【連続小説】騒音の神様 52 垂水、豆腐屋の水で体を冷やす。
垂水は、寝た。痛みで目が覚めても目をつぶって体を休ませた。体中が熱を持っているので冷やしたくて仕方がなかった。豆腐屋が自転車で近所を豆腐を売るために通る音がする。ガラン、ガランと良い鐘の音を立てながら。垂水は、豆腐屋の鐘の音が聞こえると痛い体を引きずりながら豆腐を買いに行った。手にボール、豆腐を入れるためのボールを二つ持って急いで歩く。片足を引きずりながら。垂水は、「おっちゃん、木綿二丁と、あとその冷たい水も欲しいんや。ちょっとくれへんかな。」豆腐屋のオッチャンは、垂水のパンパンに腫れた顔を見て察した。「ああ、ええよ。氷もあるからちょっとだけ、わけたるわ。」垂水は嬉しそうに「ありがとう、助かるわ。」と言った。実際には、垂水の話し声からは息がもれている上にモゴモゴしていて聞きづらかった。垂水は豆腐と冷たい水と氷をボール二つを持ち帰った。「やった、助かった。これで冷やせる。」豆腐を飲み込むように食べて、冷たい水にタオルを浸す。全身を拭いて顔にのせた。「ああ、気持ちええ。冷たい、最高や。水道水とはえらい違いや。またもらお。」それから垂水は、痛めている足首にも乗せて寝た。目が覚めると、冷たい水もぬるくなっている。「しゃあない、井戸水汲みに行くか。水道より冷たいからな。」垂水は、豆腐屋がくれる水と井戸水で二日ほど体を冷やしながら寝た。三日目には、どこも痛いところは無くなった。「体も元気になったし、拳法に顔出すか。まあ顔はまだ腫れてるけど。歯も無いままやけど、ええか。これがええか。これでええか。」垂水は、負けたまま黙っているのが嫌で早く告白したかった。そして次へ進みたかった。さらに強くなるということに。
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