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SBG13 便利さに頼り過ぎないようにしよう!

 皆さんは「不便益」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? 京都大学情報学研究科特定教授の川上浩司先生によると以下のようになります。

「不便益」とは、不便の益(benefit of inconvenience)のことだ。便利(convenience)とは、手間がかからず、頭を使わなくても良いことだと仮定すると、不便でかえって良かったことや逆に不便でないと駄目なことがいろいろと見えてくる。不便益とは、やみくもに自動化や効率化を目指すのとはまるで別の方向にある考え方だと言ってもいいだろう。    引用先:(https://www.nippon.com/ja/japan-topics/g00712/#)

ひたすらに便利さを追求してきた現代社会に対し、不便さに何か効用があるのではないかとして、多くの研究が進められています。以下に、そのたった二つですが、紹介します。

  北陸先端科学技術大学院大学の西本一志教授は、自らの研究テーマを「妨害による支援」と呼ぶ。彼の研究室が開発したワープロは Gestalt Imprinting Method (G-IM) という漢字入力システムを備えている。G-IMは、ときどき形状が誤っている漢字を文章の中にこっそり混ぜてくる。ユーザーは、変な漢字に気づいて正しく修正しない限り文章が保存できない。これにより、ユーザーの漢字忘却率が低減するという実験結果が報告されている。(同引用先)

 立命館の総長になられる前に仲谷善雄教授が同大学で立ち上げた研究室では、ルート情報を曖昧に表示するなど、明確で詳細な情報をあえて隠す観光ナビゲーションシステムが開発された。情報が隠されるというのは、一般的には不便である。しかし、この不便さは観光の意味を問い直す。せっかく散策型の観光をしているのに、下を向きながらスマートフォンのナビの指示通りに移動することに意味があるのかという問い掛けである。この不便なナビを使うと、視線が前を向くことで思いがけない多数の発見があり、思い出として残る出来事が増えるという実験結果が得られた。(引用終わり)

 この「不便益」は、今挙げさせて頂いた研究以外に、SBGs11で述べた「変化力」を身に着けるのにも十分に役立つと考えます。
「敢えてインターネットを使わないようにする」は、「不便益」を踏まえた「変化力」と「自分で考える力」を養う手段としては、まあまあだと思います。敢えて使わないとしたら、どうやって問題解決にまでたどり着けるかを考えなくてはなりませんから。

 自分自身が「自分で変化することを厭(いと)わない」ようにするのは、ただひたすらに願ったり、強い意志を持ったりして乗り越えようとしても、なかなか難しいのではないでしょうか。そのために、疑似的な環境、設定された状況であっても、またはゲームなどで、不便さを体験、または疑似体験してみるのもいいでしょう。
 教員現場では、ゲーム性を合わせたグループ学習での導入がアプローチの一つであろうということで、私の勤務校でも、この取り組みを探究科の会議レベルでは提案しましたが、コロナ禍もあり、教育の一環として実際に取り組むことができなないでいることは残念です。パンデミックが一定程度まで収束し次第、取り組みたいと思っています。

 学校ではなく、個人で取り組もうとするなら、以下のようなことを参考にしていただけるのではないでしょうか。
 SBG7の書き出しにあった「遠くの書店」です。必ずしも距離に拘ることもありません。「いつもと違う書店に行ってみる」とかです。普段が大型書店なら、街の小さな書店、実はこれを探すのは現状大変です。どんどん閉店に追い込まれていますから。あるいは人生で立ち寄ったことのない古書店、古本屋さんですね。
 書店以外だったら、高校生のキミ達は、とっくにやっている「カフェ巡り」でもいいでしょう。新しい発見に溢れているでしょう? 否、どこも似たり寄ったりですか?(笑)

「寄り道こそ近道」の例も既に触れましたよね。電話を発明したベルの話です。 “Leave the beaten track behind occasionally and dive into the woods. Every time you do, you will be certain to find something you have never seen before.*「ときには踏みならされた道を離れ、林の中に分け入ってみなさい。そうすればその度に、今まで見たことがない何か新しいものをきっと見出すでしょう(著者訳)」です。
 新しい発見と気付き、新しい発想、新しい自分感、新しい時間の過ごし方、新しい人との出会い、新しい人間関係、新しい社会観、新しい夢、最後は新しい人生観まで広がっていきますよ。

ここがサスティナブル!
常に新しい発見と気付きから視野が広がり続け、ヴァージョンアップされ続けるあなたの内面としての新鮮さこそサスティナブルな美しさです。


読書案内:*岩波ジュニア新書から川上浩司先生の「不便益のススメ」が2019年に出ていますから詳しく知りたい人は参照してください。


次回の配信から カテゴリー 7 脳を騙(だま)す が始まります。

SBG 14   からだの姿勢を変えよう!

SBG 15      作り笑いでもいいからスマイルしよう!

と連載が続きます。

良かったら、またnoteで会いましょう。

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