コレでやるの。(猫パンチでコントローラーを叩く。ゲーム内のキャラクターが「ケチャップは食べられませんよ」と話しているのを見て) 食べられるよ、何言ってんの!? 「In-N-Out」のゴミ箱で見つかるのほぼケチャップだよ? なんでこのヒトたちまだ話してるんだろ、スナックまだ? 黙れ! あ!! (キャラクターが頭にケチャップをかけられ、バンガーという名前の虫にどつかれる) バーガーなんだ。ふるさとを思い出すなぁ。うるさい、黙れったら。なんでストーリー絡んでくるんだろ? なにこれ。あっち行け、バーガー。これ叩いちゃえないの? 棒っきれか、僕の爪とかで。何してるの僕。あ、近くのケチャップを拾って撃つのか。ケチャップ! すごーい。ケチャップひたすら拾っちゃうなあ。スナックいっこ食べたい、いっこでいいから。

(文句を言いつつ、画面上に「バンガーをわなに誘いこめ!」という指示が出ていることに気づくイゴール)

I: これすごいヤな感じ。寝るときヤな夢見そうだなあ。僕がつかまったときの夢。それからダイスケんちに送られたんだもん。めちゃくちゃだったよ。……(そしてエイムをつけてもつけても攻撃が当たらない) 僕これキライ。目の前にバーガーあるのに食べられないんだもん。あ、トマトが弾切れなのか。なんか焦らされてるみたい。……。………。……………。(唐突に途切れるゲーム画面) はいおわり! あー楽しかった、とっても楽しかったぁ、もうすっごい楽しかったぁー。次はミロのマグネット、じゃない、ナゲット食べまぁす。あ、今のゲームもうクリアしたよ? 楽しかった。クリアしたってば、簡単すぎるから、もっと歯応えのあるチャレンジがしたいなって。もっとたくさんスナック食べることがホントのチャレンジでしょ。


◆休憩中にチャット欄に現れるツジ氏①

イゴールの休憩中、見計らったようにチャット欄へ現れるツジ氏。怪文書感がすごかったため、チャットログから抜粋する。

D: ねー

D: アイツ行った?

D: ダイスだけど

D: 抜け出せない

D: 今いる場所…どこかわかんない

D: まあ大丈夫

D: たぶん

D: OBSとTwitchの狭間のどこか

D: どーやったら出れんのこれ

D: 照明がやたらありすぎるから、ここTwitchだな

D: あああああああ

D: イゴールの野郎

D: あ、待ってアイツ戻ってくるわ

D: 僕のコメントがアイツに見られないよう、みんなでたくさんコメントして流しといて



◆唐突に始まるゲーム配信②『龍が如く 0』、そして

何も知らないイゴールがご機嫌で戻って来ると、再び、今度はツジ氏も配信中の『龍が如く 0』のゲーム画面が(相変わらずワイプど真ん中で)表示されている。

I: ただいミャー。イェーイ! 音聴かなきゃ、ヘッドホンどこぉ? あった。これいいー。こっちの方が僕のスタイルだな。(画面の桐生が動き出すとニャーニャーニャーニャー猫の鳴き声がする。ねこなでシューズ装備済だ) こっちのゲームでもスナック食べられるんだもんねぇ? そう聞いてるよ。何? 僕と戦おうって? イゴールと戦いたいの? やめといた方がいいと思うけどな。ネコ科スタイルを使っちゃうぞー。ネコ科スタイルは早業なんだ。ね? 僕すごい。すごいゲーマー。ニンゲンはぜんぶぶっ飛ばしてやるんだ。ストリートで本気でやりたいことっていったらコレだよぅ。まあ普段からやってるけど。ニンゲンのケツを蹴っ飛ばしてるんだ。僕、タフな猫だから。

今から視聴者のために、すてきなことをしに行くよ。だってそれこそ僕の全てだからね。(チンピラに絡まれて)はー、ニンゲンってレイシストだねぇ。猫と見れば片っ端からケンカふっかけてくるんだから。リスペクトがないよ。……猫の声がウザいっていう人もいるみたいだねぇ。よくもそんなことが! ひどい。猫はニンゲンの足音とか、物音がしたって文句言ったりしないのにさ。差別だよ。考えてみてごらん? 種族差別だ。

