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面白いベンチャー 7選

株式会社東京


主にオフィスのエレベーターのかご内の扉に映像を投映するプロジェクター「エレシネマ」と、ホールに設置するデジタルサイネージ「エレビGO」を手がける。いずれも、ビルの防災・管理情報などのコンテンツを流しつつ、間にCMを挟む仕組み。広告モデルなのでビル側は無料で設置・利用できる。

タクシー広告と比較されることが多いが、エレベーターは新入社員から社長まであらゆる立場の人が乗るという特徴がある。テナント企業内全体で認知度が上がり、「営業で門前払いされにくくなった」と話す広告主も多いという。

19年に三菱地所と合弁会社を設立、成長に弾みをつけた。電波の弱い空間でも誤作動が起きないなど、技術面での評価も高い。設置台数は約2300台だが、ターゲットとなるエレベーターは首都圏で約5万台。伸びしろは十分だ。

羅悠鴻(らゆうほん)代表は東京大学理学部出身。自らがテーマに選んだ地球外生命体の研究には莫大な費用が必要だと知り、それを支援する起業家への転身を決意する。才能あふれるサークル仲間などに相談しながら、事業に巻き込んでいった。

「うちの会社は遣唐使モデル」と羅氏。中国で急成長しているビジネスを日本流に加工して持ち込む。エレベーター広告もそうだ。すでに次の種まきにも着手している。

すごいベンチャー2023に選出

[設 立]2017年2月
[資本金(資本準備金含む)]3億5399万円
[社員数]30人/40人
[代表者名]羅 悠鴻
[所在地]東京都新宿区新宿


noco株式会社


作業手順書などのマニュアルが簡単に作成できる、AIマニュアル作成ツール「トースターチーム」を展開する。

社内マニュアルはツールも体裁もバラバラになりがちだ。それが伝わりづらさや更新の妨げに直結している。

「そこで簡便なフォーマットを用意。書き込めば済むようにした」(堀辺憲代表)。タイトルを入力するだけでAIがステップごとの手順と本文を生成。微調整すれば、体裁が統一された使い勝手のよいマニュアルが完成する。動画も取り込め、各現場で容易に更新できる点も特長だ。

さらに「ゲーミフィケーション」の導入で独自性を高める。作成マニュアルに作成者の顔と名を掲載。活用されるとポイントを付与する。作成のモチベーションが高まり、現場の知識や情報共有を促す。


すごいベンチャー2023に選出
https://toyokeizai.net/articles/-/700310

[設 立]2017年5月
[資本金(資本準備金含む)]7606万円
[社員数]10人/17人
[代表者名]堀辺 憲
[所在地]東京都墨田区江東橋



Poetics(ポエティクス)

SaaS型のオンライン商談解析ツール「JamRoll(ジャムロール)」を提供するのがポエティクスだ。自社開発の音声認識、自然言語処理、会話・感情解析などのAIを搭載し、リリースから1年で数百社以上に利用されている。

これまで営業には商談のプロセスが見えないという課題があった。そこでジャムロールではオンライン商談、電話の文字起こしを行い、要約やToDoリストを作成する。セールスフォースなど営業支援ツールとも連携が可能だ。直近では自社でも大規模言語モデル開発に取り組む。

同社の強みは会話・感情解析AIにある。商談参加者の会話のスピードや聞き取りやすさをAIが解析、商談成約率の高い営業メンバーのノウハウを可視化できる。顧客の発話を解析し、反応がよかったかどうかも判別する。

AI開発には学習データをどう確保するかが重要だ。コロナ禍でオンライン商談が普及し、「データが取りやすくなったことで、ジャムロールの開発に弾みがついた」(山崎はずむCEO)。

「ZoomやSlackなど商談を支えるツールは多々あるが、われわれは各ツールをつなげる立ち位置を目指す」と山崎氏は語る。

[設 立]2017年10月
[資本金(資本準備金含む)]2億6100万円
[社員数]18人/約50人
[代表者名]山崎はずむ
[所在地]東京都渋谷区千駄ヶ谷

株式会社picon

たった半日で開発されたサービスが、3カ月半で200万人の利用者を獲得した。ChatGPTをLINE上で使える「AIチャットくん」だ。友だち追加をするだけで一定回数まで無料で会話でき、無制限に使える有料版(月額980円)もある。

手がけたのは16年創業のアプリ開発企業・ピコンだ。山口翔誠CEOはGPTの登場時、「すごいことが起きているのに、一般には使ったことがないという人のほうが多い。“橋渡し”こそ自分たちの役割だ」と直感したという。

LINEで動作するサービスをつくった経験はゼロだったが、ChatGPTにプログラムの書き方を尋ねながら、渋谷幸人COOと2人で一気に開発。米オープンAIがAPIを公開したその日のリリースにこぎ着けた。

利用者増の過程では、「ビジネスかいわいでの流行と違い、具体的なアイデアやノウハウを求めるより、漠然とした悩み相談などが目立つ」(山口氏)という発見もあった。そこで直近では、「アイドル」「心理カウンセラー」「おばあちゃん」など会話する相手のキャラを選択できる機能を追加。返答の内容やテンションで親近感を演出する。

