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そんそんの教養文庫(今日の一冊)

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一日一冊、そんそん文庫から書籍をとりあげ、その中の印象的な言葉を紹介します。哲学、社会学、文学、物理学、美学・詩学、さまざまなジャンルの本をとりあげます。
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#スッタニパータ

身体という洞窟のうちにとどまることなかれ——『スッタニパータ』より

『スッタニパータ』(巴: Sutta Nipāta)は、セイロン(スリランカ)に伝えられた、いわゆる南伝仏教のパーリ語経典(原始仏典)の小部に収録された経のこと。以前の記事も参照のこと(「ブッダの幸福論」、「犀の角のように独り歩む」、「怒りを制する」)。第四「八つの詩句の章」の「洞窟についての八つの詩句」より。 ここでは身体を洞窟に例え、身体のうちに魂がとどまること、身体的な煩悩や欲望に囚われ続けることは、迷妄のうちにとどまり、悟りからは遠ざかってしまうことを説いている。

ブッダの幸福論——『スッタニパータ』より

私たちはどのように生きたらいいのか、ということを教えてくれるものが仏教であるが、では仏教は私たちにとって〈幸福〉とはどんなものと教えているのであろうか。この短い一節は、〈人生の幸福とは何か〉をまとめて述べている。いわば釈尊の幸福論である。 幸せ(magala)とは人に成功繁栄をもたらす祝福願望のことばをいう。この一連の詩句は、「大いなる幸せを説いた経」(Mahāmagala-sutta)と呼ばれ、南アジアではよく読誦されているという。 「愚者に親しまないで賢者に親しむ」と

犀の角のように独り歩む——『ブッダのことば—スッタニパータ』を読む

「犀(さい)の角」という例えは、「独り歩む修行者」「独り覚った人」の心境や生活のことを言っている。「犀の角のごとく」というのは、犀の角が一つしかないように、道を求める者は、他の人々からの介入や言葉にわずらわされることなく、ただひとりでも自分の確信にしたがって暮すようにせよ、という意味である。 インド思想の特徴の一つが内向的・内省的であるということである。これは例えばポリス的生活を理想としたギリシャ思想などとは著しい対比をなしている。ひとり沈思して自己を反省し、人間主体の深奥

怒りを制する——ブッダのことば『スッタニパータ』より

原始仏典の一つ『スッタニパータ』より、冒頭の一文を引用。スッタニパータは、スリランカに伝えられたパーリ語仏典である。 最初は「蛇の章」から始まる。人間の怒りなどの想念が「蛇」として例えられる。 そして、この怒りという毒を制することの重要さが強調される。 この後には、愛欲、妄執、驕慢を捨て去ることの重要さが説かれる。そして、想念、妄想を乗り越え、一切は虚妄であるという「空」の思想を自覚することの重要性が説かれる。(「空」という言葉自体は後年つくられたものであり、ここでは登場