【小説】騒音の神様 19 真っ暗な森の中で

トラックが停まり、男達が降りて来た。ドアを開けて二人が、荷台から一人降りて来た。トラックから後方へ歩きながら三人の男達が話す。「ぶつけたと思ったけど当たったか?」荷台に乗っていた男が答える。「いや、当たらんかった。ギリギリで茂みに飛び込んだで。」「このへんちゃうか」一人の男が懐中電灯で茂みを照らす。足元に雑草、そのすぐ奥に木、木、木。「こんな森、カブで走られへんぞ。真っ暗やし。どっかに転がっとるんちゃうか。」懐中電灯を右左と照らすが、バイクが転がっている様子はない。「音もわからんな、どうなってんねや。」一人の男が無造作に暗い茂みに入って行こうとすると、懐中電灯を持っている男が止めた。「あかん、あかん。めちゃめちゃ強いんやで、三人離れたらあかんて、」と言うと茂みに入ろうとした男が声のトーンをあげて答える。「何ビビってんねん、ビビりすぎやで。男一人と爺さんやろ、しかし十何人もおって、なんにもでけんかったとは情けない話やで。」と半分笑いながら言う。懐中電灯を持った男は必死になって「そんなん見てないから言えるんや、めちゃめちゃ強いんや。シャベル持ってても一撃で吹っ飛ばすんやで。あんな強いの見たことないわ。」「かかか、心配すんなって。俺らも棒持って来てるし、楽勝やって。」と言って持っている鉄の棒、でかい釘抜き、バールを地面にゴンゴンぶつけた。もう一人の男はが手に大きめのレンチを肩に乗せながら「余裕やって。俺レンチで人しばくの得意やし。」と自信たっぷりに話す。懐中電灯を持った男はついさっき、仕事場のガタイの良い男達がゴーグル男に簡単にぶっ飛ばされるのを見ていたので盛山の化け物級の強さにビビりまくっていた。他の二人は遅れて現場に到着し、無様にやられた作業員から話を聞いてすぐにトラックを走らせて来たのだ。この二人は喧嘩に自信があるから来たのだ。一人の男が懐中電灯を持った男に言う。「懐中電灯、俺に貸せ。それからトラック回して、この辺の茂みライトで照らせ。明るくしたら見えるやろ。」懐中電灯の男は「わかった」と言って懐中電灯を手渡しすぐにトラックまで走った。トラックが暗がりの中方向を変える。ライトが自信たっぷりな男達二人を照らした。

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