AIチャットくんに続き、6月には画像生成の「AIイラストくん」を本格投入。そのほか新サービスも構想中だ。移り変わりの激しいエンタメアプリ領域で、生成AIを新たな武器に勝負を続ける。

[設 立]2016年4月
[資本金(資本準備金含む)]1億5000万円
[社員数]3人/17人
[代表者名]山口翔誠
[所在地]東京都渋谷区道玄坂



株式会社VisualBank

画像生成の「学習素材」提供

プロカメラマンらが撮影・編集した画像素材を蓄積する、日本最大級の画像ライブラリ企業・アマナイメージズ。約40年の歴史ある会社を“創業と同時に買収”して業界を驚かせたのがビジュアルバンクだ。

日本初の手法での創業・買収に、VCや事業会社からの出資、みずほ銀行からの融資など計21億円が集まった。創業前にもかかわらず大きな金額を得られたのは、急速に発展する画像生成AI領域で同社が明確なビジネス構想を描いていたからだ。

その具体例が、8月に本格始動したAI学習用ビジュアルデータセット開発サービス「Qlean(キュリン)」だ。画像生成AIの開発や活用を企図する法人向けに販売する。AIによる予測や出力のレベルを上げるには大量、かつ学習に適した質の高いデータが不可欠だ。一方昨今では、学習の過程で他人の有する著作権や肖像権を侵害してしまう事例も散見され、懸念が広がっている。

の点、キュリンで調達できる素材はバリエーションが豊かなだけでなく、アマナイメージズが長年行ってきた厳格な審査・確認作業を経た権利クリアなもの。さらに、顧客の要望に沿った素材抽出やアノテーション(注釈)、新規の撮り下ろしにも対応する。

「ビジュアル権利の総合カンパニーを目指したい」と沼澤裕太代表。事業を通じ、作者に適切な対価を戻し継続的な創作活動を支援することも重視している。

[設 立]2022年4月
[資本金(資本準備金含む)]6億1050万円
[社員数]30人/40人
[代表者名]沼澤裕太
[所在地]東京都渋谷区渋谷


株式会社EmbodyMe

映像生成AIアプリを開発

3月には、自分の外見をAIの生成映像に置き換えられるアプリ「エクスプレッションカメラ」の正式版を出した。特徴は、ズームなどでビデオ通話をする際、画像を1枚用意するだけでAIが外見を置き換え、表情や体の動きに合わせてリアルタイムで映像を生成できる点。

代表の吉田一星氏はヤフー出身。AR技術をスマホに応用したサービスを立ち上げるなど映像生成技術の開発に携わってきた。生成AIブームの中でもとくに注目されているのはチャットボットだが、これが今後さらに進化するには映像生成技術がカギになると吉田氏は考える。「チャットボットがより人間同士の対話に近づくには、文字だけでなく見た目、声なども通じてコミュニケーションする必要がある」(吉田氏)。

吉田氏の考えがより深く反映されているのが、8月にリリースした「エクスプレッションチャット」。映像生成AIとChatGPTを組み合わせることで、写真が動き、話すアプリだ。好きなアイドルや愛犬、亡くなった親族などとの会話を楽しむことができる。今後は、カスタマーサポートやデジタルサイネージなどへの展開もしていく。

[設 立]2016年6月
[資本金(資本準備金含む)]2億8920万円
[社員数]4人/4人
[代表者名]吉田一星
[所在地]東京都新宿区高田馬場


カバー株式会社

2Dや3Dのアバターを使って配信を行うVチューバー。多くの有名Ⅴチューバーが所属する国内最大規模の事務所「ホロライブ」を運営するのがカバーだ。現在、約70人の配信者が所属し、全体のチャンネル登録者数は約6700万人にも及ぶ。

日本人に限らず、外国籍のVチューバーも複数在籍しているのが特徴だ。Vチューバーの中で世界一のチャンネル登録者数を誇る「がうる・ぐら」もその一人で、世界中にファンが存在する。

「Vチューバーは海外人気の高い日本のアニメ文化に近いものがあり、(動画を)翻訳してもらいやすい。そのため海外でも視聴者を広げられる」(谷郷元昭社長)

バーチャルプラットフォーム事業として、自社開発したライブ配信用アプリを所属するVチューバー向けに配付している。ライブ配信であれば、動画編集が必要なく、簡単に動画を配信できる。

ライブ配信動画は1本当たり1時間ほどの長さになるため、当初は再生回数が増えず苦戦したという。それから徐々に認知が広がり、ライブ配信動画の名場面を抜き出した「切り抜き」動画の普及も人気を後押しした。

「もともとVR、AR領域でコンテンツビジネスを展開しようと考えていた」と話す谷郷氏。過去には、タウン情報サービスでも起業の経験がある。今後は海外展開をより強化するほか、メタバース開発にも注力していく予定だ。

[設 立]2016年6月
[資本金(資本準備金含む)]9億0260万円
[社員数]385人
[代表者名]谷郷元昭
[所在地]東京都港区芝

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