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【連続小説】騒音の神様 45 垂水、いきなり殴られる。

垂水が再び賑やかな繁華街を歩き出すと、明らかに肩をぶつけに来る男がいた。垂水は肩に力を入れた。どかっと肩がぶつかる。ぶつかったまま、垂水が歩き続けようとすると後ろから肩をつかまれた。「まてや、兄ちゃん。」垂水が後ろを振り返った瞬間、拳が目の前にあった。ガスッ、鼻のあたりを殴られた衝撃を感じた。垂水はすぐに殴り返した。縦拳で相手の眉間を殴り、すぐに相手の腹を蹴った。すぐ横から、パンチが飛んで来たようでアゴに衝撃を感じた。垂水は、相手の腹に横蹴りをくらわせた。垂水はそれからやっと拳法の構えをとると、男二人が地面にうずくまっている。垂水は「なんや、いきなり殴ってきやがって。とことんやったろかい。」と言うが二人の男はうずくまったまま変な呼吸をしている。垂水は怒りながら「もう終わりかい、おもろないのう。弱いくせにからんでくんな。」垂水は、振り返りながら歩きだした。垂水は自分にがっかりした。「はあ、いきなり殴られてしもた。よけれんかった。はあ、何をしとるんや俺は。相手が強かったらぶっ飛んでるぞ俺は。」幸いと言うか、体が頑丈で首も太いからか、相手のいきなりの攻撃も垂水にはなんのダメージも与えなかった。それでも垂水は自分にガッカリした。「あれくらい、よけれんでどうする。くそっ」そう独り言を言うと、怒りが湧いてきた。「あかんあかん、こっからや。次は自分から強そうなやつにいったろ。」垂水は、さっきまでよりさらに大股で大胆に歩き始めた。キャバレーの光る看板が、垂水を照らす。水商売の呼び込みが、あやしく行き交う。

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