さて、チャットのみんなお礼はいらないよ。(カラオケスナックに入店した桐生。さっそく選んだ一曲は「ばかみたい」だ。前奏から曲に入り込むイゴール。カラオケ用マイクを手に、猫語で熱唱が始まる。ちなみにコントローラーは最初から手に持っていない)

僕最高。今の最高だったよね。(歌い終わってやりきった顔。カラオケ採点は一切ボタンを操作してないので0点なのだろうが、ワイプ位置を微調整してしれっと点数を隠すイゴール) 100、じゃなく1000ポイントって出てる。どういう意味かよくわからないけどぅ、僕がすごいってことだね! 楽しかった。でも今ので思い出すやつがあるんだよね。思い出すのは、これ。

(続いて画面に流れたのは、日本の某90年代人気アニメと某老舗スマホゲーコラボ時の猫語版主題歌MV。ワイプを縦横無尽に動かしながらニャーニャーニャーニャーとリップシンク・パフォーマンスを、フルコーラスでやりきった)

でもこれ、なんかモヤモヤしちゃうよね。正直言って。なんでかって? だってあの番組、僕が出てなきゃおかしいじゃん!? エージェントは何してたの? ダイスのけちんぼめ、持てる富は僕に分け与えたらどうなんだ! 僕が出ておくべき番組だよ!? 落ち着かないからまた休憩入れよ、オシッコしてくる。あとゲーもして、ウンチもして、それからゲーを食べてくる。ウンチ食べないように気をつけなよ。前に食べた時は色々大変だったなぁ。じゃあすぐ戻るね、みんなバーイ!


◆休憩中にチャット欄に現れるツジ氏②

二度目の休憩中、インターミッション用画面は「すぐもどります、カーペットにおしっこ中」という文言と、イゴール自撮り(?)写真スライドショーという構成。「ぷんすかイゴール」「ごきげんイゴール」「はらぺこイゴール」「おねむイゴール」「うんち中なイゴール」「イゴール・デラックス」「箱の中のイゴール(※訳注: ツジ氏が過去行った前衛パフォーマンス「A Box in a Man」のセルフパロディと思われる)」「スパイシーなイゴール」……どれがどれにあたるのか、ちょっとよくわからないものも。そしてその一方、またもやチャット欄に戻ってきたツジ氏は、必死の呼びかけを始めていた。

D: もしもし?

D: いいこと思いついたかも

D: ちょい待って

D: オーケー。新しいチャレンジを何とかスタートさせたよ

D: どうかチャンネルポイントの寄付お願いします

(「チャンネルポイントでダイスケを解放せよ」という主旨のコミュニティチャレンジが表示され、一瞬で達成される)

D: やった!!

D: あっ待って、アイツが戻ってくる

D: チャット チャット チャット


◆猫のイゴール VS おさるのランダル

さて、またもやごきげんで戻ってきたイゴールは、通常の配信で行われている「チャンネルポイントリクエスト」にとりかかる。

I: ただいミャー。ハーイ、僕がいなくて寂しかった? もっとスナック食べよっと。楽しいねえ、楽しいよねえ、僕もすっごい楽しくなったからみんなも楽しいといいなぁ! あっ。そうだ、なんか、チャンネルポイントを使ってやるやつもあるんでしょ。みんなも引き換えしてイイよ。ダイスがやってるやつはバカみたいだけど、僕がやってあげよっかな。何が来てるかチェックして、と。みんながダイスに頼むことを僕がかわりにやるよぉ。僕はみんなのためにここにいるんだもんねぇ、ステージは独り占めにしないと。

はーいじゃあ、プウォゲーマーのスキルを「猛然と誉め殺し」ね。普段ダイスはこのバカみたいなマスク使ってるけど、僕にはこんなもん要らない! 猫だもん、いつでも野生のまま、猛然としてるから! じゃあいくよ! 君はスゴイ。プウォゲーマーのスキルもダイスより格段上! 当たり前だよね、アイツはカス野郎だから! 君以外のニンゲンはみーんな大嫌い、だって君はすごいゲーマーで、すごいゲーマーだけがこの世に生きててもいいニンゲンだからね!

