百六話 ショートボブの女性

喫茶店『天使の扉』でお嬢様を接客している私…。
今日初めてお帰りになられたお嬢様方…。
腰まであるロングの黒髪をなびかせているお嬢様。
真っ赤なワンレンボディコンを着こなして…。
美しい顔に真っ赤なルージュを引いているお嬢様…。
そのお嬢様はガチレズ変態サイコお嬢様だったのです…。
もう一人のお嬢様はあまり喋らない無口なお嬢様。
ボブショートカットで、私とロングのお嬢様の行為をじっと見つめている…。
ロングの方のお嬢様にされるセクハラもあれだけど…。
私はボブカットのお嬢様の視線が、かなり気になっていた…。
たまにしか喋らないお嬢様だけど、ものすごい私たちを凝視している…。
そのお嬢様の視線からは、何の感情も読み取れない…。
否、少しだけなら感情を読み取れるかもしれない…。
その感情の名は、嫉妬、恋情、劣情…。
一見、クールな眼差しの奥には、焼きつくような感情が見え隠れしている…。
多分ボブカットのお嬢様は、ロングのお嬢様のことが好きなのだろう…。
そして、私とロングお嬢様の行為を見て、嫉妬して…。
嫉妬している自分の感情すらも、楽しんでいるように見える…。
あまりに上級すぎる恋の楽しみ方…。
もし、私が翼さんと他の人が、イチャイチャしているの見たら…。
私は多分、嫉妬の炎でおかしくなってしまうだろう…。
その感情をも、楽しんでしまっているボブのお嬢様…。
私は、畏れと敬服の念を持つしかなかった…。

その視線を意に介さないロングのお嬢様…。
いや、意に介してるのだろう…。
ロングのお嬢様は、ボブカットのお嬢様の感情を全て知っているのだ…。
知っていて、その感情の流れを受け流している…。
すごいクールな微笑みを浮かべ、全てを楽しんでいるロングのお嬢様…。
何故、全て知っていて、それを楽しめるのか…?
私には理解の範疇を遥かに超えていた…。
これが大人の恋の楽しみ方なのか…?
それとも、このお嬢様方が上級者すぎるのか…?
あまりにも難解すぎる恋の悩みに私の頭は沸騰しそうになっている…。
私はロングのお嬢様に畏れ…。いや恐れをなしている…。
私はこの二人に対して、何か違和感しか覚えなかった…。

そして、ロングのお嬢様は、私が咀嚼したトーストを食べている…。
その行為自体、理解の範疇を超えているのだが…。
その口元を凝視している、ボブカットのお嬢様の視線も得体が知れなかった…。
いろんな感情が入り混じっている視線…。
静かに燃え上がる負の感情の視線だった…。
それは例えるなら、蒼く昏い炎のようだ…。
その炎の矛先が、私に向かないように祈るばかりだった…。

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