【創作物語】騒音の神様 50 一人で歩く傷だらけの夜道
垂水は、じっと座っていたが「くさっ」と言った。「ゴミか、生ゴミか。たまらんなぁ。」臭いのでとにかく立ってみることにした。ゆっくり足を動かす。「痛っ、いたたた、」と声が出る。実際に垂水の口から出る音は「ひはっ、ひははは、」になっている。足だけで立つのは不安なので、両手を地面に着いて体を支えながら落ち着いて立ってみる。「ふう、ふう、」息をつきながら恐る恐る立ってみた。「立てたな。」立ってからも垂水は何度も大きく息をついた。「歩いてみるか。」足を前に出してみる。「よいしょ、よいしょ。右足はいけるな。左足があかん、痛い。帰れるかな。」垂水は、片足を引きずりながら歩き始めた。暗いので、とにかく光が見える方向を目指す。しばらく歩いてから、片足の靴が無いのに気付いたが戻るのが嫌だったのでそのまま進んだ。「どうせ見つかれへんわ。」とあっさり靴を諦める。暗い路地を出ると繁華街のお店はまだまばらに開いているようで、垂水の目にやたら眩しい。「電車、まだ走ってるかな。」と思いながら片足を引きずりながら駅へ向かう。「どうせ傷だらけで血まみれで、じろじろ見られてるんやろな。」と思いつつ、そのまま歩いた。なんとなく電車の音が聞こえた気がした。駅には光が灯っていた。「やった、間に合った。助かった、」と思い切符を買おうとポケットをまさぐる。手も指もだいぶ痛んでいるようで、小銭入れの感覚がわからない。右手、左手と手を交換しながらポケットをまさぐる。「ない、無いわ、財布。うそやろ。」垂水がいくらポケットに手を入れても何もなかった。「くそ、あいつらか、なめやがって。」垂水はただただ悔しかった。「歩くしかないか、はあ、はあ、なんじゃこれ。」と思いつつ痛い足を引きずりながら家の方向へ歩き始めた。「歩いたら、遠いぞ。帰れるかな、」でも垂水は帰ることしか思い浮かばなかったので、とにかく足を動かした。
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