犀の角のように独り歩む——『ブッダのことば—スッタニパータ』を読む
「犀(さい)の角」という例えは、「独り歩む修行者」「独り覚った人」の心境や生活のことを言っている。「犀の角のごとく」というのは、犀の角が一つしかないように、道を求める者は、他の人々からの介入や言葉にわずらわされることなく、ただひとりでも自分の確信にしたがって暮すようにせよ、という意味である。
インド思想の特徴の一つが内向的・内省的であるということである。これは例えばポリス的生活を理想としたギリシャ思想などとは著しい対比をなしている。ひとり沈思して自己を反省し、人間主体の深奥