(小説)騒音の神様 その8 盛山スーパーカブを手に入れる

仕事が終わってから盛山は、仕事で知り合った男の家の前にいた。表札を確認し、呼び鈴は無さそうなので玄関をドンドンと叩く。しばらく待ったが返答は無い。しばらく玄関の前で待っていると、気さくそうな男が歩いてきた。気さくそうな表情のおっさんだ。おっさんは軽く手を上げながら「おうモリヤマ、待ったかな。」と言った。盛山は、「いや、全然」と言うと気さくなおっさんは「それは良かった。ほなこっち来て、裏にあんねん。」と言って歩き出した。二階建ての文化住宅をぐるりと回ると裏に駐輪場があり、その中に一台のスーパーカブが停めてあった。「モリヤマ、これやこれや。これが世界のスーパーカブや、」と自慢げに言って早速キーを差し込み動かし始めた。気さくなおっさんは一通り乗り方を説明した。盛山はバイクには乗ったことはあったが、話を真剣に聞いた。なにしろ、これから自分が神様を乗せて運転するバイクだ。それから気さくなおっさんは自慢げに言う。「これや、言うてた二人乗り用シート。快適に乗れるで。俺は何回も人乗せて走ったけど好評やったで。」盛山はそれを聞いて嬉しくなったし、またそれを事前におっさんから聞いていたので買うのを決めた。「これや。これが欲しかったやつや。」盛山がそう言うと、気さくなおっさんは「わし乗せて、いっぺん走ってみるか?」と聞いたが盛山は「いや、最初に乗せる人は決めてる。このまま一人で乗って帰るわ」と言った。気さくなおっさんは、「そうやな、彼女やな、そらそうや」と満面の笑みで言った。盛山は、「いや、最初に乗せるのは神様で、見かけは小さなお爺さんや」と言う言葉を胸にしまいこみ「ありがとう」と言って会釈し、封筒に入れてあったバイク代を払った。気さくなおっさんは、「なんでもわからんことあったら言うてきて。わし、だいたいバイクのこと分かるから」と言ってくれたので盛山は嬉しかった。それから盛山は神様がくれたヘルメットとゴーグルをつけた。きさくなおっさんは「似合ってるなあ、かっこええで。センスあるなあ」と言ったので盛山は、「ははは、ありがとう。」と嬉しそうに返答した。盛山はそれからスーパーカブにまたがり走りだした。振動と音と風が最高に気持ち良かった。最高に、最高に気持ち良かった。

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