私がどうやって広東語通訳者になれたのかを紐解いてみる(26)- 『惡戦』@京都ヒストリカ映画祭 -
OLやりつつもフリーランスでの文書翻訳も広東語通訳も続けていた。収入的なことよりも「やっていて楽しい」というのが大きな理由だった。
Special Focus on Hong Kong
大阪アジアン映画祭は初参加以来毎年呼んでいただいている。2012年に香港経済貿易代表部と香港政府観光局による「香港映画祭」(後に「Special Focus on Hong Kong」)という特集部門が始まった。私が加入し始めた翌年からという何とも絶妙なタイミング。持ってるねー、私。
毎年5本程度の香港映画が上映される。そしてほとんどの作品でゲストがやって来る。最初の数年は私一人で香港からのゲストを全て担当していたのだけれど、この3年程かな?はさすがに一人ではスケジュール的に回しきれないということで、サミュエル周氏にも参加していただいている。
サミュエル氏の通訳はもう神業。毎回拝聴するたびに、凄い・・・どうやってトレーニングしたらあそこまで何も漏らさず完璧な通訳が出来るのか・・・と思わされる。余裕はあるし、単語の選び方もパーフェクト。私もあのレベルにまで行かなければ!と思いつつなかなか到達できていない。と書きながら反省しきり。通訳練習の時間をなんとか作り出さなければいかんぞと自分を戒める。
京都ヒストリカ映画祭
そんな中、やはり人脈が功を奏して2014年12月の京都ヒストリカ映画祭にも呼んでいただいた。『悪戦』ウォン・ジンポー監督2013年の作品。作品のことも監督のことも知らなかったのだけれど、この作品を事前に観て一気にファンになった。監督も作品も大好きになった。
事前準備無しにはきちんとした仕事にならないので、我々通訳者は上映に先立って作品を観ておく。そして一観客として事前に監督と話をしておく。前情報をいろいろもらっておくためという建前もあるけれど、一観客として監督に聞いてみたいことがたくさんあるというのが私個人的には正直なところ。実際に、一観客としての私個人の視点がQ&Aの際の観客の視点と重なることが多いので、これも事前準備としてかなり有効。通訳者としても観客としてもWin-Winである。
『惡戦』
この作品、クンフー映画好きな私としてはかなりの高得点をあげたい。キャストも制作陣もかなりハイレベル。若手監督でこれほどまでのキャストを揃えられるというのは大したもの。私としては主演の二人、Philip Ng 伍允龍と Andy On 安志杰だけで既に観る前から合格点。この二人は実際にハイレベルの功夫底(クンフーのベース)があるし、Philip なんかガチガチの龍哥ファンだからね。黃淳樑師傅の弟子で付き人状態、随分若くてまだ芸能界デビューしていない頃に李小龍會のイベントにも黃淳樑師傅に引っ付いて来てたぐらい。どれほどのファンかはこの作品観たら丸わかり。
Andy On 安志杰にも一目置いている私としては、もうこの二人が主演でガチバトルというのは美味し過ぎて堪らない。監督はもとから黒社会もの好きで自分が監督をする作品は絶対にガチバトルで当てさせるそうなのだけれど、この作品も二人が親友だからこそ、「手加減無しでガチで当てろ!」と言って撮ったそうな。ガチで当ててこそ本当に痛そうな表情が撮れるからだと言う。おかげで本当に素晴らしいファイト・シーンになっている。二人ともベースがあるだけに動きが美しい。この作品はクンフー映画ファンには必ず見て欲しい。
監督はちょっと偏屈
「いやー、やっぱり Philip は靚仔(ハンサム)だねー。」と監督に言うと、「いいや!Philip は全く靚仔じゃない。靚仔なのは Andy だ!」と言う。「Andy は確かにめっちゃ靚仔だし私も大好きだけど、Philip も私としては靚仔だけどなー」と言っても「いいや!Philip はちっとも靚仔じゃない!!」って、なぜそこまで強調するのかというほどのダメ出しを食らった。主演に使った俳優やねんから、もうちょっと立ててやってよ監督~。
ちょっと脱線エピソード。X JAPANのコンサートチケットを買ってあったのに、スケジュール的にどうしても日本に来られなくなった監督に代わって、香港人の友人と私がもらってコンサートに行ったこともあった。黒社會もの専門に撮る監督がX JAPANのファンってちょっと可笑しい。私はファンでもなかったし初めてコンサートに行ったので、公演前のグッズ売り場の長蛇の列を見て「コンサート終わってから監督にグッズ買ってあげようね」なんて暢気な事言ってたら、コンサート終了後にはグッズ売り場も終了していたという大失敗。監督ごめんね。
Philip Ng 伍允龍と Andy On 安志杰
Philip Ng はもっと出てきてもいい俳優だと思う。『追龍』とか、まだ日本での公開が決まっていない某作品だとか、ちょくちょく美味しいところの役で映画にも出てくるんだけれど、もっと大きな役をやらせてあげたいな。少し前にTVBのドラマでも主演のうちの一人ではあったけれど単独主演とは言えなかったし。アクション映画にしてもドニーが健在すぎてまだまだお鉢が回ってこないといったところかな。ドニーみたいに40過ぎてからの遅咲きブレイクになるかもしれないね。
Andy On もアクションも本当に素晴らしいし靚仔だし芝居も良いのだけれど、単独で主役張るのはなんだかちょっと想像しにくい。とはいえ、主役のうちの一人を張った今年の福岡国際映画祭でかかる『犯罪現場』ではかなり良い感じなので、福岡国際に行ける方は是非観てやってください。
京都ヒストリカ映画祭から『悪戦』の推し話になっちゃった。しかし、このご縁がまた後にビックリするところで繋がってくる。ご縁というのは本当に面白くて大切なものだね。京都ヒストリカ映画祭の話題を次にもう1本いこうかな。(続)