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【騒音の神様】154 神様、稼ぎの旅に出る。

神様は酒をたらふく飲んだまま、家に帰った。真っ赤な顔をしながら、真っ暗な部屋の中でごそごそしている。
「これも、持っていこか。ああ、これも、」
とトランプや花札、サイコロをカバンに詰め込んでいく。一通り準備を終えると、枕元にカバンを置いて寝ようとした。
「朝、起きたら花守君に旅に出ようと言おうか。なんなら、花守君にカブで途中まで乗せていってもらおか、どうしよか。」
布団から体を起こし、タバコに火を付けた。家の外で、赤ちゃんの泣き声が聞こえてくる。小さく、母親が
「ねんねんね、ねんねんね、」
と歌う声が聞こえる。
「おんぶして、あやしてるんやな。可愛い風景や、素敵な音や。」
神様は、真っ暗な部屋でお膳に向かって座り出した。書くものを探して、文字を書き出した。
「花守君、私はしばらく旅にでます。いつもありがとう。体を少し休めてください。感謝しています。」
と書いた。神様はカバンを持って、外に出て歩き出した。
「これでええんや、これでええんや。」
と神様は夏の大三角形の星の下を歩き続けた。


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