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私がどうやって広東語通訳者になれたのかを紐解いてみる(10)- 広東語独学の方法 私の場合 -

そして廣東話を独学で

さて、では供給の断然少ない広東語をどうやって勉強したのか?

インタネットの無かった時代。どうやって情報を取るか、取れるかを知っているのが大きなカギだった。当時の情報誌としては『ぴあ』が一番強かったかな。地域の新聞や、駅のホームの広告など、自分で情報を取りに行くというアグレッシブな態度が必要だった。私もアグレッシブに探し回ったけれど、当時は広東語を教えてくれる場は本当に少なくてなかなか見つからず、ともあれ仕方なしに独学を始めたのだった。

実は、広東語の独学を始めて暫くしてから、阪急淡路に東亜語学学院(だったかな?)という語学学校があるのを知り、そこの広東語講座に一度体験授業を受けに行ってみたことがある。需要と供給のバランスか、入門クラスの1コマしか無くて、私のその時のレベルには適さないので結局諦めた。クラスのレベルの不適もあるけれど、実質的には、学費が学生の私には高すぎたことと、阪急淡路が遠くて通いづらいこともあって、「独学」から「教えてもらう」形態へのシフトは失敗。結局、完全独学一本鎗となった。

独学の方法 私の場合

私がどうやって独学したか?皆が一番知りたがるところ。

大学の図書館のAudio Video室。語学教材を置いてあるここが始まりだった。広東語学習の教材を見つけた時は嬉しかったな。まさしくラッキーの始まりだった。

自分の経験からいうと、ターゲットにした外国語を身に付けるには、まずはお手軽で身近なところから手を付けるのが結果として長く続けられて良い方向に行くのではないかと思う。

私の場合、図書館から借りればタダ。「わざわざテキストを買ったのだからしっかり勉強しなくちゃ」という自分に対するプレッシャーは皆無。大学にはほぼ毎日通うのだから語学学校に通う別途の交通費も要らないし、学費を払ったのだから何が何でも全授業受けに行かねばというプレッシャーも無し、「大学に行くついで感」でお気楽。

語学は一度始めたらゴールが無い、と私は思っている。常に新しい語彙や言い回しを吸収していかなければならないから。語学検定を受けるなどの短期的で明確なゴールがある場合、それに向かって自分を追い込むという勉強方法もあり。しかし、語学を自分の生活に使うものとして設定する場合は追い込みもプレッシャーも不要だと思う。プレッシャーはできる限り避けていく方が語学の勉強がいつまで経っても楽しい。

一番最初はアメリカの大学のテキスト

大学図書館のAudio Video室で見つけた広東語教材の中で、私が最初に手を付けることにしたのが米国イェール大学「Cantonese Course」のテキスト。ものすごく分厚いテキストが2冊でセットになっていて、1冊は英語で書かれた文法本、もう1冊は漢字を学ぶための漢字本。

文法本は全部英語。そりゃそうだわよね、アメリカの大学のコースなんだから。つまり私は広東語の文法を英和辞典を片手に学ぶというなんだかへんてこりんな状況で始めたのだ。でも実はこれが私にはとても役立った。西洋人は学問をシステマティックに進めるのが好きよね。だから文法がとてもきっちり解説されてあったの。Audio Video室にあった日本語によるテキストは、ここまで文法をこと細かく解説していなかったので、このテキストから入って正解だったと思う。

そしてもう1冊の漢字本は、毛筆で縦書き。





とか書いてあって「Oh! This is Oriental!」 と西洋人が好みそうな中身。人の往来が今ほどカジュアルではなかった時代。多くの西洋人がオリエンタルなものに憧れていたという。しかもこの教本は漢字を解する日本人からみても毛筆の縦書きがなんだかエキゾチックで懐かしくて面白いビジュアル。テンション上がったね。

語学教材なのだから、音声素材ももちろんある。当時はカセットテープ。テキストに沿って録音されていて、それなりに数もあったと思う。

なるべく安上がりにおさえたい私も、図書館で借りたテキストに書き込みするわけにもいかないし、借りたら返さねばならないので好きなだけ手元に置いておけるわけでもない、ということでテキストもカセットテープも全てコピーした。学内や正門外のコピー屋は学生相手の商売なので安い。A4/1枚あたり2円とか3円とかじゃなかったかな。今の若者たちはコピー屋なんて想像も出来ないでしょうね。コインランドリーをイメージすればわかりやすいかも。コピー機がずらっと並んでいて、セルフサービスでコピーする。紙が無くなったら積んである白紙を自分で取って来てトレイに入れるシステム。おばちゃんがいてコピーしてくれる店はちょっと高かった。当時はコンビニもPDFも無かったので、学生にとって紙のコピーが命綱だった。200ページほどもある分厚いテキストでも500円もかからずに1冊まるまるコピーできて助かった。

カセットテープのコピーについては、「ダブルデッキ」という、カセットテープを入れる部分が2つあって「ダビング」できる機能のついているカセットデッキを持っていたので、家で全部ダビングした。カセットテープの10本ぐらい、語学学校に通うことを考えれば安いものよ。

こうして最初のテキストが手に入った。コピーした紙だから書き込みだって自由。裏に練習で殴り書きしたって構わない。カセットテープだってテープが切れたりしたらまた借りてきてダビングし直せばよい。気兼ねなく何度も何度も使って練習した。時間さえあれば机に向かった。楽しかったから。半年勉強した普通話のベースがあったおかげで、広東語の文法のベースも受け入れやすかったし、会話するには声調というものがとても大事というコンセプトも身についていた。独学しながらも重要ポイントがわかっていたのはアドバンテージだったと思う。結果としてちょっと遠回りしたように見えるけれど普通話から入ったのは私にとっては正解だった。

自分が知らない世界の扉を開けて中に入ってみたら、ありとあらゆることが初めての体験で面白くて面白くてたまらない。広東語学習はそんな風に始まった。勉強方法をもっと詳しく書いてみよう。(続)

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