ブルーレイディスクから細胞分析装置へ。技術を異分野に生かし、櫻井健二郎氏記念賞を受賞!
こんにちは、広報部のNNです。突然ですがソニーの多様な事業領域の中に、メディカル事業があるのをご存じでしょうか?
業務用カメラや映像機器の開発で培ったさまざまな技術を生かし、医療の現場に適したカメラやモニター、院内の映像管理や伝送を管理するシステムなどのメディカル関連機器を展開しています。
そのユニークな例として、ソニーのブルーレイディスクの光検出技術(レーザー光を照射してディスクを読み取る技術)と微細加工技術(精細な加工を施す技術)がメディカル分野の細胞分析装置(フローサイトメーター)に使用されています。
自社のブルーレイ技術という全く異なる分野の技術を生かして、世界初のスペクトル解析型フローサイトメーターを開発・製品化し、継続して高性能化を進めた点を評価いただき、このたび第37回(2021年度)櫻井健二郎氏記念賞を受賞しました。
フローサイトメーターとは?
約10μm(ミクロン。10μmは0.01ミリメートル)の細胞を1つずつ一列に毎秒10mの速さで流し、その表面状態を統計的に分析することにより、がん免疫、再生医療などの研究・臨床に貢献する細胞を分析する装置です。
仕組みとしては、蛍光色素を結合させた抗体試薬を用い、細胞に予め目印をつけておき(専門用語では「標識」と言います)、1つ1つ流れてくる細胞にレーザーを照射し、蛍光信号の色と蛍光強度を特定することで、統計解析に基づき、細胞を解析します。
研究現場における課題
当時、分析装置では、レーザー照射の位置調整を専門家が手作業で行っており、誰でも簡単に使うことができない状況でした。また、分類できる細胞の種類も10色程度と限られていました。さらに、測定結果の蛍光強度補正についても、測定後にマニュアルで行う必要があった為、結果が様々で、利用者による測定値のばらつきが大きいという課題もありました。
ソニー独自の自動調整機構とスペクトル分離技術
そこで開発チームはブルーレイディスクの自動調整機構の発想を取り入れ、自動で位置調整や光の調整を短時間で簡単に設定できるように改善しました。
また、蛍光スペクトルの一部の波長取得だけでなく、全波長を取得し、スペクトル分離技術(近しい蛍光色素でも、蛍光波形形状の詳細測定と独自アルゴリズムで多種の細胞を解析する技術)を導入することによって、一度に多数の細胞表面の状態が分かる様にしました。この結果、誰が測定しても同じ結果が自動的に得られるようになり、飛躍的な技術進化を遂げることができました。
第37回櫻井健二郎氏記念賞を受賞
こうしてソニーはブルーレイディスク技術で培った光検出技術をもとに、2012年に世界初のスペクトル解析型フローサイトメーター『SP6800』を製品化しました。この装置は極めて分解性能が高いため、国内外の先端医療研究機関で利用され、がん免疫や感染症の研究に大きく貢献しています。
フローサイトメーターとしては、その後も2015年発売の『SA3800』、2020年発売の『ID7000』と継続的に性能を進化させてきました。
今回の受賞では、医薬分野での新たな光装置実現という社会的貢献に加えて、自社の光ディスク装置の技術を全く新しい分野に展開して、高性能な光装置を実現した点も、光の総合知の重要性を示した、と高く評価いただきました。
櫻井健二郎氏記念賞とは?
光産業の新展開に貢献する新技術の研究開発、先駆的業績を表彰する賞です。昭和時代後期の電子工学者として、創世期の光産業技術の発展に多大な貢献をされた故櫻井健二郎氏の功績をたたえ、光産業技術の振興・普及を目的に1985年に創設されました。新規構造の発光ダイオードの製品化や新たなレーザーの実用化など、これまで 68 件、171 名 の方が受賞しています。
http://www.oitda.or.jp/main/sakurai/sakurai21-j.pdf
喜びの声
今回受賞した開発チームを代表して、メディカルビジネスグループメディカル設計部門の古木さんにお話を伺いました。
最先端の研究施設で使われている細胞分析装置にも、私たちの生活で身近なブルーレイディスクの技術が応用されていると知ると、なんだか世界が違って見えてきますね。