次は「ランダルビンタ」? つまり……コイツにビンタされてほしいってこと? sick94。ぴったりの名前だよねぇ、病んでるもん。あとたぶん94年生まれなんだろうな。でも、いい? 僕はビンタなんてされないよ。あんな小猿に、(スッと現れるおさるのパペット、ランダル。イゴールにビンタ) あいた! シャーッ!(牙を剥いたイゴール、ランダルの首根っこを噛み、ペッと吐き捨てる) イゴールにビンタなんかした奴は、こうなる。……オーケー、オーケー、みんなそんなにランダル好きなの? 悪かったよぉ、待って、ホラ戻ってきて。(首根っこを噛んでランダルを呼び戻すが、ランダルは抵抗している模様) ジタバタすんな。オーケー。今のは簡単だった。

(しかし追加で「ランダルビンタ」3回分のリクエストが入り、顔を曇らせるイゴール)

えぇえ何!? あともう3回!? みんなビンタやって欲しいんだ。よし、いいよ、やってあげる。でも、ただ座って殴られっぱなしにはなるのはごめんだね。僕はやり返すよ?

(ハードパンチャー・ランダルと猫パンチャー・イゴールの激しい戦いが繰り広げられる。だが結果、またランダルがイゴールの口からダランとぶら下がることに)

僕の勝ち。なぜなら僕はイゴールだから。でもランダルは、ただのおさるのパペットだからね。イゴールは無敵だもん。イゴールはみんなから離れない。イゴールはいつだって勝つんだよ。


◆逆襲のツジ氏

高らかに勝利宣言したイゴール。だがその時、チャット欄におかしな表示があることに気づく。

I: 待って。なにこれ。チャットの上のほうに、「コミュニティチャレンジ終了: 助けて、ダイスです! ここから抜け出せないんだ」……? ……おまえたち、寝返ったのか……!? よくも裏切ってくれたニャ! 僕を、僕からの信頼と愛を裏切ったのか! 僕を自由にしたのはおまえたちじゃないか、なのに今度はダイスを自由にするって!? 誰でも自由にしなきゃ気が済まないのかよ、いったいぜんたいどうゆうつもり!? ……ああ、これからどうなる? どうなるんニャ? 何が──おまえたちのせいだぞ! 後でぜったい戻ってきてやる、ヤメ、ヤメローー!!

(画面下から力一杯イゴールを押し上げ、再登場したツジ氏。息切れしながらあたりを見回して)

D: うおぉ、やばかったぁ! 戻ってこれたのか……? みんなも戻った? オーケー。うん。うん、オーケー、どうやら帰って来れたっぽい。神様ありがとう、よかったあぁ……! みんなもありがとう! 助けてくれて。効果あるか確信持てなかったけど、何とかなったみたいだ。協力ありがとうね。いやー、どこにいたんだか全然わかんないんだけど、たぶんOBSとTwitchの間のどこかじゃないかな。ホントね、OBSとTwitchの間みたいなとこには行かない方がいい。何もかもわけがわかんないし、バグだらけだし、レイアウトも意味不明だし、もうひたすら迷子になってたよ。

戻ってこれて感謝してる、それで──イゴールのこと、本当にごめんなさい。アイツに関しては僕も、もうどうしていいんだか。たぶん猫だから、構って欲しかったんじゃないかと……この悲惨きわまりない経験から何か感じることがあるとしたら、ハッピー・バレンタインデー。かな。

とにかく、大変な1日だった。みんなありがとう、今日はこのあたりで。僕はまだ残りがあるようならシャンパンでも飲んで、自分を労ってきます。みんなも自分を労って、いいバレンタインデーをね。……ちょっと待てよ。なんか変だな。待って──うお!?

(画面を覗き込んだツジ氏、ふたたび消失。暗闇から、イゴールの大口が現れる。どうやらツジ氏はその中に引き込まれてしまったようだ。大写しになるイゴールの顔)

I: オヤツ!!

(今度は視聴者に向かって大口を開けるイゴール。そして暗転。エンドクレジット中は、アデルの「Hello」を猫語アカペラで歌うイゴールの声だけが聞こえていた)